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zoom RSS 映画評「あなた、その川を渡らないで」

<<   作成日時 : 2017/08/29 08:46   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年韓国映画 監督チン・モヨン
ネタバレあり

2008年に作られた韓国のドキュメンタリー映画「牛の鈴音」は、僕が観たドキュメンタリーの中でも屈指の秀作だった。60年以上連れ添った老夫婦の愛情交換風景を捉えたものだ。本作も同工異曲で、こちらは結婚75年にならんとする夫婦を捉えている。

結果的に監督チン・モヨンがカメラを回し始めて1年半後くらいに夫チョ・ビョンマンが亡くなり、老妻カン・ギェヨルがその死をひどく悼むことになるが、大事なのは監督は老夫が死ぬのを想定してカメラを回し始めたのであろう、と考えられること。一見失礼な態度かもしれないが、夫婦の愛情をきちんと捉えるにはそれしかなかったのだ。そこに夫婦への尊敬の念が寧ろ感じられるのである。

死が近づいていることを夫婦共々気づいているから、夫婦は揃って出かける時は綺麗な民族衣装を着る。途中から着なくなるからそこに映画の演出(嘘)があるという意見はきちんと映画を把握していない証左で、家にじっとしている時は着ないのだ。さらに、韓国では死が近づくと、天国で良い服が着られるように、高価な衣装から順に服を燃やしていくそうである。

老妻は夫ばかりでなく大昔に幼少期に死んだ6人の子どもたちの為にも子供用の綺麗な服を買い、夫の死と共にそれらの服も焼く。親孝行らしいことを何もできなかった僕は、この母親の思いに涙がこらえきれなかった。両親は、目の病気になった赤子の僕の為に給料一か月分の注射を何本か打ってもらったそうである。親とはそんなものなのだと思う。ひどい親の例を挙げて、それを親の概念とすることなど勿論できない。

閑話休題。
 夫婦が枯葉や雪や水を掛け合うのも演出だ、と同じ人が言うが、監督によればカメラのないところでも夫婦はいつもじゃれ合っていたと言っている(DVD特典による証言)らしい。少女少年時代に結婚した夫婦らしい愛情いっぱいの、微笑ましい情景ではないか。(自分ならやらないと)何でもかんでも疑ってみるのはよろしくない。

映画詩として「牛の鈴音」に及ばない印象があるのは、恐らく夫婦が信じがたいほど仲が良く、喋りが多く、感情を表に出すからだろう。結婚75年を過ぎて、あれほど号泣できる老妻を僕は羨ましく思う。素直に鑑賞できるかたは見るべし。

「牛の鈴音」の老妻が、祖父の後添いによく似ていた。「安中(あんなか)のバアちゃんに似ているね」と話した母親が直後に倒れて死んだ。素晴らしい作品だったが、苦い味も一緒に思い出す。

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あなた、その川を渡らないで
韓国の小さな村。 川のほとりで暮らす、結婚76年目の98歳のおじいさんと89歳のおばあさんは、お揃いの服を着て、手をつなぎ、いつも一緒に出かけてゆく。 12人の子どもを授かり、うち6人は幼い頃に亡くなった。 子や孫が訪ねてくる正月は賑やかだが、時には家族で争い事も。 ある日、愛犬のコマが死に、おじいさんも体調を崩してしまう…。 ドキュメンタリー。 ...続きを見る
象のロケット
2017/08/30 17:17

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