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zoom RSS 映画評「タクシー・ドライバー」

<<   作成日時 : 2016/08/12 10:08   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1976年アメリカ映画 監督マーティン・スコセッシ
ネタバレあり

カンヌ映画祭最高賞を取り、日本でも大騒ぎになった。しかし、公開時、新鋭監督につき日本での名前の表記が定まっていず、スコシーズだのスコルセッセだの、書き手によって違っていた。少なくとも現在落ち着いたスコセッシは3番手以降であった。僕は名画座で観て、ポルノ映画を主人公が見る場面と、遺作となったバーナード・ハーマンのジャズィなスコアが記憶に残った。

ベトナム帰還兵のロバート・デニーロが不眠症を利用して夜を主たるフィールドとするタクシー・ドライバーとなり、大統領候補の選挙事務所で働いている美人シビル・シェパードに入れ込み、デートに誘ったまでは良いが、ポルノ映画につき合わせたのですべてご破算。「何だ、つまらん女だ」とふてくされた彼は、自分が立派な人間と勘違いし、日頃から気に入らない街を汚す連中を排除したい欲求に苛まれる。この時に向かった最初の怒りの矛先は大統領候補である。
 闇で銃器を手に入れると、大統領候補の暗殺に向かうが、強固な警備と人海にチャンスを失して逃げ出し、今度は以前関わりのあった少女娼婦ジョディー・フォスターから搾取しているヒモのハーヴィー・カイテルをやっつけに出かける。暗黒街のお偉方まで巻き込んで彼女を救出、九死に一生を得た彼は英雄視され、一介のタクシー運転手に戻る。

当時流行していた自警をテーマにした作品のヴァリエーションと言えるが、ベトナム帰還兵との絡みで犯罪を、テロリズムを考える作品なのではないだろうか。
 ナルシズムで対象を征伐する気になった彼にとって、大統領候補暗殺も少女救出の為のチンピラ殺しも大差がない。しかし、大統領候補を暗殺すれば恐るべきテロリストと扱われ、少女救出の為にチンピラを殺せばヒーローとなる。この差が戦争における殺戮の意味であるという、チャールズ・チャップリンが「殺人狂時代」(1947年)で主張した内容と通底するものがあるような気がする。

そこに現代性を加えたのが、ベトナム戦争により醸成されていたアメリカの閉塞感。周囲が理解しないことで帰還兵たる主人公を孤独に追い込み、彼にとっては自分の存在を表現する為の世直しなのであろう。主人公にとってどちらでも良かったのはそういうわけなのにちがいない。
 脚本に幾つか気になる部分があるが、特に、わざわざ目立つモヒカン刈りにして会場に暗殺しに赴くのが犯罪映画として首を傾げさせる。それに続く場面・カットの繋ぎも少々ぎこちない。脚本を書いたポール・シュレイダーは、この後若い女性をテーマにポルノ業界を描く作品を書いていることを考えると、少女を利用した性産業を扱うのが好きなことが解るが、ちょっとした瑕疵が幾つかあるとは言え、本作の出来が断然良い。

若くて細い顔に狂気を滲み出させるデニーロが好演、ご存知の通りスターダムについた。
 ジョディー・フォスターの少女娼婦が、演じた彼女が13歳ということがあって、大きな衝撃を起こし話題を呼んだのも記憶している。本作の2年後に「プリティ・ベビー」のブルック・シールズの少女娼婦が続き、ここに多分時代性がある。

この後彼が日本へ来て渡瀬恒彦になった、というのは嘘です。 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
スコセッシとかコッポラとかは、題材に興味が湧かなくて殆どスルーした作家たちです。この映画も2009年に初めて観た次第でして、案の定、主人公が狂人にしか見えなくて、音楽以外残念な印象でした。
十瑠
2016/08/12 19:26
十瑠さん、こんにちは。

ある人が言うには、「この映画は作られた時代に観ないと正しい評価ができない」ということで、僕もそこを意識して、ベトナム戦争後遺症を少し強く前に出して書いてみましたが、時代の気分は確かにあるにせよ、脚本の出来がスーパーに良いとは言えない気はします。
スコセッシのタッチは、末期を迎えていたニューシネマらしいドライさより、ハードさが前に出た感じで、こういう感覚が10何年か経ってタランティーノのような監督を生むのでしょうね。
オカピー
2016/08/12 20:30
これは封切りで見ております。ポルノ映画館に連れていく場面は、なんであんなことをしているのかよくわからなかったのですが、後で小林信彦がエッセイでこの映画を取り上げて、女の子をデートで連れて行った映画館はポルノとしては上等な部類で普段主人公が通っているポルノ映画館よりは高級な場所。普段着よりきれいな服を着て女の子を連れてデートだから主人公はいつもよりいい所に行っている、でもそれが女性には伝わらない、そういう哀しさとこっけいさが描かれていたと解説されていて、やっとわかりました。その他、細かいニュアンスはやはり子供の時はよくわかってなかったなと大人になって再見して自分でそういうことが分かりました。
nessko
URL
2016/08/13 00:33
nesskoさん、こんにちは。

僕には、主人公の常識のなさを強く感じる場面でしたが、確かに最初に行った映画館より綺麗な映画館という感じはしました。こういう悲しみを含んだ滑稽味は、子供にはなかなかわかりませんね。

非常識な男だから、モヒカン刈りで暗殺予定の場所に出かけたり不合理な行動を取るのでしょうが、実は主人公とシビル・シェパードがタクシーで再会するラスト・シーンの意味が掴めていません。
オカピー
2016/08/13 21:33
実際に12,3歳での娼婦がゾロゾロいるのがUSAの現状のようで、いまだに改善されることはなく年々ひどくなる一方のようで、それがISなどを生み出す要因かもしれませんが・・・
ねこのひげ
2016/08/14 11:38
ねこのひげさん、こんにちは。

アメリカは矛盾を抱えた興味深い国ですよね。
人種のるつぼなので、複雑な様相を示すのでしょう。

>IS
欧米の帝国主義が残した禍根の一例ですよね。
最近に限れば、ソ連のアフガン侵攻から始まるますが、イラク戦争は諸悪の根源になってしまいました。
オカピー
2016/08/14 22:38

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