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zoom RSS 映画評「マラソンマン」

<<   作成日時 : 2017/04/08 09:13   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1976年アメリカ映画 監督ジョン・シュレシンジャー
ネタバレあり

40年近く前に一度、ブログを始める何年か前に一度観ていると思うので、今回は多分3回目。

ニューヨーク周辺をマラソンの練習場にしている大学院生ダスティン・ホフマンが図書館でドイツ系の美人マルテ・ケラーを見かけて積極的にアプローチ、昵懇の仲になる。パリでは事業家を気取っているロイ・シャイダーが仲間らしいウィリアム・ディヴェインと謎めいた接触を持つ。ウルグアイから老人ローレンス・オリヴィエが渡米してくる。

その前に銀行の金庫から出した品物を連絡員に渡したドイツ系老人が気の短いユダヤ老人とのカー・チェースの末に自動車事故で死ぬというプロローグめいた一幕があり、この4つの全く関係なさそうなエピソードがやがて一つの筋を成していくという些か勿体ぶった展開で、開巻後暫くはまだるっこい。

やがてシャイダーの苗字がホフマンと同じであることから、二人は少年の頃に赤狩りにより無実の父を自殺に追い込まれた結果全く違った人生を歩むことになった兄弟であることが判って来る。
 オリヴィエ老は逃亡したナチ戦犯で、やがてニューヨークで会った連絡員シャイダーを刺す。重態のシャイダーはホフマンのアパートまでたどり着いて間もなく、弟の名前を発しただけで事切れる。オリヴィエ老とその一味はホフマンが実は諜報部のスパイであった兄から得たはずの情報を聞き出そうと拷問するが、何も知らない彼は答えようもなく辛うじて現場から逃げ出す。

これ以降はホフマンがオリヴィエ一味からいかに逃げ、最終的に対峙することになるか、というサスペンスだが、巻き込まれ型であり、歯科医の前身を生かしたオリヴィエ老の身の毛もよだつ拷問場面があるなど、ヒッチコックが好んだ設定や要素が多く、かつての英国スリラーに近い印象がある。演出的にはヒッチ御大よりキャロル・リードを髣髴とする。一味が現れるのが解っているため美しい誰もいない田園風景に恐怖が沈潜する郊外での一幕は実に映画的に秀逸だ。

主人公がアベベを尊敬するほどのマラソン好きである必要はないという指摘がある。マラソンをすることによって父親の死が与える苦痛を凌駕しようという彼の心情は別として、サスペンス的には逃亡するのに少し役立つ程度だから尤もな指摘であるが、彼の練習コース周辺で事件が起きることにより、何でもない平凡な青年の日常が破壊される、ということをよく表現していて文学的観点上は相当意味がある。その環境描写がなかなかに素晴らしい。

その他、ご都合主義や説明が曖昧という指摘については、確かにそう思われるところが散見される。
 他方、お話のスケールが小さいからつまらないという指摘は野暮であろう。個人の所有欲が巻き起こす実に小さなお話だからこそ、兄を奪われ自分の命を奪われそうになった青年が味わう不条理が際立つのである。かかる文学的とも言える微視的な感覚を社会派的な観点で見ると、そういう的を射ない指摘となってしまう。

ジョン・シュレシンジャー向きの素材とは思われないが、娯楽映画として一応しっかり見せている。

この映画が公開された頃、学内のマラソン大会中に折り返しですれちがった僕が映画好きであることを知っている同級生から「マラソンマン!」と声を掛けられたのを思い出す。

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