プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」

<<   作成日時 : 2016/09/25 10:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 5 / コメント 3

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督J・C・チャンダー
ネタバレあり

J・C・チャンダーは、「マージン・コール」(本邦劇場未公開)「オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜」では色々理屈を並べて星を抑えたものの、実はなかなかの実力派監督と思っている。もっと普遍的な良い素材に当たれば堅実に見せる秀作を作り出すだろうと踏んでいた通り、本作で大分僕の考える秀作映画にかなり近づいた。

1980年頃のニューヨークのお話で、地下鉄車両に書かれた大量の落書きが生々しい。【割れ窓理論】に基づき落書きが消されてからニューヨークの治安がぐっと良くなったと聞いたのは20年くらい前だろうか。つまり、NYが一番危険な街だった頃のお話ということ。

1981年、オイル会社の経営者オスカー・アイザックはユダヤ人業者から銀行からの融資を当てに少なからぬ頭金を払って彼の持つ施設を買い取る契約を結ぶが、30日以内に残りの金を支払わないと契約が破棄され頭金は戻されないという条件が付く。
 日々彼の会社のタンクローリーが襲われ頭を悩ましつつも銃での対抗措置は取らないという彼の方針も空しく運転手エリス・ガベルが発砲事件を起こした為、銀行が融資を断ってくる。彼が脱税等の悪事を暴こうと躍起になっている検事デーヴィッド・オイェロウォには良い材料となってしまう。
 しかし、正攻法以外の手法は一切取らないことをモットーとするが故に追い詰められた彼に、遂に糟糠の妻ジェシカ・チャステインが莫大な“へそくり”の存在を明らかにする。最初はヤクザのボスを父を持つ彼女が得た汚い金かと疑うが、結局この資金を加えて残金を払って施設を買い取り、NY一のオイル会社となる。

ドル箱スターも出演せず華美の要素さが殆どない作品だから「マージン・コール」同様に本邦劇場未公開に終わっても不思議ではなかったが、配給会社のおかげで公開に至ったのは幸いで、チャンダーが自らのオリジナル脚本をきちんと映像に移し、予想通り堅実に見せてくれる。基本的にチャンダーはドキュメンタリー・タッチの演出家で、本作もその路線だが、それでも彼は肩掛け・手持ちカメラは多用しない方針らしく堂々と撮ったカメラが良い。「オール・イズ・ロスト」は必要性があったにしても揺れるカメラを使ったのが不満だったが、内容に沿って使い分けしているらしく、なかなか賢明と言いたい。

「結果ではなくそこに至る正しい道(手段)が大事である」という主人公の最後の言葉が、本作の社会に向けたメッセージ。この言葉に彼を彼を疑っていた検事も感服せざるを得ず、我々も素直に首(こうべ)を垂れるしかない。この理想が実現できれば、世界は平和である。その直前ガベルの拳銃自殺であいたコンテナの穴を主人公が冷静に塞ぐ行動については両義的な解釈ができるが、どう解釈しても彼の言葉との間に矛盾はないだろう。

現在では本邦劇場未公開でも有料放送、DVDなどでかなりカバーできる時代。未公開に良い作品が結構埋もれているのではないかと思うが、それでも出来の悪い劇場公開映画を見てしまう。それが人情。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
アメリカン・ドリーマー 理想の代償
原題 A MOST VIOLENT YEAR 上映時間 125分 映倫 PG12 監督 J・C・チャンダー 出演 オスカー・アイザック/ジェシカ・チャステイン/デヴィッド・オイェロウォ/アレッサンドロ・ニヴォラ/アルバート・ブルックス 1981年のニューヨーク。モラルを無視したつぶし合いが平然と... ...続きを見る
to Heart
2016/09/25 17:52
アメリカン・ドリーマー 理想の代償
石油の一滴は血の一滴より濃い 公式サイト。原題:A Most Violent Year。J・C・チャンダー監督。オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デヴィッド・オイェロウォ、エリス・ガベ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/09/25 21:05
アメリカン・ドリーマー 理想の代償★★★★
『マージン・コール』『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』などのJ・C・チャンダーが放つ社会派ドラマ。1980年代初頭のニューヨークを舞台に、オイルビジネスに参入した実業家夫妻が、何者かの策略によって窮地に立たされる姿を追う。主人公夫妻にふんする『インサイ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/09/26 16:43
映画評「ナイトクローラー」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2014年アメリカ映画 監督ダン・ギルロイ ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2016/09/27 10:57
地獄の沙汰〜『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
 A MOST VIOLENT YEAR ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2016/09/28 11:29

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ハリウッドの俳優で、稼いだ金で映画を作っている人がいてその上映方法が変わっているそうです。
映画を上映する場合、自分が同席でなければ上映させないし、上映させた後に自分のパフーマンスと解説をさせないと上映させないそうでアメリカ国内でも見た人は数少ないそうです。

広瀬正の小説・・・・本棚を探してみたんですが・・・
出てきません。
所有していたと思っていたんですが・・・どこにいれたか・・・
広瀬正全集というのも出版されてますので、図書館で探してみたください。
すいませんです。
ねこのひげ
2016/09/25 14:14
忘れてましたが、今夜11時にNHKでドラマ『戦争と平和』があります。映画と比べてどうなんでしょうね。
最近の海外ドラマは俊英なのが多いようです。
そうそう明日からフジテレビの深夜で『ハウス・オブ・カード』というのがあります。
アメリカ大統領になろうとする男の手段を択ばぬ戦いを描いたドラマで評判でした。
大統領選に合した放映でしょうね。
ねこのひげ
2016/09/25 16:39
ねこのひげさん、こんにちは。

>ハリウッドの俳優
それはまた傲慢ではないですかなあ^^;

>広瀬正
SFはちらほら読めそうですが、ミステリーは少なかったです。
代表作と目される「T型フォード殺人事件」がありましたので、これを後日読んでみましょう。これ、案外そうではないですか?

>『戦争と平和』
僕の悪い癖でTV映画は映画に劣ると思ってしまうのですが、TVのミニ・シリーズの中にはもの凄く上出来のものがあるようです。
しかし、ミニ・シリーズは長いからなあ。
観たいけれど、全編は無理のようTT

>『ハウス・オブ・カード』
しかし、ねこのひげさんの情報の幅広いことにはビックリですね。
これもシリーズですか。
僕もそろそろスタンスを変えたほうが良いのかなあ^^
オカピー
2016/09/25 22:35

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる