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zoom RSS 映画評「ボヴァリー夫人」(2014年版)

<<   作成日時 : 2017/05/17 10:27   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年ドイツ=ベルギー=アメリカ合作映画 監督ソフィー・バルト
ネタバレあり

ギュスターヴ・フローベールの「ボヴァリー夫人」は高校時代に読んだ。その後1949年にアメリカで映画化された版や、1991年にクロード・シャブロルが映画化した本場フランス版を観た。アメリカ版は裁判に臨むフローベール自身が登場する変則版で余り芳しくなく、かなり丁寧に描いたフランス版はまずまずの出来栄えだった。

本作は日本では映画祭で公開された。多分「キネマ旬報」では劇場公開、「スクリーン」では劇場未公開扱いになる。僕の分別ルールでは未公開である。

修道院出で夢見がちな性格のエマ(ミア・ワシコウスカ)は田舎の医師シャルル・ボヴァリー(ヘンリー・ロイド=ヒューズ)と結婚するが、情熱なき夫婦生活や平凡な日常に不満を覚え、富裕な侯爵(ローガン・マーシャル=グリーン)と知り合ってその思いが増幅する。
 やがてその侯爵と懇ろに、彼に捨てられた後は薬剤師オメー(ポール・ジアマッティ)の家に下宿する書記レオン(エズラ・ミラー)と逢瀬を重ねることになると同時に、商人ルウルー(リース・エヴァンズ)に物質による射幸心を刺激され夫に内緒で高額な品物を買った結果膨大な借金を抱えることになる。二進も三進も行かなくなった彼女は砒素を飲んで死ぬ。

いかなる事情があろうと女性の不倫、昔風に言うと不貞が許されなかった19世紀半ばこの小説は風紀紊乱に問われフローベールは被告席に座ることになる。この事実に基づいて構成されたのがアメリカ版であったが、本編をしっかり描いて原作の感じをよく伝えていたのは1991年のフランス版である。
 本作は上映時間が2時間を切っていることもあって、彼女の向上心を刺激する侯爵と、本来は別人である資産家ロドルフとを合体させて侯爵(マルキ)として登場させる。

それに関して一言。今回の字幕版訳者は些か勉強不足で、侯爵を「マルキ」と名前のように出しているし、何よりシャルルが英語発音のチャールズ表記になっているのが気に入らない。確かに映画においてフランス語ではなく英語で話されているが、世界的に有名なフランスの小説の登場人物がフランスで活動するのだから字幕でシャルルとしないのは不可。日本においても人口に膾炙した作品である以上、それくらいは考慮しないといけない。

それはともかく、ムード的にはフランス版には及ばないものの、衣装や美術で健闘しているし、文芸ムードも大分ある。しかし、やはり内容に比してやや短めで、甘い考えに立脚しているとは言え我々がしっかりと胸に収めなければならないエマの上昇志向がおざなりに扱われ、単なる気の強いわがまま女のように感じられるところが多く、結果として上品な官能映画のように見えてしまう。原作に近いかどうかは余り関心がないが、作品としてこれでは弱い。

窮屈な衣装を脱ぐショットが幾つかあるのは、官能的描写というより、彼女の閉塞感からの脱却を寓意している感じで、この表現は悪くない。ポーランド系と思われるエマ・ワシコウスカは「ジェーン・エア」に続き文芸作品の出演で、欧州の文芸作品に重宝される女優になっていくかもしれない。

今年フローベールの代表作はすべて読み切った。しかし、「ボヴァリー夫人」は彼が扱った内容としては例外的なものであることが判り、意外に思いましたな。

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