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zoom RSS 映画評「真夜中のゆりかご」

<<   作成日時 : 2016/07/16 09:33   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年デンマーク=スウェーデン合作映画 監督スザンネ・ビア
ネタバレあり

スザンネ・ビア監督はご贔屓である。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「未来を生きる君たちへ」(2010年)以上に「しあわせな孤独」(2002年)に感心した。今回も同作に迫る内容だ。

「普通のドラマ」とYahoo!映画のコメントにあった。昨今の若い人の言う【普通】は我々の言う【普通】とはランキング的に異なると大分前のコラムに書いたことがあるが、いかなる意味においても本作は普通どころでなく、人間をかくも大胆な実験台に乗せる着想はどこから生まれてくるのかと呆れ返るほどである。

息子が生まれて半年余りの刑事ニコライ・コスター=ワルドーが、連絡を受けて駆け付けた元囚人の家で、息子と全く同じ頃生まれたらしい糞尿まみれの男の乳児を発見、両親に面倒を見られない赤子の様子にいたたまれなくなる。
 これが最初の布石である。

片や、精神不安定の彼の妻マリア・ボネヴィーは彼の「子供を産んで後悔しているのか」と言われて猛烈に怒る。
 次なる布石であり、終わってみれば伏線でもある。これは彼女にとって本音を付かれた故の怒りとかなりの確率で想像がつく。もっと吃驚するのは息をしなくなった息子に呆然としている彼女が「警察に連絡するな、さもなければ自殺する」と言う発言で、これは後段明らかになるミステリー的解決への伏線。しかし、この段階で我々観客には非常識な言葉としか理解できない。

喪失感をやわらげ、いたたまれない赤ん坊を救おうという一石二鳥のアイデアとして彼は死んだ息子の元囚人夫婦の子供を取り換えるという暴挙に出る。しかし、赤子殺しで再逮捕されたくない囚人が路上で赤ん坊が誘拐されたという狂言事件を起こし、また彼の妻が子供をトラック運転手に預けた後入水自殺したことから、やがて親友でもある同僚刑事ウルリク・トムセンに真相を暴かれることになる。

思うに、この若い刑事は狂言回しで、本当の主人公はマリアと囚人の内妻リッケ・マイ・アナスンであろう。つまり、子供を愛していたように見えたマリアが実は息子を密かに虐待(彼女が「警察に連絡するな」と言ったのは犯行がばれる為)し、一見子供を放置していたように見えたマイが深く愛していたという、人を見た目や環境で判断することがいかに危険であるかというのが本作の真のテーマではないかと思うのである。妻の非行を知った彼がマイに赤子を返し「済まなかった」と頭を下げるのはそれを裏打ちする。

数年後刑事を解職されてホームセンターの店員になっていた彼は無事に幼児にまで成長した赤子を母親とともに発見する。
 彼の最大の過ちは、母親の資格があるマイから母親失格と決めつけ、一時とは言え、息子を奪ったことである。誘拐という法律上の罪は本作において大した主題上の問題ではない。勿論いずれの関係者(あの元囚人はさすがにうさんくさい)からも親の子に対する愛情というものが浮き彫りにされるわけであるが、僕の心に残るは人間の実相を正しく把握する難しさなのである。

若者は、【普通】を形容詞として使っているようで、実は形容詞を省いた副詞として使っている。【普通】が普通に使われていない。こうした若者独自の使い方が世代間で大きな誤解を生む。【やばい】以上にやばいのである。

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真夜中のゆりかご ★★★
第83回アカデミー賞外国語映画賞受賞作『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トマス・イェンセンのコンビによるサスペンス。妻子と幸せな日々を過ごしていたが、突如思いも寄らぬ悲劇に見舞われた刑事の葛藤を、育児放棄や家庭内暴力など現代社会が抱える問題を取り上げながらスリリングに描く。テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのニコライ・コスター=ワルドーを主演に、『ある愛の風景』などのウルリク・トムセンらが出演。 ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/07/16 12:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
最近は北欧に秀作が多いですね。ミステリー小説でも大ヒット作品が多いです。
ねこのひげ
2016/07/18 17:10
ねこのひげさん、こんにちは。

>北欧
ベルイマンの本格的なドラマがTVで見られるスウェーデンなど、大衆が高尚なんですよね。
オカピー
2016/07/18 20:12

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