プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」

<<   作成日時 : 2017/04/19 08:55   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 2

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年イギリス映画 監督ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
ネタバレあり

およそ2年前に観た「ハンナ・アーレント」と併せて観たいTV映画である(日本では劇場公開された)。

1961年、前年アルゼンチンに逃亡中のところをイスラエルのモサドに逮捕されたナチスの親衛隊幹部アドルフ・アイヒマン(ヴァイドタス・マルティナイティス)が、エルサレムの法廷で裁かれることになり、敏腕TVプロデューサー、ミルトン・フルックマン(マーティン・フリーマン)が放映権を獲得、赤狩りによりアメリカで干されたドキュメンタリー作家レオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)を監督として起用するが、イスラエル当局からの難題、元ナチ党員若しくはナチ・シンパからの脅迫と実行など次々と問題が降りかかる。
 テロに遭いそうになったフルックマンはあくまで冷静に視聴率を稼ぐインパクトのある番組を構成しようするが、フルヴィッツはアイヒマンが人間的な感情を表す瞬間を捉えようと必死になり、しばしば意見が対立する。
 結局アイヒマンは感情らしい感情を出さない。しかし、彼が自分は「死の行進」を命じなかったが提案したと認めたことをもって彼らは勝利の感情を味わう。

フルヴィッツがホテルの女性(レベッカ・フロント)から「あなたのおかげ」と謝意を示される場面と合わさることにより、この幕切れが実際以上の感動をもたらすよう工夫が為されている。実際のフィルム/ビデオからのフッテージと再現場面との組み合わせもなかなか上手い。

とは言うものの、素材故にやや散文的で味気ない印象が醸成されてしまっているし、何よりホロコーストを捉えた、とても正視できない実際の映像の前に再現ドラマが見劣りする。スティーヴン・スピルバーグの「シンドラーのリスト」においてでさえ、最後に生き残った本物の人々が出てきた時に「本物には敵わない」と思ったのだから、この手の作品の宿命みたいなものなのだが。

アイヒマンに人間の普遍的な悪を見出したいフルヴィッツは、感情をなかなか出さない彼を特別な悪魔的な人間と思わざるをえなかった時間が長かったと想像されるが、この裁判をつぶさに見た哲学者アーレントによれば、彼は命令に唯々諾々と従う思考停止した陳腐な悪(人)だったからこそ感情を表に出さなかったのだ。最後にフルヴィッツもそれが理解できただろう。

Allcinemaに「アメリカの若き敏腕プロデューサー」とあるが、ナチ・シンパが脅す家族もイスラエルにいるようだし、「アメリカの」は間違いと思う。もしかしたら家族といる場面は時系列が別なのかもしれないが、そうであれば作品の作り方に問題がある。

2年前から読もうと思いつつ、ハンナ・アーレントの著作を未だ読んでいないデス。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち
観客を呼び込まなければなんないの! 特に、中高年層を! そんな声が聞こえてきそうな副題がご丁寧についた本作。 ナチス・ドイツものは、柳の下にドジョウが何百匹?・・・ 残酷 ... ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2017/04/20 12:43

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
オカピーさん、お久しぶりです。
最近、DVDでこの作品を観ましたよ。なんともやり切れない内容でした。国家の犯罪において、その要職についていたとはいえ、その「個人」を裁くことの難しさを感じますし、ましてその犯罪者としての自覚まで求めるとなると容易ではありません。すべての人間が「巻き込まれていった人々」ですから。被害者意識は誰にも生まれてしまいやすいものだと思いますが、加害者としての意識、その罰則を受ける覚悟・・・これは・・・司法というものの根幹まで考え込んでしまいます。
さて、私なのですが、4月よりまた地元を離れて、姐さんの街である札幌に転勤になっておりまして・・・本日、札幌市内のミニシアター劇場(シアターキノ)で「夜明けの祈り」を観てまいりました。とても素晴らしい作品でしたよ。オカピーさんが観る機会があったら、是非またコメントをアップしてください。
では、また。
PS:アラン・ドロンのデビュー2作目「黙って抱いて」、ジャック・ドレーとのコンビで未公開だった「UN CRIME」がDVD化されるようです。楽しみですよ。
トム(Tom5k)
2017/08/23 00:38
トムさん、お久しぶりです。

>「個人」
そもそも戦争は、国と個人の関係が常に問題となるものであり、多くの戦争映画はこれを扱ってきました。
必然的に、戦争に絡む裁判では個人をどう扱うかが問題となり、東京裁判でも実際には色々と問題となっていますよね。特にBC級戦犯には気の毒な例も多いと思われます。
A級と違って彼らには強要された人も多いわけですから。

>「夜明けの祈り」
内容は全く解りませんが、トムさんが仰るなら間違いないでしょう。
観れば必ず書くわけですので、観られるかどうかが問題ですね(笑)

>「黙って抱いて」
観たことはありますが、DVDが図書館に入ると良いなあ。

>「UN CRIME」
「ある犯罪」という意味でしょうか。
ドレーとドロンのコンビ作が、日本で未公開になるなんて、全盛期には夢にも思いませんでしたがねえ。これはWOWOWに期待です(笑)
オカピー
2017/08/23 22:34

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる