プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「蜜のあわれ」

<<   作成日時 : 2017/01/12 09:46   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 0

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・石井岳龍
ネタバレあり

WOWOWが邦画に傾いている為昨年度は邦画の鑑賞が無用に増えてしまったのを反省して今年は少し抑える腹積もりである。本作は、原作者が室生犀星ということ一点のみで観ることにした。

犀星その人に他ならない老作家・大杉漣の前に、飼っている金魚が少女・二階堂ふみの姿になって現れてコケティッシュな魅力を振り撒き、これに生前作家を目指して彼に思いを寄せていた女性・真木よう子の亡霊が絡む。
 彼が第三の女性・韓英恵と交際しているのを知ると、金魚と亡霊は同病相憐れむ関係となり力を合わせて作家に対峙するが、亡霊は作家の思いの程を、金魚は作家の創作による存在の限界を知って去っていく。老作家は孤独に陥る。

映画としては、内田百閧フ幻想小説「サラサーテの盤」を「ツィゴイネルワイゼン」として映画化した鈴木清順の境地に近く、幽玄さが足りないが、彼の作風を意識したような部分もあって面白い。カメラでは、金魚屋の場面でアントニオーニよろしく周囲をぐるぐるする箇所が目を引く。石井岳龍という監督はなかなか面白いなと思っていたら、もはやベテランの域にある石井聰互の別名であった。

文学的な解釈をすれば、現実を突き破ることのできない小説家としての限界を、金魚の擬人化という逃避手法で打破しようとする老作家即ち犀星の苦悩を描き、同時に、その底にお妾さんの子供という出自による犀星の憂鬱が沈潜していることを漂わす。それ故の色っぽい幻想と言って良い。室生犀星のことを少し知っていれば、こういうことに思いを馳せることになる。

わが群馬県が生んだ大詩人・萩原朔太郎との関係が出て来て、交際している女性が群馬出身で、老作家が「群馬県人は小うるさい」旨つぶやき、彼が朔太郎をどう思っていたか分るのが興味深い。犀星が追い付かない存在として認識していた芥川龍之介との幻影場面もなかなか面白い。芥川を演ずる高良健吾はなかなか感じを出している。

鈴木清順との比較では、華麗な幻想譚「ツィゴイネルワイゼン」には大分及ばないが、幻想的伝記映画「夢二」なら大差がないのではないだろうか。

犀星を演じられる男優はかなりいるが、金魚を演じられる女優はそうそうはいない。二階堂ふみ、畏るべし。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
蜜のあわれ〜生と死の赤
公式サイト。室生犀星原作、石井岳龍監督。二階堂ふみ、大杉漣、真木よう子、高良健吾、永瀬正敏、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、岩井堂聖子。1962年に死去した室生犀星、ついこの間 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2017/01/12 11:31
「蜜のあわれ」文芸のかほり☆衣裳展でなりきる
室生犀星原作の「密のあわれ」の映画化。 妖艶でエロチック、なのに健康的で可愛らしい、金魚なのに人間、人間なのに金魚がここまでしっくりくる女優さんって、他にはいないよね。 文芸のかほり高き本作は、今すぐ原作を手に取って、そしてもう一度観たくなる幻想的で小悪魔的できわどくエロティックなのにキュートでちょっとコミカルな物語。 ...続きを見る
ノルウェー暮らし・イン・原宿
2017/01/14 19:55
映画評「ツィゴイネルワイゼン」
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1980年日本映画 監督・鈴木清順 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2017/01/26 09:09

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「蜜のあわれ」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる