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zoom RSS 映画評「白い沈黙」

<<   作成日時 : 2016/11/01 08:58   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年カナダ映画 監督アトム・エゴヤン
ネタバレあり

アトム・エゴヤン監督の作品は少年殺人ミステリー「デビルズ・ノット」も少女誘拐ミステリーの本作もなかなか面白いのに評価が低い。時系列をいじりすぎて解りにくいところがあるからだろうかと推察してみるが、どうも解らない。
 酷評している或るサイトに当たり、その理由へのヒントらしきものに突き当たった。要は、現実に照らした時に浮かび上がる設定の甘さが受けない理由なのではないか。例えば次のごとし。

造園業者のライアン・レイノルズがフィギュア・スケートの練習に疲れて後部座席に寝ている10歳の娘キャス(ペイトン・ケネディー)を置いておやつを買いに店に入る。2、3分後車の中に娘がいないのを気づき、警察の捜索が始まる。
 サイトの主曰く、「見通しの良いだだっ広い平地で少女を拉致するのは不可能」。難しいのは確かだが、しかし、絶対不可能とまでは言えないのではないか。犯人グループ(多分二人)はずっとつけていたのだから、最初から眠っている少女に麻酔剤をかがせて静かにさせて連れ出すまで時間はさほどかかるまい。残り1分もあれば車は1キロ離れた距離にい、如何にだだっ広いと言えども曇りがちの空の下1キロ先まではなかなか見えない筈である。

とにかくこれが事件の始りで、小児性愛事件にほぼ特化している警察の部署は、班長的存在のロザリオ・ドースンを別にすると、父親レイノルズを疑う。
 8年後、未だ娘を追いかけている彼は妻ミレーユ・イーノスとの仲が今一つ上手く行っていない。ホテルの客室係として働いている彼女は娘と関連付けたくなる品々が特定の部屋から発見されるのを不思議に思う。その様子をハイティーンになったキャス(アレクシア・ファースト)と誘拐犯ケヴィン・デュランドが眺めている。男は大手不動産企業の幹部で、小児性愛者向けの商売のため被害者の確保にキャスを利用しているのだ。

ここでかの人は、ネットで被害者と客を確保する手段を取っている以上すぐに警察に特定されてしまうだろう、と云う。これもまたそうかもしれないが、世間でそう言われていても実際に警察の能力がどれほどなのか我々部外者は想像でしか判断できない。実際本編の中でロザリオは「技術の問題はなかなか難しい」とIT絡みの捜査が一種のイタチごっこ状態にあることを示唆している。映画として一応話が成立するように布石を打っているわけである。僕はこの辺りは全く気にならず、これに女刑事ロザリオの失踪を絡めてなかなか面白く観た。

うっかりすると8年前と現在の二つの時系列に進んでいるように見えるが、実は現在がさらに二つの時系列に分かれていて、ロザリオが犯人に迫り誘拐されるまではまたごく近い過去ということになり、ここに暫し混乱させるところがあるものの、観客がきちんと整理してみる力があれば、お話の理解には全く差し支えない。

世評は警察の馬鹿さ加減を指摘するが、警察主体の物語ならともかく、造園業者が主人公であるから警察が馬鹿故にお話が面白くなるのだ。

幾つかあるハイライト。
 一つ。犯人は愉快犯的側面も出て来て、母親の困る様子を眺めるだけなく、父親に娘と逢わせたりもする。その時に拝借した彼の植木を道に据えて道案内をするなんて童話的アイデアがなかなか面白い。
 一つ。後日ダイナーで犯人を見かけた主人公が犯人の車に自分のGPSを仕掛けた後わざわざ店先で騒いだ後犯人に近づく。ここは恐らく娘の言った「トリックとギミックの違い」を地で行くシークエンスで、店先での騒動はトリックで、GPSはギミックになる。彼の狙いが完全には解りかねるのでパーフェクトとは言えないが、手に汗を握らせるシークエンスだ。

個人的にはなかなか気に入ったが、惜しむらくは同じようなムードの誘拐ものが多すぎる。ちょっと目を離した先に娘が誘拐され父親が懸命になるのは「プリズナーズ」、女性が閉所に監禁されるのは「特捜部 檻の中の女」に似て、これだけ誘拐ものが多い時代では割り引かざるを得ない。

少なくとも車の鍵はしておくべきだったね。

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白い沈黙 ★★★
『ハッピーボイス・キラー』などのライアン・レイノルズ、『トランス』などのロザリオ・ドーソンらが共演を果たしたサスペンス。突如として娘が行方不明となり、その8年後に生存を感じさせるサインを受け取った父親を待ち受ける、思いも寄らない運命を見つめる。監督は『... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/11/01 16:55

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
アメリカでは、子供を一人で車に残すのはそれだけで罪に問われるそうですけどね。
ねこのひげ
2016/11/08 00:09
ねこのひげさん、こんにちは。

これほどまでに誘拐・拉致の作品が作られるほどひどい状況なのでしょうから、むべなるかな、ですね。他の理由もあるのでしょうけれど。
オカピー
2016/11/08 17:44

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