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zoom RSS 映画評「駈込み女と駆出し男」

<<   作成日時 : 2016/09/10 09:35   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・原田眞人
ネタバレあり

井上ひさしの時代物は「手鎖心中」や「道元の冒険」を読んだことがある。本作はその井上氏の長編時代小説「東慶寺花だより」を原田眞人が映画化した時代劇。原田監督、小説の脚色はお手の物でも時代物は初めてらしい。首尾はいかに? 

江戸時代、一般的に女性からの離縁申し立てが出来ない事情から、幕府は事情ある女性に限って条件付きで離縁を認めていた。その仕組みが縁切寺とも呼ばれる駆け込み寺である。ここまではぼんやりと知っていたが、その事前調査をする御用宿の存在は本作により初めて知り申した。本作の舞台である鎌倉の東慶寺は駆け込み寺の一つだった。

1841年。御用宿の主人・三代目源兵衛(樹木希林)の甥に当たる駆出し医者で戯作者志願という変わり種が信次郎(大泉洋)で、彼と同時にここへ駆け込んできたのが鍛冶屋の若女房じょご(戸田恵梨香)と、大店・堀切屋の妾お吟(満島ひかり)。じょごは仕事の関係で額に火ぶくれがあり、お吟は労咳(結核)である。
 寺の御用達医者が老骨で動けない為インターンに相当する信次郎の出番がやってくるが、男子禁制を原則とする為に「目を見てはいけない」など医者の仕事をまともにさせてもらえない珍場面が連続する。大泉洋を起用した喜劇らしさはこの設定の可笑し味に大いに生かされている。

それ以外の場面は、軽味があるとは言え基本的にシリアスに推移、序盤の二人プラスαが駈込む箇所や、実は大泥棒であった堀切屋(堤真一)がお吟の裏切りと勘違いして信次郎を間者の疑いで拷問する箇所などサスペンスも加えられ、それを最終的に胸を打つお話に収斂させていく辺り脚本の要領がなかなか良い。江戸後期の文化・風俗を扱った作品としては「写楽」(1995年)「北斎漫画」(1981年)に次ぐ出来栄えではないかと思う。趣向的には傑作「幕末太陽伝」(1957年)に通ずるものがある。

山崎努扮する戯作界の大御所・滝沢馬琴の(登場する)意味が解らないという感想を目にしたが、まあその存在自体が狂言回しと考えて良いのだろう。
 主人公・信次郎は何と言っても戯作者(物書き)志願であるし、じょごは祖父の縁で大御所と知り合いであり、最後に彼女が盲目となった馬琴の為に代筆者を探していたことが判る(些か都合の良すぎる)落ちもある。本作の始まる1841年に代筆を務めていた嫁が亡くなっているので、史実的にほぼ合う。さらに、お吟はその末期に「南総里見八犬伝」最終巻を読んで貰ってあの世へ旅立つ、といった具合。

信次郎のモデルはいないらしい。

日本の古典は原則的に原文で読むことにしているが、未読の「南総里見八犬伝」は中国の代表的白話小説に倣って大長編なので、現代語訳で済まそうと思っている。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
面白い話を一つ。
この東慶寺の中興の祖と言われる天秀尼には豊臣秀頼の娘だそうです。
『のぼうの城』の甲斐姫が母親だったらしいです。
忍城の戦いの後、甲斐姫は秀吉の側室となるのですが、秀頼の乳母となり筆おろしをして子供ができたのが天秀尼だそうです。
女の子だったので千姫の養女となり尼さんになったそうです。
ねこのひげ
2016/09/11 17:05
ねこのひげさん、こんにちは。

面白い由来があるものですねえ(@_@)
公認の縁切り寺は日本で二つあるそうで、もう一つはわが群馬県にあるのだとか。
しかし、新田郡だからピンと来ないなあ。
オカピー
2016/09/11 20:27

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