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zoom RSS 映画評「ハドソン川の奇跡」

<<   作成日時 : 2017/07/07 09:06   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 7 / コメント 4

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督クリント・イーストウッド
ネタバレあり

2009年と言えば6月に急性膵炎で(ちと大げさに言うと)死にかけた年だ。その年の1月に日本のメディアでも旅客機の機長がハドソン川に着水して乗客乗員155名を救ったと話題になった。しかし、その後英雄転じてその判断に疑惑が生じていることが報道された。こちらもよく記憶している。
 相変わらず精力的に映画を撮り続けているクリント・イーストウッドがこの騒動を取り上げた実話ものである。

チェズリー・サレンバーガー(トム・ハンクス)を機長、ジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)を副操縦士とする旅客機USエアウェイズ1549便がニューヨークのラガーティア空港を離陸した直後に鳥の集団の為エンジン全二基が同時に停止するという憂き目に遭う。機長は、低空飛行の中可能性のある二つの飛行場への着陸の代わりに近くを流れるハドソン川への着水を選び、結果として一人の死者も出さないという奇跡を果たす。
 ところが、事故調査委員会は、シミュレーションを以って、飛行場への着陸が可能であったと糾弾しようとする。これが証明されれば、彼はパイロットの仕事を失い、副業のコンサルタント業も廃業に追い込まれる。そして、委員会の席で彼は、コンピューターや人的のシミュレーションが考慮していない人的ロスを加味して再シミュレーションするよう求め、自分の選択がベストであったという結論に導く。

主人公は、関係した人々の共同作業による奇跡である、と謙虚に語る。人間的に実に立派な人だが、それも彼の機転がなければありえなかったわけだから、彼による奇跡である。
 ドラマとしての感動はそうした彼の人間性と、委員会での結果であると思うが、映画的に結構不満が多い。少なくとも【キネマ旬報】の批評家選出第1位となった作品としては物足りない。

一部で評判が良い、進行形の現在と飛行機の場面をサンドウィッチにする構成は、下手ではないが、ややうるさい感じがする。演出(見せ方)は贅肉を最小限にまでそぎとったもので映画として理想的ではあるが、反面このサンドウィッチ構成で96分というのはいかにも短い。
 本編終了後に実際の映像を出すスタイルを僕は余り買わないが、本作については、本編の中での主人公と細君(ローラ・リニー)との関係を実際の映像が補完する形になる効果を出していると思う。

全体的に、この種の実話なら「コンカッション」のほうが映画的な面白味があるくらいなのに、片やキネマ旬報1位片や殆ど無視される。無条件に票を入れる批評家はもはやイーストウッド信者と言っても良いのではないか。

90年以上に及ぶ【キネマ旬報】のベスト10史においてこんなに1位を多く取った監督はいない。競争相手がいないという面があるにしても、安倍一強と同じで異常な感じがする。安倍政権は都議選で惨敗した形だが、メディアが言い出したほど簡単に崩れるか僕は疑問である。一旦目に見えて弱くなれば今まですり寄ってきたメディアや人々が手のひらを返して逃げ出す。これが本格化すればすぐに崩壊するが、果たして?

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タイトル (本文) ブログ名/日時
[映画]ハドソン川の奇跡
2016年、アメリカ 原題:Sully 監督:クリント・イーストウッド 脚本:トッド・コマーニキ 出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー ハドソン川に不時着した機長の手記を映画化。 2009年1月15日、マンハッタン上空わずか850メートルの低空地点で旅客機 ...続きを見る
一人でお茶を
2017/07/07 15:33
ハドソン川の奇跡 ★★★★★
俳優としても監督としても著名なクリント・イーストウッド監督と、名優トム・ハンクスがタッグを組んだ人間ドラマ。2009年1月15日、突然の全エンジン停止という危機に見舞われながらも、ハドソン川に不時着して乗客全員が生還した航空機事故のてん末に迫る。『サンキュー... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2017/07/07 20:13
「ハドソン川の奇跡」☆見事な邦題
トム・ハンクスが主役を演じた時点で、もう120%成功したと言っても過言では無い。 ...続きを見る
ノルウェー暮らし・イン・原宿
2017/07/07 22:37
「ハドソン川の奇跡」
いやー、シンプル。 ...続きを見る
或る日の出来事
2017/07/07 23:18
『ハドソン川の奇跡』
□オフィシャルサイト 「ハドソン川の奇跡」□監督 クリント・イーストウッド□脚本 トッド・コマーニキ□キャスト トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー■鑑賞日 9月25日(日)■劇 場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>大好きなトム・ハンクスとイーストウッド監督のタッグ。155名の人命を救ったあのハドソン川への胴体着陸は、まだまだ記憶に新しい事実。機長の素晴らしい素早い経験則に寄る判断が、尊い人命を救った。しかし、その裏側で知らざる戦いもあっ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2017/07/08 20:34
映画:ハドソン川の奇跡 当ブログは目撃者なので当事者?のため、涙が止まらない… 評論不可(笑)
実は当ブログ、たまたまNYで この現場に居合わせてしまった。 その様子は当時、以下のようにレポート。 ...続きを見る
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF ...
2017/07/09 07:23
『ハドソン川の奇跡』('16初鑑賞92・劇場)
☆☆☆☆− (10段階評価で 8) 9月24日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 11:40の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2017/07/10 08:36

