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zoom RSS 映画評「ロマンス」

<<   作成日時 : 2016/07/31 08:42   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督タナダユキ
ネタバレあり

僕がずっと注目している女性監督タナダユキの新作。主演の組み合わせを最初に見てうっかり見逃すところだったが、念のため監督名を確認したところ彼女だったので観ることにした次第。

小田急ロマンスカーの車内販売員をしている大島優子が、万引きしようとした中年男・大倉孝二を捕まえるが、犯罪を立証できない。中年らしく馴れ馴れしい男は、彼女が破った手紙を読んで男性遍歴の絶えない彼女の“母親の自殺”を疑い、強引に彼女を“母親捜し”の旅に連れ出し、手紙にあった思い出の地であるロマンスカー絡みの地点を訪れる。

というロード・ムービーで、お気に入り作品「百万円と苦虫娘」と似た部分もある。さすがにかの作品の語りの鮮やかさには及ばないものの、フランスの小説の一ジャンル“コント”を思い出させる軽妙な味がなかなか良く、これはこれで捨てがたい。“コント”は日本で一般的に言われるそれと同じ語源であるが、軽妙な短編小説を言い、文字通り二人のコントみたいなやり取りの末に浮かび上がる人生の機微はなかなか出せない。

最近の僕は集中力が薄く、余り他人(ひと)のことを言えないものの、それにしても「母親のお話は?」という疑問を呈する人がいたのに驚いた。最後に彼女が接客する相手が、懲りもせずに別の男と談笑している母親であろうに! それに気づかないと、本作の打ち出す人生の機微が全く理解できないことになる。

序盤の描写が示すように、仕事がばりばり出来るヒロインもまた母親に似て甲斐性のない男に尽くすことに運命づけられているのかもしれないが、彼女は大嫌いな母親や自分に失望の絶えなかった自らの人生について、映画プロデューサーとして失敗続きの中年男と行動を共にすることで、現実を直視しその前途に僅かな希望を見出す。もはや彼女は母親を以前のようには恨まないであろう、それが最後の彼女の微笑(営業笑い)の意味である。
 諦観と言えばそれまでながら、人間には欠点や問題はつきものという前提に立てば、彼女の成長と言えることになろうか。

ヒロインに写真を依頼する親子連れを彼女の一家と同じ配役にして、彼女がかつての自分の一家を見るという、時空を交錯させる演出をしているところは工夫である。

大島優子と大倉孝二の凸凹コンビの醸し出すユーモアが軽妙で悪くないものの抜群とまでは言えず、軽妙な味だけでは作品として少し弱い。

モーパッサンの短編とか、フィリップの短編集「小さき町にて」とか。

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公式サイト。タナダユキ監督。大島優子、大倉孝二、野嵜好美、窪田正孝、西牟田恵。小田急ロマンスカーで車内販売員を務める鉢子(大島優子)がなぜか一晩箱根周辺でアバンチュー ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/07/31 10:37

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
男と女では焦点のとらえ方が違うようで、それが作品に面白味を与えておりますね。
こんなことを書くと女性差別とか蔑視だとかおっしゃる方が洋の東西を問わずいらっしゃいますがね。
ジブリの方が同じようなことを英国のテレビの対談で言ったら英国のネットで炎上しておりましたが。
ちょっと違うんだよな。

小川糸さんという小説家がいますが、この人も焦点をぶらすのがうまい作家さんであります。
ねこのひげ
2016/07/31 10:32
ねこのひげさん、こんにちは。

>女性差別
差別と区別が解らない人いるんですよね。
区別から差別が始まるという考えもありましょうが、本来平等でないものを平等に扱うのは不公平であるということは、共産主義の失敗で分かっているはずなんですが。
群馬県のトイレの表記が、男性が黒で、女性が赤なのはおかしいとか、女性がスカートなのはおかしいとか、外国人や識字できない人にも解りやすく理解させるための最低限の表記を問題にする人がいて、呆れましたよ。固定観念だろうが何だろうが、すぐに解らなければ意味がありませんや。

>小川糸さん
( ..)φメモメモ・・・第2弾(笑)
オカピー
2016/07/31 21:25

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