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zoom RSS 映画評「隣の八重ちゃん」

<<   作成日時 : 2017/01/06 08:39   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1934年日本映画 監督・島津保次郎
ネタバレあり

先年NHKのおかげで「兄とその妹」(1939年)という島津保次郎の秀作を観ることができた。その他の島津作品を観ることはできないかと思っていたところ、昨年末にYouTubeに本作を発見した。1934年度【キネマ旬報】ベスト選出では、小津安二郎の「浮草物語」に続いて第2位に選出されている。これが実際に素晴らしいのである。

東京の田園地帯に立つ瀟洒な家の描写から始まるのは五所平之助の「マダムと女房」(1931年)にかなり似ている。
 帝大生の兄・大日方伝と中学生(今の高校生にほぼ相当)の弟がキャッチボールをしている。弟は甲子園を目指す実力校のエースであるが、兄は少しも評価しない。兄が弟に投げたボールが逸れて隣の家に窓ガラスを割ってしまう。しかし、隣家とは頗る仲の良い関係で、一家から文句を言われることもない。
 ここに住んでいる女学生の逢初夢子(八重ちゃん)とはまるで兄妹のような関係で、実は彼女はからかわれることの多い帝大生に仄かな思慕を寄せている。それがはっきりするのは、姉・岡田嘉子が甲斐性のない夫に呆れて嫁ぎ先から戻ってきたことからで、彼女は彼が姉と親しくしているのを見ると落ち着かなくなる。しかし、彼も姉娘が誘いをかけると不愉快そうに去ってしまう。彼が好きなのはやはり八重ちゃんなのだ。
 姉娘が出奔した時に一家は当時日本であった朝鮮に引っ越すことに決まる。しかし、八重ちゃんは日本に残り、大日の一家にお世話になることになるのである。

男女の純粋な恋慕の情を軸に、隣家同士の大らかな関係を実に自然に描き出す。勿論こんな家庭が当時の日本にありふれていたということではなく、恵まれていた中流階級の家庭同士のお話に過ぎない。その一方、戦前の日本が特に都会では我々が想像するほど男尊女卑だったわけではないことが、当時の小津作品や島津作品を見るとよく解る。社会を映し出す映画はかくも貴重なものである。

そして、僕が本作で強く感じたのは描き方の“自然さ”であり、その為にこの作品が描く1934年の日本が本物と感じられるのである。ヌーヴェルヴァーグ以降の作品が演出を排除することで生み出そうとした自然さとはまた違って、映画の構築性を維持しながら醸成される自然さなのである。そこに豊かな映画性がある。
 80年前にこんな見せ方を目指し、演技を引き出した島津監督、そして配役陣特に逢初夢子の好演には感嘆あるのみ。その中で岡田嘉子が浮いている。上手いけれども舞台的な演技が本作の性格に似合わない。

画面としては、街中(まちなか)の移動撮影が白眉であろうか。

ありがたき笛や太鼓、ではなくて、YouTubeでした。

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