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>イーストウッド信者

たしかにそう呼びたくなる人がマスメディアで映画評を書くような人にもいますね。イーストウッドはどの作品も手堅く仕上げていてうまいですけれども、ワーナーでずっと仕事していたせいか、どれもB級娯楽の香りがあるんですね。そこがまたいい、のかもしれませんが(自分で見てもそう感じることがある)、ロバート・レッドフォードやメル・ギブソンのほうが王道路線行ってるように見えるのです。アメリカではどちらも評価されていますが、日本ではイーストウッド神格化に偏っている気がします。

>「コンカッション」
このブログ読んで初めて題名聞きました。日本での宣伝はどうなっているのでしょうね? 私も今はあまり宣伝情報まめに見ている方ではないので文句も言えないかな。
nessko
URL
2017/07/07 15:39
nesskoさん、こんにちは。

>B級娯楽の香り
かつて【キネマ旬報】は、選者にジャーナリストや文筆業の方が多く、娯楽映画が長く軽んじられていました。ヒッチコックは殆ど無視され、【スクリーン】ではベスト10に入った「裏窓」「ハリーの災難」「めまい」「北北西に進路を取れ」「ファミリー・プロット」がベスト10から洩れています。
その反動なのかとも思う一方で、邦画の顔ぶれを観ると純文学系が強い。
昔より多様性がある時代ということは確かなようです。

>日本ではイーストウッド神格化
アメリカではほどほどの評価で、僕がアカデミー賞より重視しているニューヨーク映画批評家協会賞などでノミネートされることもそれほどないですよね。確か受賞は監督賞の一度のみ。

といった次第で、僕も個人的に高く評価している作品はありますし、全体的にも嫌いなわけではないですが、世界の映画を大量に輸入している中で毎年のように1位になるのは異常と感じている次第。レッドフォードの評価が相対的に低すぎるのも反発を感じてしまう。
【キネマ旬報】監督賞を何回も取っているイーストウッド本人が「日本は変な国」と思っているかもしれません(笑)

>>「コンカッション」
ウィル・スミスが主演なのに、実話の映画化と言う内容が地味だったせいか、余り宣伝もしなかったようですよ。
オカピー
2017/07/08 10:51
イーストウッドの「グラントリノ」は、私は観て山城新伍が脚本・監督した「やくざ道入門」(1994年)を思い出したのですよ。これは菅原文太版「グラントリノ」といっていいと思っているのですが、日本では作品自体が忘れられかかっていて。イーストウッドの「グラントリノ」も、冒頭葬式で孫がいきなりへそピアスですか、普段着のまま来ていて、孫世代と主人公の相性の悪さを印象付けたいのでしょうけどかなり唐突、漫画みたいな極端さだった。アクションスターだったイーストウッドのイメージを活かしつつ主人公が造形されていましたが、昔の東映の大衆映画みたいなのりで、最後にイーストウッドの歌が流れるあたりも昔のスター映画風。でも、これ、日本では例えば小林信彦は大名作、傑作みたいに評していて、ちょっとほめ方に違和感を覚えました。一方で「やくざ道入門」は忘れ去れられかかっていますが……
http://d.hatena.ne.jp/nessko/20141201/p1
アメリカでは「グラントリノ」がイーストウッド作品では興行的にいちばん成功したらしいですね。だからアメリカでは大衆人気の映画スターとして今も第一線なんでしょう。
nessko
URL
2017/07/08 12:00
nesskoさん、こんにちは。

>「グラントリノ」
小林信彦ほどではないでしょうが、この作品が一番好きなイーストウッド作品かもしれません。
言わば現代の西部劇で、西部劇のフォーマットを通してアメリカの行き先を示したような内容がピンと来ました。彼の作品は案外解り難いので、この解りやすさが気に入ったわけです。

>「やくざ道入門」
「グラントリノ」に似ているなら、観てみたいですねえ。
映画(や文学)というのは、本当にちょっとの差で、後世まで残る作品と、すぐに消えてしまう作品とに分かれてしまいます。非情です。
オカピー
2017/07/08 21:18

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