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zoom RSS 映画評「津軽じょんがら節」

<<   作成日時 : 2017/06/21 09:21   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・斎藤耕一
ネタバレあり

この映画が公開された時の記憶は僅かにあるが、映画ファンになって数年に過ぎない僕はまだ洋画しか興味がなかったので全く眼中になかった。実際に見たのは十何年か後だと思う。TVで見た「旅の重さ」は佳作と思ったものの「約束」は凡作と感じた斎藤耕一監督だけに、どんなものかと見たが、これが実に素晴らしかった。それ以来30年ぶりくらいの再鑑賞になるだろうか。

東京でバーに勤めていた女性・江波杏子が、抗争中の組の幹部を殺したチンピラ織田あきらを連れて、故郷である青森県の寂れた漁村にやって来る。繰り出される追っ手からツバメの彼を匿うためだ。
 彼女には6年前に出漁中に死んだ父と兄の墓を建てる目的があるが、頼りにしていた保険は父兄の不正が発覚して下りず、貯めた金を同僚に持ち逃げされ、遂に村を出る決心をする。
 一方、男は暫く所在ない時間を過ごしていた男は、盲目の少女・中川三穂子に親しみを覚えると同時にただ一人村に残って仕事をしている漁師・西村晃の仕事を手伝って楽しみを覚え、この村に落ち着くことにするが、やがて現れた追っ手に殺されてしまう。

親子と故郷をテーマにした映画である。
 酒場女は母親も失って父兄のお墓を作ることも兼ねて故郷に戻る。チンピラは事実上の孤児であり、故郷がない。漁師はヒロインと駆け落ちをした息子が建設現場で死んだことを知らされる。チンピラは漁師と疑似親子(この当時そんな言葉はなかったと思う)の関係になり、少女とも夫婦のような関係になる。

故郷を失った女と故郷を得た男。そこで終わってもなかなか味わいのある映画になったと思うが、映画は厳しい画面と登場人物の心境を反映する暗然たる色調に沿うように悲劇を迎える。
 海を背景にしたフォトジェニックなロング・ショットに登場人物の苦しそうなアップの対比。鮮やかな赤い服の女に逃げる男の暗部を象徴する黒い服の男の対比。漁村と画面には出てこない都会との見えざる対比。様々な対比により浮かび上がる人生におけるギャップが津軽三味線の激情的な音に増幅されて、人間の生きる切なさを醸成する。胸を打つ。

主人公の故郷への帰還やヤクザに殺される男など神代辰巳監督のロマン・ポルノ「恋人たちは濡れた」と共鳴する部分の多い作品で、勿論こちらのほうがぐっと格調は高いが、この二作が作られた1973年は学生運動が下火になり、閉塞的かつ逃避的な時代ムードだったのだろうと思う。傑作。

1973年は日本映画が最も不入りだった頃だなあ。映画ファンと言えば洋画を見る人のことだった。映画ファンは字幕を読むのを面倒くさがらず、TVの吹き替えを嫌った。隔世の感ありだ。

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津軽じょんがら節
(1973/斎藤耕一 監督/江波杏子(=中里イサ子)、織田あきら(=岩城徹男)、中川三穂子(=ユキ)、西村晃(=塚本為造)、佐藤英夫、寺田農、戸田春子、東恵美子、富山真沙子/103分) ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
1973年といえば、「スティング」に「ペーパー・ムーン」、「アメリカの夜」、「ジャッカルの日」と名作が目白押し。
更に「ペーパー・チェイス」、「突破口!」、「スケアクロウ」、「シンデレラ・リバティー」、「ルシアンの青春」と佳作も数多く出た年ですね。
日本映画は不入りだったですか。
この映画は封切りで観た映画で、冒頭のじょんがら三味線の奏でる物悲しい音をバックに津軽海峡の荒波を捉えた映像が素晴らしかったですね。一気に引き込まれました。
この後、斉藤作品は再び江波京子を使って野口五郎と共演させた「再会」も観たと思いますが、ほぼ記憶にありません。
訃報も覚えていますが、もう8年も前の事だったんですねぇ。
十瑠
2017/06/21 14:20
十瑠さん、TB&コメント有難うございます。

>1973年
洋画はすごかったですよ。
「ブラザー・サン・シスター・ムーン」「ジョニーは戦場に行った」もあり、こんな地味な映画が大ヒットしました。

>日本映画は不入り
統計上は1990年代のほうが不入りのようですが、洋画と邦画の配収が逆転するのがこの辺りと記憶しています。洋画ファンが映画鑑賞を維持しているのに対し、一般ファンが映画を観なくなった頃ということと思います。それを21世紀になって復活させたのがTV局なのでしょうね。

>三味線・・・荒波
これが互いに相乗効果を生んで、迫力ある人間ドラマにしていました。

>「再会」
これは完全に未見ですね。

>訃報
今思い出しましたが、亡父の調子がおかしくなった頃亡くなったのですよ。僕の入院中におかしくなったのが始まり(為に母がタクシーで見舞いにやって来ました)、その4か月後に手足が動かなくなる現象がはっきりしたのです(神経がつまったのが原因)。
オカピー
2017/06/21 21:48

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