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zoom RSS 映画評「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

<<   作成日時 : 2017/04/18 07:51   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督マイケル・ムーア
ネタバレあり

ドキュメンタリーの作家だからそうそう長編を発表するわけには行かないだろう。鑑賞ベースで6年半ぶりのマイケル・ムーアの作品である。

トランプが大統領になる以前からアメリカには「馬鹿な戦争をしてきた金がなくなった」という意識があるらしく、経費を減らしたい国防総省に頼まれて(勿論ジョーク)、マイケル・ムーアが世界各国に侵略するというお話。
 侵略と言っても、アメリカが見習いたい点を“奪ってくる”だけなのだが、アメリカの国旗を挿して帰って来る辺りは大いに笑える。

イタリアは幹部社員以外は有給などないに等しいアメリカと違って有給天国。経営者側も雇用者が健康であれば会社に恩恵があると言う。
 フランスは小学校の給食が凄い。良い物を食べればきちんとした人間にもなる。偏った食事だけの問題ではないだろうが、アメリカは先進国の中で平均寿命が断トツに短い。
 学力世界一になったフィンランドの秘訣は、勉強時間を減らしたこと。選択肢問題をなくしたこと。要は自分で考えるのが一番頭に良いということだ。
 スロベニアでは、大学の授業料が無料。教育は先行の公共投資という考え方で、借金まみれのアメリカの大学生もやって来る。
 ドイツは、自分の国の過去と向き合う。過剰なまでの自国批判である。日本も同じようにしてきたが、最近はそのような考え方を自虐史観と言って見直そうという動きがある。僕らが教わって来た歴史が全て正しいとは言わないが、謙虚になるという姿勢は大事であると思う。自分が実際以上に悪く言われても我慢できるのが大人だ。
 ポルトガルは麻薬で逮捕者を出さない。その結果中毒者が減った。本作ではやや説明不足で、先日のTV朝日の番組によれば、逮捕する代わりに治療をさせるのである。
 ノルウェーでは囚人の待遇が物凄い。模範囚はまるでちょっとした別荘暮らし。一番条件の悪い囚人でも鍵は自分で持っている。
 リーマン・ショックで大打撃を受けたアイスランドで唯一利益を出した銀行は女性が経営していたところ。世界で最初の女性大統領を生んだのもこの国だ。女性は感情的とも言われるが、欲望に目がくらむことは男性より少ないのかもしれない。
 それを受けてチュニジアのジャスミン革命を牽引したのは実は女性だった、というちょっと意外な事実も紹介される。しかも、イスラム教国でありながら国のトップが女性の自由を宣言する。他の国のようにへジャブを強制したりしない。イスラムでは宗教が法律の上にあるが、この国は半ば例外と言えるのではないか、という気がする。

ムーアが着目したこれらの点は、裏を返せば、アメリカが未だ実現できていない国益に適う利点であるということになる。排した国が多いとは雖も死刑制度の扱いは微妙な問題であるが、国民が健康であり幸福であれば最終的に恩恵を受けるのは国なのだ、という思いは僕も何十年も持っている。

しかし、よく調べると、これらのことの殆どを最初にやったのはアメリカである、と言う事実に彼は辿り着く。アメリカは潜在能力的には実に立派な国ではないか、と見直す気になっていく。
 従来アメリカの問題点をあげつらってくるばかりであったムーアが、アメリカという国に希望を見出すのである。その為、変化という程ではないにしても多少マイルドになった印象は残る。その点が弱点かどうかの判断は難しいところだが、相変わらずの構成と語りの巧みさには舌を巻く。

ここに挙げた国にも、紹介されないネガティヴな要素があることは言うまでもない。しかし、どこの国が一番良いかを調べるのが目的ではないのだから、それは紹介しなくて良いのだ。

ムーアさん、次の狙いは何か。

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