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zoom RSS 映画評「独裁者と小さな孫」

<<   作成日時 : 2016/09/19 09:06   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年ジョージア=フランス=イギリス=ドイツ合作映画 監督モフセン・マフマルバフ
ネタバレあり

亡命中のイラン人監督モフセン・マフマルバフは、当ブログで一番アクセスの少ないオムニバス映画「キシュ島の物語」の監督の一人。僕は多分それしか観ていず、本作が二本目になると思う。

架空の国家の独裁者ミシャ・ゴミアシュヴィリがクーデターに遭遇、ごねて家族の中で唯一人国内に残った幼い孫息子ダチ・オルウェラシュヴィリと共に、身をやつして国中を逃げ回る羽目に陥る。その間に国民の悲惨な状況を知ることになるが、遂には捕えられる。

捕えた庶民や軍人の間で意見が分かれ彼が最終的にどういう処分をされるか解らない。しかし、本作の主張は明確で、その一人が述べるように、復讐は連鎖するだけなので止めなければならない、ということである。
 いずれにしても、世界各国で今もどこかで起きている紛争の寓話で、この大統領の人物像はかつてのチャウシェスク大統領(ルーマニア)、フセイン大統領(イラク)辺りを思えば近いだろうが、日本人には隣国の将軍様がすぐに思い浮かぶ。

この作品の独裁者たる大統領は国民の現状を知って心が動かされても、決して「自分が悪かったのだ」と思わない。これは先日観たドキュメンタリー「ルック・オブ・サイレンス」の惨殺者に通ずる心境に見えるわけで、お話を類型化させない凄みがある。「キシュ島の物語」同様、構図に優れた絵(画面)の貢献度が高く、ギターによるエスニックな楽曲に乗って孫が踊るところなど、西洋と東洋の入り混じったような野趣溢れる描写も魅力を放つ。

内容についてもう少し。
 クーデターを成功させた軍人たちが通りがかった花嫁を暴行する場面があり、権力は誰が担っても国民が困ることに大して差がない、という権力風刺となっている。しかし、民度が至って低いところでは、独裁者が機能することがある。イラクはフセインがいなくなって宗派対立が激しくなって内戦状態になっている。フセインには勿論人情的に許せないところが多いが、国の安定に関してのみ言えば機能していたのである。

ちと意味が違うが、「一将功成りて万骨枯る」が庶民感情。

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独裁者と小さな孫 ★★★
ベネチア国際映画祭やシカゴ国際映画祭など、各国の映画祭で称賛された人間ドラマ。とある国の独裁者として君臨するもクーデターによって追われる身となった老いた男が、幼い孫を連れて逃亡した果てにたどる運命を描く。メガホンを取るのは、『キシュ島の物語』『カンダハ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/09/19 16:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
”狡兎死して走狗煮らる”なんて諺もありますが、フセインが大統領の就任式の会場で大喜びしている自分を大統領にしてくれた部下たちを次々に逮捕させて銃殺に処した時の映像は忘れられませんね。
部下たちはなぜ自分が殺されるのかわからないようで唖然としておりました。
フセインとしては、自分をトップから引きづり下ろす力のある者たちを排除したのでしょうね。
まあ、日本でも徳川幕府という絶対武装集団があればこそ250年以上の平安を保てたわけですからね。
ねこのひげ
2016/09/19 10:26
ねこのひげさん、こんにちは。

>狡兎死して走狗煮らる
権力を握ると人間は豹変し、権力欲に苛まれて部下を殺す。醜いなあ。
北朝鮮はまるで1000年前か1500年前かという感じ。日本書紀を読むがごとしですね。核を持った今外国より国内のほうが怖いかも、あの若い彼は。
オカピー
2016/09/19 21:37

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