プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「カプチーノはお熱いうちに」

<<   作成日時 : 2017/05/06 09:22   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2

☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年イタリア映画 監督フェルゼン・オズぺテク
ネタバレあり

トルコ出身のフェルゼン・オズぺテクは前回鑑賞の「あしたのパスタはアルデンテ」(2010年)で、良い面が発揮された時のイタリア映画であると手応えを覚えさせた。

カフェで働く妙齢美人カシア・スムートニアックが、最初の出会いの印象が最悪だった肉体派男性フランチェスコ・アルカと、惹かれ合うものを覚えて結局結婚する。
 13年後同性愛者の男友達フィリッポ・シッキターノと始めたレストラン兼パブを大成功させた彼女は、碌に仕事もしない夫と不仲ながら、二人の子供に恵まれ、相対的には幸福と言って良い生活を送っている。
 しかし、偶然的に受けた検診によりかなり進行した乳がんであることが判明、化学療法から始める苦しい治療の日々を送ることになる。さすがに改心した夫と仲も元に戻る。夫は病院を抜け出て家に戻ってきた彼女を病院に送り返す途中、結婚を決める決定的な逢瀬となった海岸へ寄り道する。

「アルデンテ」同様時空の面白い扱いがあり、ヒロインの心情をしっとり捉えた抒情性の醸成も秀逸だが、鑑賞中少し引っかかったのが寄り道した海岸の道から病院へ帰る車の中でかつての自分と交錯するという場面の扱いである。

これをどう理解したものか当初少々難儀、と言おうか当惑させられた。勿論、本作は一般ドラマであるから、実際に自分たちを観たのではなく、13年前の自分たちを第三者的に見(て冷静に振り返っ)たと考えるのが正しいのだろうが、余りにファンタジー的な、序盤の場面を踏まえたしっかりした交錯のさせ方であったものだから、僕は13年前における最後のショットと考え併せて、これは逆に現在から13年後を夢見た【邯鄲の枕】の如き作品なのではないかという考えが暫し沸き上がったのである。
 13年前の最後のショットで、彼女は工事前の売り店舗の中で前方を見つめている。それがその場所で大勢の男女が踊っている場面に繋がれる。これを振り返ってみると、そう思えないこともないだろう。

実際には、終盤、海辺の場面に引き続きそれまで紹介されなかった結婚前の秘話が語られることを考えると、闘病する彼女の若き日のフラッシュバックと理解して間違いないのだが、ちょっと余分なことを考えさせてしまったなと僕には少しマイナスの印象になった次第。
 だから、もっと頭の回転が良い時に観てすっきり理解したらば、★一つ分余分に進呈できたかもしれない。自分の頭の悪さ、勘の悪さを棚に上げてマイナスとするのも何だが、その遠因が作品自体にあったということを指摘するのも意味無き事ではあるまい。

さだまさし「雨やどり」を思い出す。あの歌は両義的で、最後に落ちのようなものがあり、それまでの歌詞が実際にあったことではないと思わせる面白味があった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
この監督の出身地がトルコと聞いて、ひざを打ちました・・。
映画の中の民族的、性的マイノリティに向ける厳しくもやさしい視線は、監督自身が育った土地が育んだものでしょう・・。

>これは逆に現在から13年後を夢見た【邯鄲の枕】の如き作品なのではないかという考えが暫し沸き上がったのである。

 同意です!
意外と他の方も考え付きそうな気もしますが、僕の知る限り、このことを指摘した評論をほかに見聞きしません・・。
ぼくが、このブログを訪れる最大の理由が、プロフェッサーのこのような独自性に富んだ事物への見方にあります。
そしてそれは、深い考察によって導き出された探偵の推理のようで、毎回驚かされるところです・・。
人は案外、人生をやり直せるとしても、以前と同じような命を生きてしまうものなのではないでしょうか・・?。

 >さだまさし
「雨やどり」も歌詞の最後の一行で、落語の夢落ち的な展開になっていて見事です(笑)
落研出身のさだまさしは、ウディ・アレン的な才能を持った人だと思いますが、グレープ時代の彼の繊細で明るさを封印した曲目や「檸檬」のような短調な曲が好みです。
一般には、大ヒットした上記の曲や「関白宣言」などのほうが有名ですが・・。
浅野佑都
2017/05/07 17:33
浅野佑都さん、こんにちは。

>民族的、性的マイノリティに向ける厳しくもやさしい視線
冒頭の描写によく表れていますね。
 この冒頭が雨宿りだったので、夢落ちのようでもある幕切れを考えているうちに、さだまさしの「雨やどり」を思い出したわけですが。

>このことを指摘した評論をほかに見聞きしません
それ故に、「皆さんはあの終盤をすっきり理解したのだなあ」と思い、色々言い訳みたいな書き方になったわけです。
 未来を観たという解釈も面白いとは思っています。と言いますか、最初はそれと決めつけかけたのですが(笑)、あの秘話を見たら「やはり違うか」ということに落ち着きまして・・・

>人は案外、人生をやり直せるとしても
そうかもしれませんね。
彼女はきっとあの男とまた結婚するでしょう!

>グレープ時代の彼の繊細で明るさを封印した曲目や「檸檬」のような短調な曲が好み
 右に同じです。
「精霊流し」も素晴らしいと思いますが、個人的に一番のお気に入りはグレープ時代のシングル「ほおずき」。「精霊流し」ほど売れず、「縁切寺」ほど知られていないものの、この失恋ソングにおけるセンチメンタリズムはナイーヴにして強力。もうたまりません。
オカピー
2017/05/07 21:43

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「カプチーノはお熱いうちに」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる