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zoom RSS 映画評「ディーパンの闘い」

<<   作成日時 : 2017/01/31 08:50   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年フランス映画 監督ジャック・オーディヤール
ネタバレあり

二日続けてのジャック・オーディアール監督作品。こちらは一昨年のカンヌ映画祭パルム・ドール賞(最高賞)を受賞した作品で、全体のムードはケン・ローチに近い。

内戦中のスリランカ、反政府軍の兵士だったディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)が、親戚のいる英国渡ろうと親のいなくなった少女イラヤル(カラウタヤニ・ヴィナシタンビ)を連れて来た女性ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)と疑似家族を演ずることでパスポートを発行して貰い、渡仏する。
 現地でディーパンはアパート群の管理人の仕事を得、ヤリニはアパートの一つに住む老人の世話をすることになる。月給500フランなり。60000円くらいだからスリランカ人の彼女にとっては大金だろう。最初は虐められたイラヤルも次第に学校に馴染み、友達も出来たらしい。
 ところが、老人の息子フラヒム(ヴァンサン・ロティエ)というのが麻薬ディーラーで、アパートの近くで銃撃戦が発生する。これに恐れをなしたヤリニは一人で英国へ渡ろうとする。ディーパンはそれを許さず、チンピラたちに敢然と立ち向かう。再びヤリニが介護に戻ったその日銃撃がフラヒムを狙い、彼女はアパートの中で立ち往生、ディーパンを電話で呼び出す。彼は決死の覚悟で現場に乗り込む。

ジャンル映画的な犯罪をドラマの素材にするのがオーディヤール流で、その辺りが純粋な社会派ケン・ローチとは違う。仮にローチがアクションを交えるにしてももっと即実的になるだろう。

映画は主人公が戦いから逃避するところから始まる。最後に彼は戦って(闘って)勝利する。「これは自ら出した命題を否定するものではないか」と疑問視する人がいた。この論点の根拠は極めて正しいと思う一方、それほど絶対的な批判材料にならないと考える。
 ドラマツルギーの問題である。つまり、この作品が戦いに対して否定的な立場を保ちながら戦い(闘い)を最後に出してきたことは、主人公の「家族を得る」希求の本気度を表現したものなのだ。立場は戦争・戦闘の否定であっても、主題は家族であること、家族を持つことの意義と考えられ、即ち最後の暴力は最低限の個人的正当防衛であって、矛盾にはならないはず。正当防衛と言っても組織のそれは同じ土壌では扱えない。組織の戦いと個人的な闘いは違うのである。

そして、激しい暴力場面の後、彼らが新しい家族を得た英国での生活の静かな描写に続くところが、映画的に多大な魅力をもたらす。オーディオ用語で言えば、ダイナミック・レンジが大きいという印象。或いは、ビートルズ・ファンであれば、「ホワイト・アルバム」のハード・ロック「へルター・スケルター」から「ロング・ロング・ロング」への繋ぎと言えばその感覚が想像できるに違いない。

難民の多くは先進国特に英米が直接的あるいは間接的に生み出したもの。欧州は自責の念にかられ難民や移民を受け入れてきた。アメリカも同様だが、トランプに至って遂に自ら興した結果に蓋をし始めた。それもかなりテキトーに。右傾化が進む欧州もそれに続く可能性があり、これからの数年欧米でのテロが増える可能性がぐっと高まっただろう。

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「ディーパンの闘い」
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。内戦により国を追われたスリランカ人が移民先の地で暮らしていく様を描いた力作。スリランカでの内戦の爪跡、フランスでの移民問題だけでなく、「家族」の在り方も描いている。そしてそう、闘いはどこの地でも起こり得る、ということも。闘いはどこの地でも起こり得るんだ。それはラストに至るクライマックスのことだけを指しているのではない。自己との闘い、Yes、もちろんそうだ。人生は全て選択と闘いの繰り返しなのだ。あとから思い返すと、そのことがじわじわと効いてくる。兵士だった自分... ...続きを見る
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