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zoom RSS 映画評「殺されたミンジュ」

<<   作成日時 : 2017/07/09 11:05   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年韓国映画 監督キム・ギドク
ネタバレあり

韓国大衆映画は3年位前に観るのを止めにした。前半喜劇タッチで後半悲劇になったりシリアスになる振幅に頼った作りが泥臭く、映画論的に認められないからである。この手法を好意的に見る人は文字通り作劇の振幅と捉えるのだろうが、僕のようにアリストテレス以来の演劇観を大事にしている人間は寧ろ相殺と捉えてしまう。つまり、悲劇性を喜劇性が食ってしまうのである。
 その代わり、僕が注目してきた数名の韓国の監督は凄い。キム・ギドクはその一人だ。最近の作品には余り満足できないが、それでも見落とすことはできない。

ミンジュという名の少女が、ある夜、何者かに殺される。
 一年後マ・ドンソクをリーダーとする七名からなる正体不明のグループが、国家側と思われる犯人グループの人間を一人ずつリンチして自白書を書かせる。犯人側も七名。
 嫌気がさして次々とメンバーが抜ける中、殺人を命じた官僚幹部の長官をリンチしている時にマは社会の真理に気づいて、現場を立ち去る。その様子を見ていた、かつてリンチに遭った犯人グループの一人は長官を殺し、マも殺す。

マがミンジュの家族であることはすぐに想像でき、これが全員を裁いて終われば一般的な自警団もの、必殺仕事人ものとして見ることができるが、結局グループは敵グループを一人も殺さない。敵グループの一人が自殺し、そのメンバーがかつての上司を殺すだけである。

本編が終わった後に唐突に「自分は何者であるか?」という形而上的な命題を打ち出して、本当に終わる。この哲学性がいかにもギドクらしいが、一見平易な内容に思わせておいていきなりこれを出されては一人合点と言われても仕方がない。

常にメタファーの映画を作ってきたギドクが何を寓意したかを考える時ミンジュという女性の名前がヒントになる。本編の中では全く説明ないが、ミンジュは民主と書くらしい。それを考えると、本作が第一に掲げるのは、殺されたミンジュ(民主)ならぬ、破壊された民主主義である。
 それを言うなら韓国ではなく、日本ではないかと言いたくなる昨今だが、韓国は政治・司法に関しては人治主義と言われるくらい、国民の力が強い。韓国のレベルまで行くと問題が多いが、国民の声を聞く気が余りなさそうな我が国の現政権のようなのも困る。

我が国のことはともかく、韓国では官僚や政治家の不正が多く、困っている庶民が多いことが、この映画からは伺われる。ギドクはそうした社会風刺に留まらず、いきなり「自分は何者であるか?」と哲学的命題を出して、善悪が混然一体となっているこの世界を見せようとする。
 その前提が、7人の被害者側と7人の加害者側、そして一人の役者キム・ヨンミンが7役を演じるという設定である。つまり、ここに出てくる人たちはこのうちの誰でもあり得る、ということではないかと思う。いかにもお金はかかっていないが、力作と言って良い。

“共謀罪”法制定の前提はやはり大嘘でしたなあ。パレルモ条約のガイドラインを作ったパッサス教授が政権の説明が嘘であることを示す決定的な証言をしたものだから、ネット上で右派の女性コメンテイターが「放送したテレビ朝日が誤訳している、私は教授からその言を得ている」と大嘘をついた。教授本人から完全に否定され、本人も「私のミスでした」と謝罪し、最終的に政権、法務省、支持する識者が嘘をついていたことが否定できなくなった。嘘をついて法律を作ったわけだから、そこに裏の意図があるのは間違いない。テロ防止の効果はないとも言い切れないが、以前からあった共謀罪法の数々で欧米と同等の機能は果たせると思う。実際上の問題は運用にあるわけで、まあ、キセルの疑いで鉄道公安官にデタラメな取り調べを受けたことのある僕に言わせれば、官憲は信用できない。僕の場合、定期を持っていなかったので最終的には無罪放免になったが、彼らは一時間も閉じ込め、こちらの説明にいちゃもんをつけて恫喝し、全くひどいものだった。一度疑ったら、普段は親切な警官も鬼に豹変する。実に怖いものだよ。右派は自分は無関係と思っているだろうが、左派以上に「自分は何者なのか」考えたほうが良い。かつて治安維持法で逮捕された右派もいる。

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