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zoom RSS 映画評「カビリアの夜」

<<   作成日時 : 2016/08/18 08:21   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1957年イタリア映画 監督フェデリコ・フェリーニ
ネタバレあり

フェデリコ・フェリーニ長編第6作。40年近く前自主上映で観て大いに惚れ込んだ一編で、その後TVで観るのは二度目、都合三回目の鑑賞となる。

ローマの貧しい街娼カビリア(ジュリエッタ・マシーナ)は心を傾けた男にバッグを奪われて川に落とされ危うく溺れかかるが、男を疑いたくない。再び街に立つうち、恋人と痴話喧嘩をする有名俳優(アメデオ・ナザーリ)の気まぐれで夜のデートに誘われる。彼のアパートで楽しんでいると、例の女が戻ってきた為に追い払われ、金で買われる女であることを認識せざるを得ない。
 生活の変化を求める彼女は、深夜から始まる巡回集会に付いていき、奇跡を祈る催しに参加するが、何の変化もない。劇場では老奇術師に無理やり駆り出され、催眠術により生活にかかわることを告白してしまった直後、孤独そうなオスカー(フランソワ・ペリエ)に親切な言葉をかけられ、結局彼の結婚話にほだされて家まで売り彼との旅に出るが、森の中で結婚詐欺師の正体を現した彼に金を持って逃げられる。
 死ぬこともできず絶望に沈んで道をとぼとぼ歩いていると、陽気な若者たちが彼女の横を通り過ぎる。世の中残酷な人たちばかりではない、彼らが彼女に声をかけると、彼女も微笑み返す。かくして心底に僅かな希望が湧くのだ。

何度見ても幕切れの彼女の笑顔に胸を打たれる。笑顔のうちに寂しさと僅かな希望をないまぜにしたようなこんな表情ができるのはジュリエッタ・マシーナか、チャールズ・チャップリンくらいしかいないのではないか、そう思わせる素晴らしい笑顔だ。
 凡俗な我々は春をひさぐ女性を“汚れた女性”と思うが、純文学の作家には“だからこそ彼女たちは純情なのだ、無垢なのだ”と描写する方も多い。本作のフェリーニも正にその典型と言うべし。

騙されても騙されても男性を疑うことができないカビリアが一番憎むのは、そういう騙されやすい純粋すぎる自分なのだ、ということを徹底的に表現する終盤の描写は暫し厳しく、若者たちの出現とともに忽然と柔和な表情に変わって彼女を希望で包み始める。突然生活が変わる奇跡は彼女に起こらないが、陽気な若者たちとの邂逅は彼女に残酷な仕打ちをし続けた神のちょっとした贈り物なのだろう。カビリアに幸多かれ。

若かりし僕はこの映画に対し「ジュリエッタ・マシーナという類稀なる女性を(公私に)得たフェリーニの喜びの発露を感じる」と書いている。結構真実を穿っているのではないだろうか。

苦手と言ってきたけれど、フェリーニもやっぱり良いね。

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カビリアの夜
(1957/フェデリコ・フェリーニ監督・共同脚本/ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ、アメデオ・ナザーリ、アルド・シルヴァーニ、ドリアン・グレイ、フランカ・マルツィ/111分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2016/08/18 11:07
『カビリアの夜』(1957) フェデリコ・フェリーニ監督の才能と暖かみを感じる佳作。
 『カビリアの夜』は1957年製作の作品であり、フェデリコ・フェリーニ監督の一番の理解者でもあり、妻でもある女優、ジュリエッタ・マッシーナが、監督の長編デビュー作でもある『寄席の脚光』(1950)、名作の誉れ高い『道』(1954)、モノクロが美しい『崖』(1955 日本公開は1958)、に続いて主演を務めました。音楽には盟友、ニーノ・ロータが付き、フェリーニ独特の世界観をさらに色付けしています。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2016/08/19 09:47

