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zoom RSS 映画評「国際市場で逢いましょう」

<<   作成日時 : 2016/09/21 09:39   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 4 / コメント 4

☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年韓国映画 監督ユン・ジェギュン
ネタバレあり

韓国史上第2位の動員数を記録したと聞くが、この内容(お話)なら頷ける。

プサン、開発の為に店の処分と立ち退きを迫られる老人ドクスが回想する。
 朝鮮戦争の最中、現在北朝鮮となっている興南地区から脱出する際に父とすぐ下の妹と生き別れ、母と二番目の妹と弟共にプサンの国際市場と呼ばれる商店街で店を営む叔母の家に居候することになった12歳くらいの少年ドクスは、体格の良い若者に成長(ファン・ジョンミン)、1960年代初めにドイツの鉱山へ出稼ぎに出、現地で学んでいる看護婦のヨンジャ(キム・ユンジン)と親しくなり、帰国後に結婚する。
 数年後には妹の結婚費用捻出の為に戦争最中のベトナムに出かけ、ベトコンに殺されかけるピンチを迎える。足の重傷を負うものの何とか帰国した彼は、勉学のチャンスを棒に振って、出来の悪い義理の叔父が売るという亡き叔母の店を買い取る羽目になる。
 1980年代TV局の朝鮮戦争で別れ別れになった肉親を探し当てる企画に乗って、父と妹との再会を期する。結局父親とは連絡が取れず、アメリカにいた妹と再会を果たす。
 現在。60年に渡り父親に代わる家長として家族を養ってきたドクスは父親の幻影に遭遇、漸く店を処分しても良いという心境になる。

ドクスの家族の為に尽くした一生を描きながら、朝鮮戦争以降の韓国史を俯瞰するのが目的である。韓国を代表する事業家、ファッション・デザイナー、歌手まで交えて、戦争での悲惨を力に、いかに韓国が伸びていったか綴り、韓国国民の精神を大いにくすぐるものがある。これでヒットしないわけがない。ドクスの奮闘は韓国の奮闘そのものだ。

その流れにおいて本作で一番感心させられたのは、現在の若者が出稼ぎに来ているインド人を馬鹿にするのを老いたドクスが咎める場面があること。現在は先進国の顔をしている韓国も半世紀前には同じ立場だったことを主人公は経験的に知っているわけで、ちょっとした時代のズレがある以外に何の違いもない(と、主人公そして映画は言葉でなく表現するのである)。彼にとって半世紀前の自分たちを馬鹿にされているのも同然なのだ。
 同じことが現在の日本の若者にも言える。彼らは現在の日本が大昔から続いていると勘違いし、アジア人特に中国人のマナーの悪さを非難するが、日本が奇麗になり日本人のマナーが良くなったのは東京オリンピックのおかげと言われている。これまた僅か半世紀前のことである。40年前は日本各地が公害の問題で揺れていた。小さいながら我が市でも公害問題があった。「フラガール」のヒロインの家がボロすぎると(さも監督が在日韓国人であるから故意に貶めているかのように)言った“彼”は、昭和40年頃の日本の田舎の実際が映画以上にひどかったことを知らない(市において下の上くらいであった我が家はあの家より数段ボロであった)。ましてそこに監督のアイデンティティーを絡めるなど日本人として誠に恥ずかしいことである。その点本作の監督は立派だ。

翻って、映画としては、喜劇要素を交えなければ成り立たない韓国大衆映画の水準的なレベル。一本の映画が前半と後半とで水と油のように分かれる作劇に比べれば大分ましだが、それでもお笑いが泥臭く真面目な部分の感動を減殺してしまっている。人によってはその振幅により楽しめ感動も増すのかもしれないが、僕の目には相当野暮ったい手法に映る。
 
あの段階で父親と会えないのは、恐らく父親がいるのが北朝鮮だからだろう。

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「国際市場で逢いましょう」
う〜ん…どう評価すればいいのか…微妙だなぁ…何故なら私は韓国国民ではないので。絶対的な価値観が違う。もちろん良し悪しを言っているのではない。これは価値観云々ではないのだけれど、例えば、メジャーな歌手や一流デザイナー、更に強豪力士や現代(ヒュンダイ)の社長に至るまで、国際市場で生きてきた主人公とどこかしらで後の著名人が関わってきたエピソードなどは、韓国国民であればニヤリやクスリも込めた感慨で受け入れられるのだろうけれど…知らないのでノリ切れない。とはいえ、1950年の興南埠頭での出来事ー避難民とし... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2016/09/21 13:26
国際市場で逢いましょう ★★★
『TSUNAMI-ツナミ-』などのユン・ジェギュン監督がメガホンを取り、『傷だらけのふたり』などのファン・ジョンミンを主演に迎えた感動の家族史。朝鮮戦争や軍事政権、ベトナム戦争など動乱の時代を家族のためにささげた一人の男の足跡を活写する。主人公の妻を『ハーモニ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/09/21 13:26
『国際市場で逢いましょう』
□作品オフィシャルサイト 「国際市場で逢いましょう」 □監督 ユン・ジェギュン□キャスト ファン・ジョンミン、キム・ユンジン、オ・ダルス、チョン・ジニョン、チャン・ヨンナム■鑑賞日 6月1日(月)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★★(5★満... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2016/09/21 23:18
父に捧ぐ〜『国際市場で逢いましょう』
 ODE TO MY FATHER ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2016/09/22 09:41

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
私は滅多に韓国映画を観ないのですが、あらすじのダイナミックさに惹かれて、思わず映画館まで足を運びました。
見事に凝縮した大韓民国の歴史と自分自身を犠牲にして家族に尽くし続けた主人公ドクスの生き方とが美しく絡み合い、非常に見応えがありました。特に、最後にドクスが父親の幻影と再会するシーンでは、ドクスが労をねぎらわれた瞬間に、涙をこぼしてしまいました。
Kanako
URL
2016/09/21 19:00
Kanakoさん、こんにちは。

僕も最近は韓国映画を余り見ないのですが、その理由は真面目なお話にも泥臭いお笑い要素を入れてしまうからということに尽きます。
本作もその韓国映画の欠点は見られますが、主人公と韓国の奮闘を同一視させて進める作り方が良かったですね。普遍的な部分はあるとは言え、日本人が韓国人と同じ感銘を味わうのは本質的には無理なんでしょうけど。

かく言う僕も涙腺が緩みましたが、再会の場面でまずやられてしまいました。オカピーを泣かすのはかくも易しい(笑)
オカピー
2016/09/21 21:56
どの国も同じ道をたどるようで・・・知識のなさを棚に上げる連中は恐ろしいであります。
ねこのひげ
2016/09/25 15:11
ねこのひげさん、こんにちは。

自分の国の昔くらいはある程度知っていたほうが良いですね。その為に歴史を学ぶ。
研究の結果史実を変えていくのは良いけれど、嘘で固めた歴史修正主義は困る。歴史が人々を反省させる機能を失ってしまう。
オカピー
2016/09/25 21:47

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