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zoom RSS 映画評「1001グラム ハカリしれない愛のこと」

<<   作成日時 : 2017/03/17 08:54   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年ノルウェー=ドイツ合作映画 監督ベント・ハーメル
ネタバレあり

僕の観たノルウェー映画は全てベント・ハーメル監督の作品である。かの国には彼以外に映画監督がいないなんてことはないだろうが、まだ輸出できるほどの技量の監督が他にいないということか。

ノルウェーの国立度量衡研究所を束ねる老博士スタイン・ヴィンゲの娘アーネ・ダール・トルプは同所に勤める科学者として何でも測るのを仕事にしてい、離婚係争中からということでもないだろうが、杓子定規な性分でニコッとすることもない。そんなある日、キログラム原器をメンテナンスする為に国際度量衡局の総会に出席することになっていた父親が心臓発作で倒れた為、彼女が原器を持ってパリに赴くことになる。
 現場で造園業者ロラン・ストケルと懇意になった彼女は、帰国後車の自損事故を起こした時に原器を破損してしまい、フランスに渡って秘密裏に修理しようとする。元来研究所に勤める物理学者だったストケルは専門業者に修理を依頼、かくして二人は親身さを増していく。

乱暴にまとめれば、職業にふさわしく杓子定規だった中年女性が、父親の死を経、学者から造園業者に転身した気さくなフランス男と知り合うことで、自らを解放していく様子を綴るお話。

一見冷たいのに時に笑いさえ生んでしまう独特の間とテンポは欧州の小津安二郎シンパに多いもので、ハーメル監督がシンパかどうか定かではないものの、そういうタイプであると紹介しておけば、彼を全く知らない欧州映画ファンにも大よそ想像がつくと思われる。
 また、このタイプの映画作家は人生の断面を捉えるため通常の大衆映画に見られる物語の起伏を求めにくい。逆に、表現がミニマルだから補完しながら観ることを観客は要求されるが、行間から滲み出る滋味を感じ取れたら余計に感動を覚えることも多い。僕の経験から言えばそういう感じである。

人間の重みは、人生の重さは、測れるのか測れないのか。それが本作の命題だが、数字でないものにより測ることができる、といったところだろうか。
 欧米社会では人間の魂の重さは21グラム(現在一番注目されているアレハンドロ・G・イニャリトウ監督がこの題名で映画を作ったのはご存知の通り)ということになっているらしく、本作でもヒロインが父親の遺灰を測ると最初1022グラムで、やがて1001グラムになる、という引き算でそれを示しているのも洒落っ気たっぷりで面白い。ガリレオ風に言えば「それでも、人間(の魂)の重さは測れる」という感じなのかもしれない。

今日、日本では彼岸の入り。これからお墓参りに参ります。「墓」りしれない先祖のこと、などと言って。

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1001グラム ハカリしれない愛のこと
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