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
ボブ・フォッシーの「スイート・チャリティ」の元ネタ、というのも今や知らぬ人の方が多いかも。
脚本にはあのパゾリーニも参加していたようですね。
途中、サンタクロースのような人物も出てきて、神に関するフェリーニの考えも滲んでいるようですが、そういう意味でもベルイマンのこの映画に対する批評なんてものも読みたいです。
博士と同じく、僕のお勧め度も満点五つ★です。
十瑠
2016/08/18 11:13
>ボブ・フォッシーの「スイート・チャリティ」の元ネタ
そうでしたね。ラストの場面、当時のアメリカの風俗をうまく使ってなぞっていたような。でも、映画としてはフェリーニのほうがずっといいかんじ、さすがというか、絵が洒落てるので見ていて楽しい。ボブ・フォッシーは他にもフェリーニ意識してるなという映画を撮ってましたね。「オール・ザット・ジャズ」はもちろんですが、「スター80」も場面的にそう見えたのを覚えています。でも、それらを見ると、アメリカ映画では出せない粋さや洒落た感じがヨーロッパの映画にはあるんだなと思います。
nessko
URL
2016/08/18 21:13
十瑠さん、こんにちは。

>「スイート・チャリティ」
実は、WOWOWが余りに不作で、わがライブラリーから探している時に最初「スイート・チャリティ」が目に入りましたが、これをUPするならご本家のほうを再鑑賞して先にアップしておかねばなるまいと思って本作を選んだのでありました。

>神
カビリアの本名はマリアで、マリア様の奇跡が現れずマリア様を呪詛するように聞こえる言葉は自分に向けたものなのでしょうね。
フェリーニは、信心に庶民の哀れを感じているのかしれません。インテリのフェリーニはきっと冷めているのでしょうが、生活の基礎をなす庶民の信心を馬鹿にはしていないと考えています。
ベルイマンはフェリーニをどう思っていたのでしょうか。その逆もまた興味深いですね。
オカピー
2016/08/18 22:11
nesskoさん、こんにちは。

>ボブ・フォッシーは他にもフェリーニ意識してるな
「オール・ザット・ジャズ」は「8・1/2」でしたものね。
「スター80」については僕は気づかなかったですが、もしチャンスがあるならもう一回見てみようかと思います。

今の映画はお国柄を感じられる作品が減りました。
昔の欧州映画の洒落っ気は、散文的・合理的なアメリカ映画とは、まったく違う面白味がありましたよね。
オカピー
2016/08/18 22:21
こんにちは!

超メジャーな作品が多いため、どうしても地味な印象がありますが、とても良い映画ですよね。悲惨なお話ですが、どこか温かみを感じさせてくれる何とも言えない魅力にあふれた作品でした。こういうのは今ではなかなか撮れないのでしょうね。

ではまた!
用心棒
2016/08/19 09:51
用心棒さん、こんにちは。

地味ながら本作の人気はあるようですよ。
今までに挙げたフェリーニ作品の中でアクセス数が一番多い出だしで、二日目にして50を超えました(@_@)

>温かみ
最後には僅かに希望を見出せました。
娼婦仲間の優しさにもぐっと来るものがありましたよね。
カビリアはあの後彼女のもとに帰っていくのでしょうか。

>魅力
ジュリエッタ・マシーナの存在が大きいでしょうね。

>今では
「映画的なるもの」が悪循環的になくなっています。
オカピー
2016/08/19 21:57
最後のほほえみ・・・・どんな絶望の中でも希望があるという事でありましょうね。
イタリア人の陽気さの根源かな。
映画らしい映画でありますね。
ねこのひげ
2016/08/21 07:16
ねこのひげさん、こんにちは。

フェリーニのテーマが、庶民の生活感情にある時代の作品でもあります。
この映画、結構人気があるのにビックリしております。
オカピー
2016/08/21 17:25
こんにちは!

>結構人気
地味な作風の作品群をしっかりと批評にまとめられる方が少ないため、そういう映画をどう見たら良いのかというファンが集まるのではないでしょうか。

よくある一言コメントですべてを表せるとは思えませんし、そういうのは関わった人たちに失礼なのではとも思います。まあ、本当にどうしようもないのはありますがw

ではまた!
用心棒
2016/08/23 09:39
用心棒さん、こんにちは。

結局は映画に対する愛情の問題と思います。
僕も、本館では容量の問題があって一行コメントで済ませておりましたが、短くまとめるにも労力がいて、それはそれで難しいんだけどなあという思いもあります。
まあ「駄作」とかの一言で済ますのはちょいと困りますけどね。
オカピー
2016/08/23 23:00

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