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zoom RSS 映画評「エヴェレスト 神々の山嶺」

<<   作成日時 : 2017/03/12 08:46   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・平山秀幸
ネタバレあり

日本でも「劔岳 点の記」以降山岳をテーマにした作品がぼつぼつ作られているし、世界的にはもっと作られ、WOWOWも先般山岳映画特集をしていた。大半の作品が苦労した撮影を経て素晴らしい画面を披露している。本作も撮影に関しては見応えがある。しかし、人物のアップの時に合成が今一つと感じられるところもあり、「剱岳 点の記」ほどは満足できない。

その代わり、平山秀幸の場面の繋ぎは語り手としての素質に欠ける「劔岳 点の記」の木村大作よりずっとスムーズだ。この作品の難点は作劇にあるのであって、演出ではない。演出を物語の一部として語る人が少なくないが、言葉の使い方としては決定的に間違っている。
 演出というのは演技指導、撮影の方向性、カット割りや場面の繋ぎ、色彩設計、音楽の使い方など、物語を盛り立て盛り上げる手法である。この作品の演出のどこに【Yahoo!映画】に無数に出てくる“駄作”に値するものがあろうか。音楽の使い方以外は標準以上と思う。唯一、音楽が盛大に使われすぎてい、時に台詞が聞き取りにくいところもあって気に入らないのだ。

とりあえずお話。

山岳カメラマン岡田准一が、ネパールの麓で戦前の古いカメラを発見する。老シェルパがそれを奪回しに訪れ、その時、死んだとも伝えられる伝説の日本人登山家・阿部寛が随行しているのに気づく。

カメラから伝説の登山家を探す旅を綴る前半は、一種の歴訪型ミステリーの様相を呈してひととおり感興が湧く。いざ岡田君が阿部の恋人的存在の尾野真千子と共に彼の居場所を突き止めてからは、そのカメラがエヴェレスト山頂付近で死んだマロリーのものか、マロリーはあるいは世界で最初にエヴェレスト登頂に成功していて、その証拠がカメラに残されているのではないかというミステリー要素は消えてなくなる(唯一、阿部の若き相棒=尾野真千子の兄=の死の謎は後半明かされる)。

娯楽映画としてはやや寂しい扱いだが、他方「山(エヴェレスト)がそこにあるから登る」と言ったマロリーに対して「自分がいるから山に登る」という阿部の台詞は、「登山家はなぜ山に登るか」を考える上で余り参考にならないものの、人間存在を考える上では実存主義的でなかなか興味深い。それを登山でやる、という面白味がある。
 阿部が冬季に難関と言われる南西壁を単独で登るという無謀な挑戦も自分の存在を実存主義的に考えているからで、専門家から見て無茶であるかどうかは実はどうでも良いことなのではないか。リアリティだけで映画は語れないのだ。

と言いつつ、阿部氏に比べれば素人同然の岡田君が阿部氏の遺体のあるところまで比較的簡単に行ったような印象があるのは強引な作劇と言われても仕方がないだろう。彼の登山経験の説明や訓練課程等の描写があれば少しはそうした印象や疑問が回避できたかもしれない。
 そうした現実的な側面を離れて考えると、僕は、山の神が阿部氏の遺体を発見するように彼を導いた気がするのであり、原作は知らず、映画は登山という行為を通して人間存在を哲学したのではないかと思えてくるのだ。

平山さんが高山を扱う。面白いね。

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