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zoom RSS 映画評「神様メール」

<<   作成日時 : 2017/04/25 08:49   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 7 / コメント 4

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年ベルギー=フランス=ルクセンブルク合作映画 監督ジャコ・ヴァル・ドルメル
ネタバレ大いにあり。未鑑賞の方、ご注意を。

不老不死というアングルから人間の幸福を論じてみせて抜群に面白かった「ミスター・ノーバディ」(2009年)以来のジャコ・ヴァル・ドルメル(ドルマル)の監督作品。この作品にも幸福を論じる狙いがある。

地球を作った時にはもうパソコンを持っていたのだろうかという素朴な疑問を湧くのだが、本作の神様(ブノワ・ポールヴールド)は個室でパソコンで自分のお楽しみの為に人の人生をテキトーに設計している。自分のかみさん(これが本当の神さんと言いたいが、キリスト教の考えでは神様は一人だから女神とは言えない。聖母である)や娘エア(ピリ・グロイン)に激しく当たる暴力亭主というのだから、神様の風上にも置けないろくでなし。しかし、キリスト教の考えでは、神は彼しかいないのだ。
 彼がJSと呼ぶイエス・キリストは彼に似ない、彼にとっては不肖の息子。そのJSに勧められエアは家出を敢行、洗濯機用の穴を抜けてコイン・ランドリーの洗濯機から人間の世界に降り立つ。エアはその前の父親のパソコンをいじくって、人々に余命を知らせるメールを送っていて、その為に大いに混乱した世界で6人の新たな使徒を探すことにする。

使徒に選ばれる6人は神のテキトーな設計によりそれぞれの悩みを抱え、不幸な一生なり、半生なりを送ってきた人々である。余命が知らされたことで余命の短い者は悲しみに暮れるが、それでも彼らは却って自由を得、やりたいことをやれるようになる。運命と思っていた自分の生涯は(神の決めたことを逸脱して)自分で決めることができる、ということである。寿命が知らされているから戦争も「やーめた」ということになる。

この作品においてドルメルは反キリスト教ドグマの立場らしく、唯一の神が娘を追っかけて不在の間にお上さんが掃除の為にパソコンの電源を抜いてまた入れたことから再起動され、彼女が言わば別の神様として地球を再設計してしまう。温暖化でも氷が解けず、人が海でも生活でき、男性が妊娠する。
 勿論余命も完全に再設計されたので、何をやっても死なないことを再三再四の死のトライで確かめていた長余命男は最後に死んでしまう、という幕切れがエンド・ロールの中で紹介される。ブラック・ユーモアもここに極まれりで、生命を弄んではいけないと釘を刺す。

聖書に則ったパロディーも多いので、ある程度キリスト教の知識があったほうが、楽しめるだろう。同時に、本作の神のイメージは、多神教の主神ゼウス(ジュピター)に近そうだ。

無神論者も多いが原理主義者も多いアメリカほどでないにしても、ベルギーでこういう作品を作ることは、日本人が考えるほど簡単ではなかったと思う。

ベルギー映画で野球ネタとは。欧州に野球を普及させたいねえ。今回WBCで非常に強かったオランダ代表は基本的にカリブ海の出身だし、イタリアはイタリア系の、イスラエルはユダヤ系の大リーグ所属選手ばかりだし。アメリカも大分本気を出してきたけれど、WBCよりシーズンが大事という考えが強いからまだまだ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
神様メール
【概略】 ブリュッセルのアパートに住む神様は、パソコンでいたずらに世界を支配していた。ある日、神様の娘・エアが人々に余命を知らせるメールを送ってしまったことから街は大パニックになり…。 ファンタジー ...続きを見る
いやいやえん
2017/04/25 14:39
神様メール ★★★★
「トト・ザ・ヒーロー」「ミスター・ノーバディ」のベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が、神様は退屈しのぎにパソコンで人々の人生を弄ぶ意地悪なおっさんという過激な設定で贈る奇想天外ファンタジー・コメディ。そんな神様の10歳になる娘が反乱を起こし、人々... ...続きを見る
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『神様メール』('16初鑑賞54・劇場)
☆☆☆☆− (10段階評価で 8) 5月28日(土) OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン1にて 14:40の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2017/04/26 11:28
神様メール
前回はオランダで今回はベルギー発であります。 前回もかなりヘンテコリンなお話でしたが、 今回はさらにそれを上回る超ヘンテコリンな展開の嵐ですな。 欧州勢のシニカルさに好意 ... ...続きを見る
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2017/04/28 14:40
「神様メール」(2015年、ベルギー・フランス...
「神様メール」(原題:LeToutNouveauTestament、英題:TheBrandNewTestament)は、2015年公開のベルギー・フランス・ルクセンブルグ合作のダークコメディ&ファンタジー映画です。ジャコ・ヴァン... ...続きを見る
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日記:2017年10月某日 映画「神様メール」を見る. 2015年.監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル. 出演:ブノワ・ポールヴールド(父(神様)),カトリーヌ・ドヌーヴ(マルティーヌ),フランソワ・ダミ ...続きを見る
なんか飲みたい
2017/11/13 10:46

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この作品、レンタルしたけど何が何だか分からないまま終わってしまいました。
そうか、そういう話なんですね、貴方の説明でスッキリしました。
Bianca
2017/04/25 19:07
Biancaさん、こんにちは。

お役に立ちましたか。
こういう内容の書き込みは、非常に励みになります。有難うございます。
オカピー
2017/04/25 22:11
スコセッシ新作の「沈黙」紹介でさえ
いい顔しないクリスチャン仲間に、本作など
観せたなら、どんな不評が飛んでくるものやら。
ユーモアの許容範囲が試される珍作でしょうね。
末席クリスチャンの私は、とても楽しめました!!
vivajiji
2017/04/28 14:57
vivajijiさん、こんにちは。

>クリスチャン仲間
一応仏教徒ということになっている不信心な僕などは、どんな映画や小説を読んでも全く問題ないわけですが、因循なクリスチャンやイスラム教徒にとっては世の中けしからん作品が多いことでしょう。僕に言わせれば人生を損している。

キリスト教の一神教の考えすら揶揄しているこういう作品を楽しめるキリスト教徒! さすが姐さんは、スケールがでかいです。
オカピー
2017/04/28 21:10

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