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zoom RSS 映画評「愛の嵐」

<<   作成日時 : 2017/03/21 09:22   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1974年イタリア映画 監督リリアーナ・カヴァーニ
ネタバレあり

40余年前かなり話題になった。日本ではルキノ・ヴィスコンティ・ブームが沸き上がった1975年に紹介され、ヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」で既に共演していたダーク・ボガードとシャーロット・ランプリングが再共演して、同じようにナチス絡みの退廃的ムードの作品ということで、弥が上にも映画ファンの興奮を誘った。

1957年ウィーンのホテルにやってきたアメリカの指揮者の妻シャーロットに夜勤のフロント係ボガードは驚く。戦時中彼はまだ少女だったシャーロットを性的になぶるうちに夢中になってしまった過去があるからだ。その為に彼女は生き残ったという、運命の皮肉がある。
 ボガードは彼女の出現を非難しがらもかつての倒錯した関係に再び没入することになり、その為に彼を囲むナチスの残党一味が彼女を始末しようと迫ってくる。
 かくして彼のアパートに閉じこもった二人は、兵糧攻め状態の後、車で街を脱出し、朝まだき橋を歩き始める。間もなく轟く二発の銃声・・・。

描かれる内容は性倒錯を中心とした退廃であるが、浮かび上がるのは変則的だからこそ純化されたとも言える愛である。純文学的に興味深いのは、戦時中の被害者たるヒロインが生を永らえて立場が逆転、見かけとは違って加害者たるフロント係を精神的に支配していくことである。そして、二人は倒錯愛の極致と解釈できなくもない死の旅路に立ったのではあるまいか。少なくとも死ぬことを覚悟していたことは間違いない。愛の複雑さ、人間の複雑さと言ってしまえばそれまでだが、「人間とは面白い生き物であることよ」と変な感銘が湧く。

ボガードとシャーロットという退廃(美)を具現していた当代随一の男女優を得てこその秀作であったろう。言わば耽美主義の映画作家である女流監督リリアーナ・カヴァーニにしても本作が断然の代表作と言うべし。

ヴィスコンティを大のご贔屓にしていた故淀川長治氏は、世間の予想に反して本作をベスト10から除外した。ヴィスコンティを観た目にはまだ甘かったのだろう。

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愛の嵐
女優、室井滋が「死ぬまでに 観たい映画」の1本に上げ、 ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2017/03/21 16:04

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
淀川先生は少女趣味お嫌いでしたね。この映画もヴィスコンティにくらべると少女マンガみたいで、そこがかわいらしくていいというものだったでしょうが、ヴィスコンティといっしょにされたらたまらないというのもわかります。男たちの中の一人が謀殺された後、葬儀から帰る喪服の男たちが横一列に並んで歩いてくる場面、服装がほんとうにきれいで、きれいで、きれいすぎて、うわあこれ少女マンガやなあという感じしましたもの。実質、ダーク・ボガードのアイドル映画でもあって、カヴァーニ監督は若い頃ボガードのファンだったんだろうなと思いましたし。
nessko
URL
2017/03/21 10:08
出ましたね!貴ブログ、玉石混淆中の珠玉の一篇が!!
シャーロット・ランプリングには(カヴァーニにも)これが代表作ではないでしょうか?その後はすべて、この映画の思い出を汚すだけ、もう出ないで!と叫びたくなります。しかし彼女にも人生があり、思い出だけで生きてはいけないだろうし。ダーク・ボガードは監督のアイドルだったにしては、この少女に食われた感なきにしもあらず。大したものじゃないと淀川長治さんは言ったかも知れないけれど、私にとっては最高の映画でした。自分が若く感激に満ちた日々の記念碑です。ミーハーに徹するのも楽しいな!!!
Bianca
URL
2017/03/21 12:20
11年前、ブログ萌え始めの頃でございました。(笑)
コメント欄もにぎやかでプロフェッサーとの談義にも
お花が咲いております拙記事持参でございます。

>ヴィスコンティを観た目にはまだ甘かった・・・

未知数の類でしたね、カヴァーニ。
優れた役者二人の持ち味と演技、そして
退廃のウィーンと時代背景・・・
そのすべてが効を奏した彼女の
傑作と思いますよ。
vivajiji
2017/03/21 16:23
nesskoさん、こんにちは。

>少女マンガみたい
ヴィスコンティに比べると、お話の構図が明解すぎたでしょうか。
今思うと、ヒッチコックに憧れて作品を作っていたブライアン・デ・パルマみたいに感じられます。

「地獄に堕ちた勇者ども」を見ようかと図書館に行くたびに思いつつ、こちらの再鑑賞が先になってしまいましたが、解りやすいヴィスコンティのようで、僕はまだ十代でしたが最初の鑑賞の時から気に入りましたよ。

>ボガードのアイドル映画
この表現は良いですね。
オカピー
2017/03/21 21:52
Biancaさん、こんにちは。

>代表作
どちらにとっても、文句なしの代表作でしょう。
ただ、老年になった彼女の作品も捨てがたい。欧米人には珍しく体形が殆ど変わらず、退廃ムードも維持していて、最近観た「さざなみ」なども良かったです。
これより前に出演した「さらば美しき人」という出来栄えは良くないと思ったものの印象的なイタリア映画をもう一度見たいのですが。

>淀川長治さん
批評家の中でも感覚的な方でしたので、結構意外な評価をされることもたびたびありました。主催されていた友の会でも色々な思い出がありますよ。
オカピー
2017/03/21 22:11
vivajijiさん、こんにちは。

>コメント欄もにぎやか
あれから10年以上経ってやっと再鑑賞です^^;
どうしても綺麗な画面で見たいと思うので、今回やっと登場したWOWOWでの鑑賞まで待つことになりました。
最高画質とは言えませんが、ビデオやDVDよりはずっと良い画質で、満足でした。

当時コメントでも触れた「さらば美しき人」は、やはり見直してみたいですねえ。「さらば愛しき女よ」はよく出ますが、題名すら知らない人の多い「美しき人」はもちろん全くなし。ビデオは昔出ていたようですが。

>傑作
ウィーンという舞台の耽美的な捉え方と、ダーク・ボガードとシャーロット・ランプリングという退廃の権化のような男女優の優れた演技とムードが生み出した傑作ですね。
オカピー
2017/03/21 22:38

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