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zoom RSS 映画評「もののけ姫」

<<   作成日時 : 2016/08/14 09:45   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1997年日本映画 監督・宮崎駿
ネタバレあり

スタジオジブリの主要作品はDVDを購入したが、ブルーレイ・レコーダーを買った後よりハイビジョンのTV放映を録画、CMをカットして保存している。スタジオジブリ作品は日本テレビ独占ながら、クレジットを省略しない完全ノーカットだからさほど文句はない。しかし、何年か前本作をいそいそと録画したらDVD画質だったので削除した、という経験もある。

宮崎駿監督は「千と千尋の神隠し」(2001年)で恐らく永久に不滅であるにちがいない配収記録を打ち立てたが、それも本作の爆発的大ヒット(当時歴代No.1)があってのことであろう。古語や聞きなれない言葉が多く、内容的にも様々な主題が複合・交錯するなかなか難しい作品なのに、当たったのだ。

前回観た時は設定された時代をはっきりと把握しなかったのだが、今回再鑑賞した結果色々なキーワードから16世紀くらい、戦国時代のお話と考えられる。
 その時代より500年ほど前大和により北国へ追いやられた蝦夷(えみし=えぞ、現代のアイヌ)の若者アシタカ(声:松田洋治)が、人間に恨みを持って祟り神となった巨大猪を射殺し、呪いの傷を体に持ってしまった為村を追われる形で南東へ向かう。
 女丈夫エボシ(声:田中裕子)がたたら(=ふいご)踏みを指揮をして鉄を製造する村で、人間殊にエボシを敵(かたき)と思う山犬(=狼)に育てられた人間の娘サン(声:石田ゆり子)と彼らが対峙する現場に遭遇する。身を守る以外は誰をも敵とも味方ともしない少年は多勢に無勢の“もののけ姫”を自ら負傷しながら援護、森へ逃亡したサンも彼を殺すことができない。
 エボシや朝廷から命を受けた男たちが森の守り神シシ(獣)神の頭部を狙い、アシタカやサンの抵抗も空しくシシ神は頭部を奪われ、そこから流出した液体があらゆる生命を死滅させる。しかし、二人が奪い返した頭部を巨大化していたシシ神に返すと、神は倒れ、そこから吹き始めた風により大地は緑に溢れ出す。

平和や差別という問題も要素として大きく扱われているが、本作と共鳴し合うところの多い「風の谷のナウシカ」(1984年)と通底する“自然と人間の関係”に僕は注目する。

宮崎駿は実際にも活動をしているように、エコロジーの人だ。しかし、映画で見せる彼のエコロジー観はもはや人間が地球に優しくするというレベルにはない。
 人間が地球に優しくするという考えはある意味人間の傲慢であり、人類は自然と単純に対立しているのではなくその懐に抱かれ、人類に襲いかかる自然は同時に人間を守る存在でもある、という考えが見出されるのである。
 自然は一神教では神が作ったものと解釈されるが、多神教では自然が神であり、人類はその一部に過ぎない。実にスケールの大きな考えであり、平和(戦争)も差別もその中に内包される。映画の感想文を読むと“世界観”に溢れているが、世界に対する考え=真の意味での世界観を映画の中で示している映画作家は宮崎駿くらいである。
 同じ考えがあっても徒党を組まず、敵の敵が味方とは限らず幾つものグループが離合集散するややこしくひねくれた設定も、悪党的な人物でも滅ぼされない展開も、世界に対するこうした複眼的な視線が生み出すものだろう。

アニメであるから自由自在であるとは言え、獣の匂いまで漂ってきそうな野趣溢れる描写が圧巻。彼自身の作品以外に類のない異色作であると全く感心するほかない。

日本テレビがスタジオジブリ作品を独占する状態が終わるのを待つばかりなり。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
自然と一体と言う意味では『風の谷のナウシカ』『トトロ』などと歴代の作品と首尾一貫しておりますね。
特にこの『もののけ姫』では日本人の中に根強く残る自然に対する畏敬をよく表現されているようです。
自然では善も悪も平和も戦争も混沌して存在しているという事でありますかね。

日本テレビ独占のおかげで、ディスクを取り出さなくても定期的に観れるわけでありますね。
ねこのひげ
2016/08/14 11:27
先日、僕も久しぶりに観て、やはり面白いと思った作品。いまだ感想文は挙げてないですが、お勧め度は★五つになるはずです。
アシタカを主役としたロード・ムーヴィーであり、彼が巡り合う人々とのやりとりの中でソレゾレの複雑な関係がスムーズに受け入れられる良く出来た脚本だと思いました。

>“自然と人間の関係”に僕は注目する
>多神教では自然が神であり、人類はその一部に過ぎない

妖怪も魔女もすべて受け入れるかのごとき宮崎ワールドの中でも、暴力のあり方を問う姿勢は「ナウシカ」に通じますね。
十瑠
2016/08/14 13:25
ねこのひげさん、こんにちは。

正に多神教の国民が作り上げた集大成的作品ですよね。
しかも、欧米で受けているのが嬉しい。
こんな作品、ちょいと作れないなあ。
オカピー
2016/08/14 22:45
十瑠さん、こんにちは。

本当に巡り合う人々の関係性は複雑ですね。
歴史劇としても念入りに調査され、書かれた秀逸な脚本と思います。

>暴力
宮崎監督は平和主義者ですが、それをメッセージとして安直に訴えないのが凄い。
平和・暴力に関する考えが、様々な要素に立脚して示される。
どえらい作家ですよね。
オカピー
2016/08/14 23:15

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