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zoom RSS 映画評「ツィゴイネルワイゼン」

<<   作成日時 : 2017/01/26 09:09   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1980年日本映画 監督・鈴木清順
ネタバレあり

先日「蜜のあわれ」を観た時に比較したのが本作。クレジットされていないが、内田百閧フ名短編「サラサーテの盤」の映画化である。10年ほど前この小説を読み、得体の知れない恐怖に打ち震えた。当時その恐怖の理由を解き明かしたつもりであったが、実際はどうだったのか。

多分大正7〜8年ごろ、士官学校ドイツ語教授青地(藤田敏八)は、放浪癖のある元同僚・中砂(=なかさご、原田芳雄)が殺人のかどで逮捕されそうなところを救った後、芸者お稲(大谷直子)と三人で飲み明かす。青地は重病で先の長くない妹(真喜志きさ子)から妻・周子(大楠道代)と中砂の怪しい行動を聞かされて心穏やかではない。病人の幻覚である可能性も否定できない。
 中砂はその後お稲とうり二つの園(大谷直子二役)と結婚し、豊子という娘を設けるが、放浪癖は相変わらずでお稲とも関係を続ける。やがて、園がスペイン風邪で亡くなると、お稲を乳母という名目で後添えに迎えるが、その彼も放浪中の山で亡くなる。
 5年後お稲が彼の屋敷を訪れ、中砂が貸した本を返してくれと再三現われる。やがて青地は最後に要求されたサラサーテの声が入っている曰くつきのSP盤「ツィゴイネルワイゼン」を発見し、後日届けに行くと、豊子の姿がないので怪しむ。やがて現れた豊子は「(生前中砂と約束した)お骨を頂戴」と言う。怖くなった青地は慌てて逃げ出す。

原作の怖さが何だったか思い出せないが、映画化された本作の怖さは、死霊と思われる豊子の要求が正当であるならば、青地自身も死人でいるという理屈になる点であろうか。欧米のホラー映画にこの種のどんでん返し的着想が増えているが、本作は露骨にそうした趣向を見せるわけでもなく、観客に「あるいは」と感じさせるに留まっているのが怖いのである。

1967年に日活を追い出された鈴木清順が完全復活した作品で、耽美的な画面が当時世間を賑わし、若手が増えて来た「キネマ旬報」の批評家選出の第1位になってしまった。日活を放逐されるまでの彼には考えられないことである。一般的に解りにくい映画だからアート作品と見られるが、本人にとってはホラー映画だったのではないか。シーンにおいては映画文法(カット割り)を無視し、映画全体としては実景と幻想とを交え無手勝流に好き勝手をやっているから解りにくいものの、十年間も干されていたとは言え、本作のごとく自分の思い通りに映画が作れた清順は結局は幸福だったかもしれない。

本作でも勿論清順らしいエロ・グロ趣味は色々出て来るが、余り清順らしくないところでは、再三出て来る中砂の家に通ずる峡谷やトンネルの描写が相当印象深い。清順向きに深読みすれば、女性の象徴かもしれない。
 全体を見渡した時、グロテスク趣味醸成に貢献しているとは言え、三人の門付け芸人のお話はないほうがすっきりする気がする。

四人の男女優の耽美度が圧巻。原田芳雄は言うまでもなく、映画監督が専業の藤田敏八が良い味を出していた。

鈴木清順、藤田敏八のお二方は、邦画の特集を毎月組んでいるWOWOWにそろそろ出て来てもいいんじゃない?

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