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zoom RSS 映画評「パリ3区の遺産相続人」

<<   作成日時 : 2016/12/07 09:51   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ=イギリス=フランス合作映画 監督イスラエル・ホロヴィッツ
ネタバレあり

「いちご白書」「太陽の雫」という秀作の脚本を書いた劇作家イスラエル・ホロヴィッツが洒落っ気を発揮したドラマである。広い意味でコメディーに入るが、日本で言う笑劇的喜劇ではなく、20世紀米国演劇界の巨人ユージーン・オニールの悲劇作品のハッピーエンド版みたいな作品で、ホロヴィッツが自らの舞台劇を脚色、さらに監督にまで進出した。

経済的に困窮する中年アメリカ人ケヴィン・クラインがアメリカからパリ3区へ、不仲だった亡父が遺したアパートを見に訪れる。売って今後の生活資金にするつもりだ。
 しかし、そこには自称90歳(実は92歳)の老婦人マギー・スミスが居座っている。それだけなら大して問題はないわけだが、フランス独自のヴィアジェなる契約であった為彼は当てが外れる。

本作の面白さ或いはコメディー的な要素は偏にこの仕組みに立脚する。ヴィアジェというのは、住宅を安く売った住人がその家に住み込み、頭金以外の費用を年金として毎月買主即ち新しい不動産所持者が住人(通常は前の所有者)に払い続けるという内容。つまり、主人公は資金を得るどころか実質的に借金を背負ってしまったのである。住民が早く亡くなれば買主が得、長生きすれば損をするという賭けみたいなものなのだから、実に面白い。

主人公は不動産屋ドミニック・ピノンや開発業者ステファーヌ・プレスに諮って転売を狙う。ところが、長い歴史を持つ家を残したいマギーの娘クリスティン・スコット・トーマスが立ち塞がってもめにもめる。しかし、亡父とマギーの不倫に関してクラインとクリスティンが同根の苦悩を持っていたことが判り、彼は家を売ることを止める。

いかにも演劇らしい設定・結構のお話で、本作もまた最近多い気がする大人のメルヘンだろう。作者はその嘘っぽさから、人間が交流していくことで生まれる希望という化学反応を描き出す。だから「(同根の別の苦しみを持つ)二人が仲良くなることなどありえない」という感想はリアリティー病患者の発言である。観客に「ありえない幸福」を見せて彼若しくは彼女に幸福感を持たせるのが映画の使命の一つなのである。現実そのものでは何と味気ないことだろう。

しかし、僕とてインテリジェンスを持つこの二人に恋愛感情を持たせるまでの必要は感じなかった。まあ初老とは言え、男女が一緒に住むのだから、そうしないと却ってお話として落ち着かなくなってしまいますがね。

いつか君と行った「いちご白書」が観たくなりました。

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