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zoom RSS 映画評「ミニヴァー夫人」

<<   作成日時 : 2017/06/22 08:54   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
1942年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー
ネタバレあり

1942年度アカデミー賞で、作品・監督・脚本など主要7部門で受賞したウィリアム・ワイラーの名作であるが、残念ながら額面通りに受け取るわけに行かないようである。今回は恐らく3度目の鑑賞。寧ろ好かない作品ながら、NHK−BSで放映していたのでまたまた観ることにした。

舞台は英国。1939年から物語は始まる。
 ミニヴァー氏(ウォルター・ピジョン)は収入に見合わぬ豪華な車を買い、夫人(グリア・ガースン)は高い帽子を買う。似たもの夫婦という他愛ないお笑いの一席の後、夫婦の長男(リチャード・ネイ)が大学から帰省して封建制の問題を説くが、そこへ領主の孫娘(テレサ・ライト)が祖母ベルドン夫人(メイ・ウィッティ)の作るバラが一等賞になるよう計らってほしいと頼みに来る。バラ作りに熱心な駅長(ヘンリー・トラヴァーズ)が“ミニヴァー夫人”と名付けたバラを出品することにしたからである。
 最初は衝突した長男と孫娘もこれを契機に親しくなり、遂には結婚に漕ぎつける。この間に始まったドイツとの戦争が本格化、長男は空軍兵士として出征し、父親がダンケルクへ民間の立場で救援に出、残された夫人は遭難して負傷したドイツ軍人をやっつける。
 バラのコンテストでは、ベルドン夫人が周囲に押されて一等賞を駅長に譲る。しかし、その直後に起きた空襲で駅長や孫娘が死んでしまう。牧師は町を挙げて戦おうと訴える。

ワイラーの仕事ぶりはさすがに立派である。原作となったジャン・ストラッサーの連作短編集をうまく一つの流れのある(個人的にはじっくりと展開する前半と慌ただしい後半のバランスの悪さを感じる)物語として構築した脚本を滑らかに映像に移し、その映像もワイラーらしく階段をうまく使った美しい構図で非常にレベルが高い(撮影賞受賞、撮影監督はジョゼフ・ルッテンバーグ)。

しかし、本作が高く評価されたのは、9・11直後のアメリカ国民の反応同様、当時のドイツに対する義憤に立脚するものだろう。銃後の精神高揚映画が色々と作られている時期に当たり、その中で一番良く出来た作品だったということだと思う。しかし、どこの国とも交戦をしていない現在の我々の目には、銃後を舞台にした良質なホームドラマ的な内容とは言え、戦意高揚映画は愉快ならざるものがある。内容を深く分析する気になれない。

配役では、グリア・ガースンの主演女優賞が妥当である以上に、助演女優賞を受賞したテレサ・サイトが断然素晴らしい。実は鑑賞の当日までシンクレア・ルイスの長編小説「本町通り」を読んでいた。読みながら保守的な街を改革しようとするヒロインの若妻を演じるならこの時代のテレサ・ライトが理想だなあと思っていたところ。本作を見るとそのキャスティング(笑)が正しいと納得させられた次第。

開戦の年に作られた邦画「虞美人草」では、「征かぬ身はいくぞ援護へまっしぐら」という文字が出た。どこの国も同じやねえ。

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ミニヴァー夫人
(1942/ウィリアム・ワイラー監督/グリア・ガーソン、ウォルター・ピジョン、テレサ・ライト、デイム・メイ・ウィッティ、レジナルド・オーウェン、ヘンリー・トラヴァース、リチャード・ネイ、ヘンリー・ウィルコクソン/134分) ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
後半は考えないことにしてまして、ま、ワイラーさんとしても前半にのみ力を注いだのではないかと思ってます。
この作品のリベンジとして「友情ある説得」を作ったんだろうと勝手に解釈しています。

>本町通り

「孔雀夫人」の原作者であるシンクレア・ルイスの最も有名な作品ですよね。
20代に読んで以来本棚に長くあった小説ですが、すっかり忘れちゃいました。
十瑠
2017/06/22 14:25
十瑠さん、こんにちは。

>後半は考えないことにしてまして
十瑠さんの評価は僕に比べて高いわけですが、この部分に関しては同じような感覚を持たれたようで、まずは一安心(笑)。

>「友情ある説得」
もう三十年くらい見ていないもので、そろそろ見直したいですねえ。

>>本町通り
その通り(洒落ではないです)です。
おおっ、お読みでしたか。僕は県立図書館にあったのを借りてやっと読みました。
今の日本は、100年前のアメリカと余り変わらない感じがして、悄然。
頭が良く少し気が強いヒロインぶりがテレサ・ライトを想起させました。
オカピー
2017/06/22 22:41

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