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zoom RSS 映画評「鰻の男」

<<   作成日時 : 2016/07/22 09:45   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2014年韓国映画 監督キム・ドンフ
ネタバレあり

3年位前までは韓国映画もそこそこ見ていたのだが、特定の監督による作品群を除く大衆映画が尽く前半と後半との振幅で見せようとする洗練されていない韓国スタイルで作られているのにうんざりし、例外となる数人の監督の作品を除いて観るのを止めた。しかも、WOWOWがほぼ毎月のように韓国映画特集を組むので却ってその気が起こらず、ばらけてやってくれれば見る気になるかもしれないものをも遠ざける結果となっている。
 本作も韓国サスペンス集の一つだが、運よく例外となる作家の一人キム・ギドクが脚本を書いていると気づいて観ることにした。

若者パク・ギウンが中国から韓国へ密航・密入国する。父親が養殖したウナギが水銀に汚染されていると韓国食品安全庁からダメ出しをくらい、倒れた父親の代わりに再検査をしてもらうためだ。

ギドクの脚本にリアリティーを求めるのは無粋だが、非現実的な設定・描写が許されるのは観念的なことを表現する場合である。本作のように具体的なことを表現するのに主人公の行為は余りに非現実的すぎ、些か興ざめるスタートと言うべし。船内で知り合った一見(いちげん)の男の殺人依頼まで引き受けてしまうのも常識的ではない。

さて、安全庁の美人室長ハン・チェアは、執拗にガードマンに食い下がり何回もやって来る彼に興味を覚えて再検査をするが結果は同じ。しかし、彼女は若者を自宅に招いて男女の関係となる。
 ここも唐突で理解しにくい部分であるが、彼女が心に何か闇を持っていると仮定すれば成り立たなくもない。ギドクであればさもありなんと言う部分だから、これは問題にしなくても良いだろう。

彼女の闇というのは、恐らく近所のウナギ店に不合格のウナギを横流ししていることで、異物混入で廃棄処分にされる食品が流通していたという昨年起きた日本の事件を思い起こさせる。しかし、水銀とただの異物混入では生命への危険度で大きな差があり、その点において本作のウナギのほうが断然深刻だ。

彼女はウナギの横流しと引き換えに若者を雇うようにマネジャーに認めさせるが、若者はウナギに関して思い入れがあるために一見の男から預かったピストルで仕事仲間を脅迫して横流しのウナギを放流するが、ここの水もダメで結局ウナギは死んでしまう。

というお話で、テーマは民族同士の偏見という問題である。韓国の中流階級以上は決して中国製は買わず、食べない。日本人も似たり寄ったりと思うが、ここまで強い嫌悪感はないような気がする。ギドクはそれは人間にも適用されていると言うのである。汚染されたウナギは、韓国人から見る中国人にほかならない。

やがて彼女は中国の若者を理解し、韓国人を「資本主義の奴隷」とまで言って罵る。どちらも五十歩百歩ということをわざわざ皮膚を剥いで測った水銀濃度検査で示す。これはヒロインの愛情表現でもあるし、ギドクらしいメタファーに満ちた描写で凄みがある。

他方、彼としては珍しいくらい直球的なテーマの扱いと思うが、それ故にあり得べからざる設定が目立ってしまう。監督はキム・ドンフという人だが、ギドクの脚本だけあってトーンは全編一貫している。韓国映画には着想的に日本映画より面白いものが多いのだから、トーンが一貫しないという悪弊を取り去ってくれたらもっと観るのだが。

WOWOWよ、韓国映画特集を組むなら、ギドク特集(初期)をしておくれ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
昔、中国の女の子と付き合っていた時、河が緑色だと言っておりました。
自然が汚染されるのは資本主義も共産主義も変わらんようです。
ねこのひげ
2016/07/24 19:04
ねこのひげさん、こんにちは。

日本も80年代以降劇的に環境が良くなりましたよね。
中国もこれから良くなっていくでしょう。共産党一党支配でなければ、それももっと早いのでしょうが、やる気を起こせば独裁体制のほうが早いかもしれない。

>中国の女の子
すみにおけませんねぇ(笑)
オカピー
2016/07/24 21:07

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