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zoom RSS 映画評「チャップリンからの贈りもの」

<<   作成日時 : 2016/08/31 09:29   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2014年フランス=ベルギー=スイス合作映画 監督グザヴィエ・ボーヴォワ
ネタバレあり

1977年末12月25日にかのチャールズ・チャップリンがスイスのレマン湖畔に近い邸宅で死ぬ。程なくその遺体の入った棺が盗まれるという事件が発生する。これは実際のお話である。本作は、その実話にインスパイアされて構成されたフィクション。

1977年末のスイス、刑務所から出所したばかりのベルギー移民ブノワ・ポールヴールドが親友のアルジェリア移民ロシュディ・ゼムに迎えられ、隣のトレーラーに住むことになる。獣医になりたい小学生の娘セリ・グマシュにも好かれるが、親友が骨の変形で入院中の妻の手術代が捻出できないのを知って一計を案じる。チャップリンの遺体を盗んで身代金を頂戴しようというのである。
 最初は嘘と思われてチャップリン家にも警察にも相手にされず、やがて墓の盗掘が事実と判明しても、便乗犯が出て来てこれまたすんなり行かない。しかし、結局はお縄を頂戴することになる。

僕は序盤「獣医になりたい」娘に「大学進学など無理」と言わなければならない貧困層のゼムに、日本でも拡大しつつある相対的貧困層(一見貧乏に見えない家庭)がダブり、また、彼らが移民であるということに移民排斥の機運が世界的に高まっている現状にも思いを馳せざるを得なかった。スイスの移民事情は他の国と違うかもしれないが、移民が成功するのがそうたやすくないのはいずこも同じだろう。

しかし、脚本と監督を担当したグザヴィエ・ボーヴォワは現代の貧困問題を暗示させる程度に留め、本論を貧困とチャップリンとの関係を基調に人情を描き出すことに置く。
 貧困を素材に映画を作って金持ちになったチャップリンを偽善者と言う勘違い人間がいるが、それに関するような台詞も出てくる。しかし、作者の眼目は、チャップリンを文字通り“掘り起こす”とで、その貧乏人に注がれた人情を埋めさせまいというアレゴリーにあるのではないか。少なくとも、ボールヴールドが最後にサーカスの道化師になるのは「ライムライト」へのオマージュである。ただ、チャップリンが晩年サーカスに車椅子で通っていたという事実を知らないと感慨は減る。

このようにボーヴォワのお話の進め方には舌足らずなところが多く、お話の持つ潜在力が余り生かされていない。例えば、ボールヴールドがサーカスの女主人と知り合う部分は晩年のチャップリンとの関連性を打ち出したほうが良かったであろう。スイスの人はいざ知らず、日本人にはピンと来ないのだ。

ポールヴールドとゼム、警察とチャップリン家の執事、全く無関係の人が二か所の場所に出入りする身代金引き渡しの場面は甚だ混乱していて、この監督のカット割り技術に疑問を抱く。
 裁判で弁護士が「貧乏であることで罰を受けている」と言った直後にゼムの一家がチャップリンのお墓にお礼に来る場面に変わり、未亡人ウーナが手術代を出してくれたことが判る、という流れの部分では省略の仕方と呼吸が良くない。弁論が奏功して無罪になったことを瞬時に判らせる目的としては良いが、手術代寄付は余りに唐突に過ぎる。省略は映画作家がもっと多用すべき手法とは言え、扱いを間違えると元も子もなくなってしまうという例だ。

WOWOWの紹介人・小山薫堂氏は「番組史上5本の指に入るかもしれない」と大絶賛しているが、内容はともかく、技術的に問題が多くて僕は余り評価できない。

因みに孫のドロレス・チャップリンが演じているのは未亡人ウーナではなく、娘の一人である(Allcinemaの解説は間違い。台詞でも「父は」と言っている)。

1978年の映画友達への年賀状に「12月25日をクリスマスに代えてチャップリンの記念日にしよう」と書いた。年賀状を出すのはいつも年末もぎりぎり、30日頃だったなあ。昨今は12月20日前に必ず出している。

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チャップリンからの贈りもの ★★★★
喜劇王チャップリンの遺体が盗まれた実際の事件を題材に、マヌケでドジな2人組が巻き起こす大騒動を描いたヒューマンコメディ。「神々と男たち」でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞したグザビエ・ボーボワ監督が、チャップリンの遺族の全面協力を得て完成させ... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/08/31 10:58

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
チャップリンのDVD全集のCMをテレビでやっておりましたら、全巻予約をするとチャップリンの未公開映画のDVDが特別付録としてプレゼントされるとか・・・
チャップリンの映画で未公開作品なんてあるのか?と疑いますな。
ねこのひげ
2016/09/04 19:10
ねこのひげさん、こんにちは。

>チャップリンの未公開映画
失敗したフィルムかなんかではないですか?
オカピー
2016/09/04 20:32

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