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zoom RSS 映画評「消えた声が、その名を呼ぶ」

<<   作成日時 : 2017/09/10 09:57   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年ドイツ=フランス=イタリア=ロシア=トルコ=ポーランド合作映画 監督ファティ・アキン
ネタバレあり

そして、私たちは愛に帰る」になかなか感心したトルコ人監督ファティ・アキンが、オスマン・トルコ時代に起きた虐殺事件に材を求めた力作である。

1915年第1次大戦の当事国となったオスマン・トルコは、キリスト教徒のアルメニア人を虐待、若い男性を強制的に徴用して作業に駆り出す。その多くは虐殺され、残った人々は現シリアへの死の行進に旅立つ。
 その一人である主人公の冶金業者ナダレット(タハール・ラヒム)は囚人を使った処刑から辛うじて生還、イスラム教徒の工場主に助けられ仕事を手伝ううちに、1922年遂にオスマン・トルコが滅亡し、アルメニア人は完全に自由になる。
 元の弟子に双子の娘が辛うじて生き残ってキューバに渡ったと教えられたナダレットは船員をしてキューバに渡るが、そこで今度はアメリカ南部に渡ったと知り、渡米する。

大人版の「母を訪ねて三千里」と言おうか、実際にはそれ以上の艱難辛苦の遍歴を綴った内容で、本作の功績は、アルメニア人が100年前に受けた民族的災難を部外者たる我々に教えてくれることである。トルコ本国は認めていないらしいが、「火のない所に煙は立たぬ」の諺もあるように、何もなかったということはないわけで、数字を別にするとこの手の事件は被害者側の意見が正しいことが多いと思われる。
 一方で、本作はプロパガンダ的にトルコの非を責める立場ではなく、被害者たる一人のアルメニア人がいかに彼の受けた艱難辛苦を乗り越え娘たちに再会する目的を成し遂げるかを綴るヒューマン・ドラマである。

本物らしさという観点では、地道にアルメニア人の状況を描く前半に比べ、娘再会の旅に出るところから始まる波乱万丈の遍歴を扱う後半はかなり作り物めいていて、落ちる。この監督の悪い癖である。しかし、山あり谷ありの展開ぶりは楽しめるはずで、この手の作品が陥りがちな過剰な神妙ぶりを避けたと思えば悪くない内容であろう。
 純映画的には、主人公が移動する様子を横の構図から捉えたロングショットが頗る美しく、印象的。

関東大震災における朝鮮人虐殺は国家が認め既に確定した「歴史」になっている以上、「歴史家に任せる」と言って逃げた都知事に失望。彼女も一部右派が信ずる日本人無謬説の信仰者らしい。これを認めたところで、一部にバカな人間がいたというに過ぎず、「先祖を貶める」ことにはならない。今だってそこら中にいるだろう。人数が不正確なのではないかという数字への指摘は重要ではない。

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「消えた声が、その名を呼ぶ」
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