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zoom RSS 映画評「フランス組曲」

<<   作成日時 : 2016/12/21 09:20   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年イギリス=フランス=カナダ=ベルギー合作映画 監督ソウル・ディブ
ネタバレあり

第2次大戦中、音楽家のドイツ将校を伯父と姪から成るフランスの家庭が受け入れる映画にジャン=ピエール・メルヴィルの長編デビュー作「海の沈黙」(原作はヴェルコール)がある。本作の出だしはかの秀作にそっくりである。
 途中からロマンスの要素が加わり、エンドロールの前に原作者イレーネ・ネミロフスキーにまつわる言辞が出て来る。彼女はアウシュヴィッツで死に、未完の作品が60年くらい経って発刊されてこの映画化に至ったらしい。僕はこの言辞にすっかりやられてしまったのだが、【Yahoo!映画】を覗いたら「死者への冒涜」と貶すコメントがあった。「ナチスは彼女を殺せなかった」という言辞のどこか冒涜なのか? 世の中には変わった思考をする人もいるものである。

また、フランス人とドイツ人が(フランス語で話すべきところを)英語を話しているとくさすコメントもあった。例によってリアリティ病である。フランス古典悲劇が古代ギリシャや古代ローマを舞台にフランス語で会話しているように、こんなことは大昔から当たり前。感覚的に理解できないことはないが、映画は舞台とは別という考えは忘れたほうがお金を払った自分の為にお得である。
 こういう言語扱いを【なんちゃって○○語】と僕は呼ぶが、同じ欧州言語内であるなら映画の出来栄えとは基本的に関係ないと言うべきである。ムードに多少影響あるにしても、本作の場合は基本が英国映画なのだから英語で問題なし。しかも、ドイツ兵役にドイツ系の役者を多く起用しドイツ語を喋らせているのだから誉めて良いくらいだ。これがドイツ兵同士でも英語を喋っていたら僕もマイナスにしたが。

1940年6月、フランスに侵攻したドイツ軍がフランスの町ビュシーを占領、地主の未亡人クリスティン・スコット・トーマスと嫁ミシェル・ウィリアムズの住む邸宅にも中尉マティアス・スーナールツが滞在することになる。彼は音楽家で「フランス組曲」という楽曲を作曲している。
 かつてピアノを弾いていたミシェルは人間としても高潔そうな彼に親しみを覚えていくが、農夫サム・ライリーの将校殺害事件を巡って市長たる子爵が見せしめの為に処刑されるという出来事により、彼女の心も暫し離れる。しかし、結局、彼女はライリーを逃亡させるために密かに働いてくれた中尉を忘れることはできないのだ。それを思い出せるのは戦死した彼の遺した「フランス組曲」なのである。

というお話で、彼女が農夫を庇った結果市長が処刑されたことに対する罪悪感が曖昧なのが倫理的に少し引っかかるが、それは農夫と市長との命を天秤にかけろという酷なものであるし、煎じ詰めれば問題はドイツ軍に帰するわけで、ドイツの非道を背景に作られた映画の価値を低下せしめることにはならないだろう。

「海の沈黙」が会話のない中で互いへの尊敬を浮き彫りにしていく美しい精神性の映画であるのに比べれば、複雑な感情の交換がある本作はぐっと大衆的であるが、これはこれで我々の感情を揺さぶるものがある。

当初は現代的な現代人を演じてきたミシェル・ウィリアムズは、徐々にスタンスを変えて、「マリリン 7日間の恋」に続いてクラシックな人物像を魅力的に演じて好調。

「フランス組曲」はバッハも書いている。「海の沈黙」ではバッハの「フーガ」が演奏される。原作者は、戦時中に発表された「海の沈黙」を読んだ可能性が高く、この作全体がオマージュなのかもしれない。かの作でバッハは独仏両国の垣根を超える象徴として使われていたのである。

魅力的な役者が出ていないという、大昔かなりのスターをつかまえて「チンピラ女優」などと言った評論家、故津村秀夫氏が言いそうな毒舌も目にした。僕はかなり充実した配役・結果と思いましたがねえ。

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フランス組曲 ★★★.5
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