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zoom RSS 映画評「ガープの世界」

<<   作成日時 : 2017/03/20 08:39   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1982年アメリカ映画 監督ジョージ・ロイ・ヒル
ネタバレあり

奇妙な味の作家ジョン・アーヴィングは本作により日本でも知られ、その後続々映画化される人気作家となった。初主演のグレン・クロースも俄然注目され、暫しユニークな役柄に重用される人気女優になった。33年位前に映画館で観た僕には、そんな1980年代の記憶が蘇ってくる。
 しかし、本作で一番最初に思い出すのは、開巻した瞬間にビートルズの「ホエン・アイム・シックスティーフォー」がBGMとしてかかることなのだ。

第2次大戦中に従軍看護婦ジェニー(グレン・クロース)は、男とのややこしい関係なしに子供を設けようと、野戦病院で意識不明の兵士にまたがって、計画通りに子供を産む。それが主人公T・S・ガープ(ロビン・ウィリアムズ)で、彼は見たこともない父親のように空を飛ぶことを夢見る少年になる。
 1960年代、物書きになることを目指したガープは、読書家の美人ヘレン(メアリー・ベス・バート)をその作品でなびかせるが、先に売れっ子になるのは自伝を書いた母親で、その男に頼らない生き方によりウーマンリブの教祖的存在に祀り上げられる。
 1970年代、大学院の教授になったヘレンの不倫騒動が元で次男を失うことになり家庭の危機を迎えるが、長女の誕生で乗り越える。しかし、選挙演説に駆り出された時にジェニーが暗殺される。やがてガープは、作家稼業も程々に母校のレスリングのコーチを務めている最中、母親が営んでいたレイプ被害者支援グループの狂信的なメンバーに逆恨みされて狙撃される。

ガープが主人公のようだが、欲望としての性(セックス)と対立する性(ジェンダー)をテーマにする中、寧ろ戦前の主流であった保守的な男女観に反旗を翻したジェニーのお話が軸を成しているように見える。その意味で後年の「フォレスト・ガンプ/一期一会」にも似て戦後のアメリカ社会(女性)史の一端を綴り、相当興味深い。

初鑑賞時、舌を切られたレイプ被害者に倣って自ら舌を切る狂信的な支援グループ、フットボールの選手から性転換した大男(ジョン・リスゴー)の登場など、この作品(或いはアーヴィングの作品)の世界は妙に歪んで見えたものだが、今見るとそれほどでもないのは、我々がこういう要素に“慣れてしまった”ということだ。

それでも、僕のご贔屓監督ジョージ・ロイ・ヒルは時間を大胆に扱った脚本をスムーズに映像に移して誠にしなやかな展開ぶりを見せ、当時と殆ど変わらぬ面白みが味わえた。人間の必ずしも褒められない面を色々と見せられるので嫌悪感を覚える人がいるのも解らぬではないが、それが人間の一面であることは否定しきれない事実であるから、作品がある程度のレベルに達しているのであれば内容に対する嫌悪感だけで悪い評価を下してしまうのはつまらない。
 後味についても、空を飛ぶことに憧れたガープが最後に救急ヘリに乗ってそれを実現をする幕切れの皮肉は、必ずしも悪い後味だけを残すものでもないと思う。母親の言を守り「死ぬ前に生きるに値する人生を生きた」ガープを拍手を送りたい気持ちになるのである。

ジョン・レノンは、ポール・マッカートニーの作った曲にからめて64歳になる時のことを語った直後、暗殺された。ポールに対する感情も大分穏やかになっていたのではないか。惜しい。

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ガープの世界
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