プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「いつか晴れた日に」

<<   作成日時 : 2017/09/21 10:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 2

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1995年イギリス=アメリカ合作映画 監督アン・リー
ネタバレあり

ジェーン・オースティンの書く小説は、少し後から現れるブロンテ姉妹ほど劇的でないため映画発明以来50年間全く映画化されなかったが、本作の製作によりオースティン・ブームが起きた。ドラマが波乱万丈より心理を重視する時代になっているので、今後もコンスタントに作られ続けるだろう。
 オースティンの最高傑作は「高慢(自負)と偏見」と思うし、僕が初めて読んだのもそれだが、本作はその習作的内容とも言いたくなる「分別と多感」の映画化である。映画では本作がオースティン映画版の決定打と言うべし。

「高慢と偏見」でも描かれていたように、近代まで英国の女性は男性の庇護下にないと生活できなかった。相続権がないからである。本作でも、一人の老紳士が亡くなって前妻の生んだ長男が相続したため、現在の妻と三人の娘が追い出される形で、空き家となっている親戚の家に移り住む。
 その過程で、長女エリノア(エマ・トンプスン)は大人しいエドワード(ヒュー・グラント)と、次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)は陽気なジョン(グレッグ・ワイズ)と夫々恋に落ちるが、各々の事情で男たちはロンドンに戻る。

この後色々な人物が交錯する中で、姉妹の容易ならぬ恋がいかなる展開を見せるか、台湾出身のアン・リーが誠に英国貴族調にがっちりと見せている。行間からにじみ出る二人の、特に控えめな姉の心理が感銘を生む。

最初のうちからマリアンヌに好意を持ち続けるブランドン大佐(アラン・リックマン)が八面六臂とでも言いたくなるような活躍を見せて、最終的に姉妹に思いがけぬ幸福が下りてくるのであるが、これはある人の言う「アメリカ的ハッピーエンド」ではあるまい。古代ギリシャ劇のデウス・エクス・マキナ的な幕切れほど唐突とは言えないものの、アメリカ的な合理的なハッピー・エンドのつけ方とも違うだろう。いずれにしても、その唐突さに劇的な効果がある。

「型にはまった人物像」という別の人の否定的な表現も気に入らない。この当時の人間まして上流階級の人間は現代人と違って価値観が極めて限られていたため人々は型にはまった考え方、行動しかできなかった(はず)。その殆どない隙間に入り込んで話を練るのがオースティンの才能だった。型にはまっているのを逆手に取って面白く見せたのである。

それはともかく、アン・リーの端正な絵作りと進行ぶり、何と言ってもこれが本作最大の収穫だった(再鑑賞なので過去形にする)。エマ・トンプスンの脚色も秀逸で、「分別と多感」は未読ながらオースティンを幾つか読んだ経験から言うと、ほぼスケッチ的な描写に推移する原作より恐らく面白いのではないか。

男女優陣が揃って好演で、新人ケイト・ウィンスレットや中堅アラン・リックマンは本作で知名度をぐっと上げた。後の活躍は御存じの通り。

山下達郎が同名のヒット曲を発表するのは、もう少し後だったね。題名を知った時に「おやっ?」と思いましたな。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
いつか晴れた日に
(1995/アン・リー監督/エマ・トンプソン、アラン・リックマン、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・グラント、グレッグ・ワイズ、エミリー・フランソワ、ハリエット・ウォルター/136分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2017/09/21 11:32

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
僕のお薦め度も四つ半なので全く同じですね。
満点にならなかったのは、ラストの切り上げ方に不満があったようです。あの結婚式は無しでも良かったのではないかと。
いずれにしても好きな映画ですね。
十瑠
2017/09/21 11:45
十瑠さん、こんにちは。

前回観た時以上に面白く観ました。
エマ・トンプスン、凄いですわ。好演でしたし。

>ラストの切り上げ方
どんでん返し的な幕切れはともかく、余韻を考えると、結婚式はまあ「なくもがな」でしたかね。
ないと全体の調子が整わないと思ったのでしょう。
オカピー
2017/09/21 21:40

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「いつか晴れた日に」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる