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zoom RSS 映画評「ドローン・オブ・ウォー」

<<   作成日時 : 2016/10/03 09:14   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督アンドリュー・ニコル
ネタバレあり

今世紀に入って中近東での戦い(テロとの戦い)を描いた作品がかなり作られている。アメリカが次なる大きな戦争を起こすまでこれがアメリカ製戦争映画の主題であり続けるはずだ。
 本作はその中でも地味な作りであるが、日本人には最新の戦争の様態について一番考えさせられる作品ではないかという気がする。賞レースにも絡まずクリント・イーストウッドのような有名監督が携わっていないので、観客動員数は寂しいようであるが、ご覧になった方にはなかなか評判が良い。

25年ほど前の湾岸戦争の時に「コンピューター・ゲームのようで、現実感がない」と言われたのをよく憶えている。前線での戦いがなく、遠方からミサイルを撃ち込むだけだったからだ。
 それから20年ほど経った本作では、ラスヴェガスの基地で、ドローンから送られてくる画面を見ながら将校たちがテロリストを発見するや攻撃を仕掛ける。ゲームのような感覚がさらに進む一方で、精細な画像が送られてくるために、前線時代以上に生々しく相手に触れることになる。それが敵やターゲットなら平気の平左で爆弾を発射できるが、多くの場合民間人が絡んでくるのでそれに連日向かい合っている操作官は感情的になって精神的に疲弊する。

それが如実に表れているのが元パイロットのイーサン・ホークで、酒に逃げて妻ジャニュアリー・ジョーンズとの仲も険悪となる。彼と新たにコンビを組むことになった美人空兵ゾーイ・クラヴィッツも無辜の人々が犠牲になるのを見て涙を流す。彼は故意に作戦を混乱させたかどで昇進が見送られるが、遂に退役を決意、その前にターゲットではない悪党を殺す個人的復讐をして留飲を下げる。基地を離れた彼は妻子の去った町へ向う。

本作のテーマはこうした非人道的とも言える戦略が個人を疲弊させる現実であるが、我々の印象に残るのは(確かに世界平和のために必要な部分があることは解る一方で、そうした公人的立場でなく私人・一個人として考えれば)やはりアメリカの罪悪である。本作がアメリカで日本より評判が良くないのは自国の悪が全面的ではなくともアピールされているからであろう。

しかし、現実問題としては、作戦の善悪より、こうしたマシーンの開発により世界中のどこにいても命が狙われる可能性がある、という怖さということになる。ドローンを使えば個人でもちょっとしたテロを起こせる可能性が十分確認できる怖さであり、隣国からの我が国への攻撃を想定しなければならない怖さである。

作戦が終了した際の掛け声"Good kill!"は"Good job!"のもじりではないかと思うが、この"good"は「良い」ではなく「十分」「完全」といった意味の"good"であろう。

ピクセル」でゲームおたくが軍隊に採用されるのはお笑いでなく現実だったのだ。

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ドローン・オブ・ウォー〜皮肉にも回復した現実感
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「ドローン・オブ・ウォー」
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パピとママ映画のblog
2016/10/03 12:45

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コントローラーがプレイステーションのコントローラーを使っていると聞いたときはあきれました。
ねこのひげ
2016/10/10 08:25
ねこのひげさん、こんにちは。

ヒロインもゲーマーだったですね。
オカピー
2016/10/10 20:57

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