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zoom RSS 映画評「さよなら歌舞伎町」

<<   作成日時 : 2017/06/03 08:46   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり

オオカミ少女と黒王子」でも指摘したように、廣木隆一はセミ・ドキュメンタリー志向の監督ながら、何でも屋のところもあって畑違いでしかないアイドル映画など色々と任されているが、「ヴァイブレータ」や本作のようなタイプが一応本来のフィールドではないかと思う。

メジャーの歌手を目指す前田敦子には一流ホテルで働いていると嘘を言っている同棲相手の染谷将太は、実はラブホテルの雇われ店長。彼の勤めている店で起きるほぼ一日の騒動を描く群像劇である。

彼のホテルを仕事場としている韓国人デリヘル嬢イ・ウンウは、この日を最後に日本を去ろうとしている。溜めた金で韓国でブティックを開くつもりだ。蕎麦屋を開く夢のある恋人ロイは彼女の秘密の商売を知って客の振りをしてホテルで会う。彼は彼女を責めることはなく、自分も日本女性から金を貰っていたと告げる。二人は韓国に帰って共に店を開くのだろうか。
 新米の美人刑事・河井青葉がキャリアの宮崎吐夢とホテルにやってきた矢先に、このホテルで働いている時効寸前の逃亡犯・南果歩に気づく。しかし、キャリアは不倫がばれて自分のキャリアを台無しにするのを恐れてトンズラ、彼女一人では処理しきれず南女史に逃亡されてしまう。半日逃げおおせた女史と共犯の松重豊は時効を迎えて喜ぶ。
 家出少女をフーゾク嬢にする仕事をしている忍成修吾は引っかかった我妻三輪子の情にほだされて仕事を抜ける。上の人間に痛めつけられるが、彼女の為にホテルに帰ってくる。

そして最後は店長本人のお話。映画の中では一流ホテルで働いていたかどうか不明確だが、オリジナルのシナリオ(荒井晴彦作)にはその描写があったらしい。
 一流ホテルのフロントマンを目指す彼は、大学に行っているはずの妹・樋井明日香とばったり出会う。何と塩釜からはるばる東京へAV撮影の為に出張して来るらしい。妹がやくざな商売をしていることを詰るが、心配しているからこその言葉だ。
 しかも、彼は恋人の敦子ちゃんが枕営業でレコード会社の男としけこんでいる現場にも遭遇してしまう。さすがに面白からぬ思いを抱いた彼はホテルを飛び出て塩釜に行くバスに乗る。このバスには妹も乗っている。

この幕切れで脚本の荒井氏と廣木氏は「3・11を忘れるな」というメッセージを込めている模様。何となれば、兄と妹は3・11の被災で経済的に行き詰って人生計画を狂わせ、最後に故郷に帰っていくという設定だからである。どうも震災の結果デリヘル嬢になった女性の実話に感化された模様で、結果的に韓国から来たデリヘル嬢と塩釜から時々撮影に来るAV嬢とに分身させたようだ(後半は僕の勝手な推測)。

ラブホテルが舞台ということもあって、登場人物は些か後ろめたい秘密があるという共通点を持つが、作者たちは全体としてじめじめとならない程度にこの陰湿な物語群をまとめている。その方針がなかなか良い。
 いかにも実感のある見せ方をしつつ、実は余り現実的なお話になっていないのは、日本の現実を普遍的に見せる寓話劇とする狙いがあったからだろう。一向に歌舞伎町の現状が反映されていないという指摘は、それが目的でないのならどうでも良い。

現実的でないのは良いが、本当らしくないのは余り良くない(この違いが解るだろうか?)。つまり、同じ日に妹と恋人のまずい現場に遭遇するなどありえないだろうということ。
 また、彼がラブホテル勤めを秘密にしていたという設定の布石が効くとは言え、お話全体の構図を見渡した時に恋人の事件は余分ではなかろうか。彼の忸怩たる思いが爆発する契機となったのは確かだが、妹だけで十分だ。
 リアリズム至上主義的に言えば、「アウトレイジ ビヨンド」にも似たバッティング・センターでのリンチ。百発百中で人に当てるなんてプロの選手でも恐らくできない。
 これは映画の評価に加味するレベルの問題ではないが、とにかく、劇映画は現実そのものになったら寧ろ敗北だと思っている。適度な嘘がなければ映画はダメである。それを理解していない人が昨今多いのではあるまいか? 

昔ならもっと少ない星になっただろうが、最近は子供向けの映画ばかり見せられているので、相当甘くした。

韓国女性が差別主義者がヘイトスピーチをする傍らを通り過ぎる場面がある。本作製作後に成立した法律のおかげで、少しは静かになったのではないかと思う。オリンピックをする時にあんなのが騒いでいたら「おもてなし」どころではなく、外国人は逃げていく。現に英国大使館は自国民に「遭遇したら近寄るな」と言っているらしい。

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さよなら歌舞伎町〜運命の311
公式サイト。廣木隆一監督、荒井晴彦・中野太脚本。染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、ロイ、樋井明日香、我妻三輪子、忍成修吾、大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、河井青葉、宮崎 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2017/06/03 08:55

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
タモリさんは、六本木にある英国式のパブに入ろうとして、客であるイギリス人から口汚くののしられて追い出されたと言っていた。
ああいった連中はどこの国にでもいるけど、ね。このは日本だぜ。と言っていた。

ねこのひげは、差別する奴やいじめる奴の気持ちが理解できん。
女性に関する好みというのはあるけどね。
ロシア美人はよいですな〜(≧◇≦)
ねこのひげ
2017/06/04 04:17
ねこのひげさん、こんにちは。

>ああいった連中
残念ながらいますよ。
アメリカで、イスラム系の人に罵声を浴びせていた人ともめて中に入った人が刺されましたね。

>ここは日本だぜ
外国から来る人もある程度は「郷に入っては郷に従え」をする必要はあると思います。宗教的な譲れないこともあるだろうが、それは日本人の慣習とて同じこと。なるべく認めてあげたいけれど、受け入れる方が必要以上に気を配るのも違うのではないかという気がします。しかし、差別はいけない。

>女性に関する好みというのはあるけどね
それはどうしようもないです。

>ロシア美人
大学のロシア語のタマーラ先生(当時40歳くらいか?)は、もう太っていたけど、なかなかの美人。若い頃は超美人だったらしいと同級生が言っていた。
オカピー
2017/06/04 21:15

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