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zoom RSS 映画評「後妻業の女」

<<   作成日時 : 2017/07/01 10:05   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・鶴橋康夫
ネタバレあり

後妻業とは、高齢(で持病がありそう)な資産家を狙った一種の女結婚詐欺師のことである。

現実の社会では単独犯が多いようだが、本作では60代のヒロイン大竹しのぶが結婚相談所の所長である豊川悦司と組んで、次々と解らないように巧みに再婚相手を殺傷して財産をせしめる。彼らの敵は遺族であるが、事前に作った公正証書をたてに抵抗できないようにしてしまう。
 ここに大竹女史が重症に至らしめた8番目の夫・津川雅彦の気の強い次女・尾野真千子が抵抗者として現れ、同級生の弁護士・松尾諭と彼の雇う私立探偵・永瀬正敏の強力な協力の下、二人を追い詰めていく。
 ところが、探偵としては優秀だが金銭欲もある永瀬探偵は彼らを脅迫するという行為に及び、結局協力者たる責任を放棄してしまう。さてこの後どうなるでありましょうか。

実際にありそうな詐欺商売を扱ったところがなかなか興味深い。ブラック・コメディー仕立てにしたところに社会風刺的な面白味も出ている。通常のサスペンスであれば、悪党二人は破滅して終わりであろうが、そこがTVとは違う映画の面目躍如で、結婚詐欺カップルも悪徳探偵も満点回答を得ない代わりに破滅もしない。特にカップルが抵抗により色々ひどい目に遭い続ける辺りにコメディーたる所以がある。騙したつもりが逆に騙されていたというのも有り勝ちながら可笑しい。

ブラック・コメディーだからゲラゲラ笑えない。ゲラゲラ笑えるようではブラック・コメディー失格である。ただ、実際には作り方によってにやにや見終えることができたであろうに、設計が不十分で余り楽しめない。例えば、実は両想いなのではないかと想像させる詐欺カップルが凝りもせずに相変わらず詐欺行脚をしている幕切れ自体は悪くないものの、その場面と重なる「お金は残した本人のもの。誰に渡そうが本人の自由」などという勿体ぶったセリフに相殺されてしまって、とぼけた感じがうまく醸成されないのである。

演技陣では、大竹しのぶに尽きる。映画サイトで発見した「大竹しのぶが勿体ない」という紋切り型のコメントは、本作について言えば、逆に彼女の実力を馬鹿にしていることになると思う。実際には誰にでもできる役ではない。怖さの中に可笑し味を、可笑し味の中に怖さを感じさせる悪女を演じることができる女優が他にどれほどいると言うのだろうか?

僕はカーク・ダグラスの主演した「探偵物語」は配給会社の誤訳としてきた。しかし、1950年代のミステリーを読むと、刑事を「探偵」と呼ぶ例が出てくる。本作で言われるように、私立探偵に対する公立探偵だ。僕のほうが間違っていたようだ。

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後妻業の女 ★★・5
直木賞作家・黒川博行のベストセラー小説を基に、独り身の高齢男性の後妻におさまりその資産を狙う女を中心に、欲にとりつかれた人々が織り成す群像劇。『愛の流刑地』などの鶴橋康夫監督がメガホンを取り、現代社会に潜む危うさを、ユーモアを交えて活写する。ヒロインに... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2017/07/01 13:08
『後妻業の女』('16初鑑賞81・劇場)
☆☆☆−− (10段階評価で 6) 8月27日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 15:20の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2017/07/02 21:16
「後妻業の女」☆怪談より怖いっ
大竹しのぶの名演が光るこの映画。 爆笑あり苦笑いあり、へー!?っと驚いたりドン引きしたり。 しかーし!これは稲川淳二に怪談より怖いんですけど??? ...続きを見る
ノルウェー暮らし・イン・原宿
2017/07/04 18:15

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ブラックコメディー仕立てになってるんですね。だったらちょっと見てみようかなと思いました、大竹しのぶはいつ見てもいいですから。
この映画、一部で話題になっていましたが、現実に似たような事件があったので気持ち悪さが先行して映画で見たいという気になれませんでした。事件の裁判の行方には興味がありますのですけれども。
大竹しのぶは『黒い家』の主演もしていましたね。『黒い家』、ホラー小説大賞とか話題になっていたので読んでみたのですが私的にはそれほどいいとは思えなかったのです。あのころは、ああいうサイコものが流行ってたせいで、またかよ、と。それと安直にしろうとが書いた文章から性格分析していいのかという疑問もあります。文章を書くのが苦手な人はどうなるのでしょうか? 下手だから誤解されたりしないのかなあ?
とにかく、原作はいまひとつでしたが、映画の『黒い家』は大竹しのぶを見られただけで満足しました。すごい女優だと思っております。
nessko
URL
2017/07/01 16:25
nesskoさん、こんにちは。

>ブラックコメディー仕立て
そう言って良いと思います。
欧米のような洒落た感じがなく、余り高級なものを求めると失望しますが、個人的には退屈しませんでした。

>『黒い家』
僕は最近の小説は読んでいる暇がないので存じ上げませんが、原作ファンがまたぞろ映画版を貶していたのに例によって腹を立てましたよ。僕のように原作を読んでいない客にとって原作との一元的な比較など何の意味もない。
映画版「黒い家」は仰るように大竹しのぶが大変素晴らしいので、見る価値が大いにありましたね。僕は映画自体もかなり気に入りました。当時日本では強力なサイコ・ホラーがそれほどなかったですから。
オカピー
2017/07/01 23:25

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