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zoom RSS 映画評「Mommy/マミー」

<<   作成日時 : 2016/06/09 10:25   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年カナダ映画 監督グザヴィエ・ドラン
ネタバレあり

まだ20代の文字通りの若手グザヴィエ・ドランというカナダの監督は、面倒くさいタイプの作品につき実力に見合う採点をしなかった「わたしはロランス」に続き二本目の鑑賞となる。結論から言えば、普遍性の高いこちらを買う。

現実にはないもう一つのカナダが舞台だが、SFではない。
 そのカナダでは、発達障害のある子供に関しては親が法的手続きを経ずに、施設に預けることができるという法律が成立している。46歳のシングルマザーであるダイアン(アンヌ・ドルヴァル)は、放火で入所させられていた強制施設から引き取った15歳の息子スティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)との生活に悪戦苦闘している。少年は多動性障害(ADHD)の為に注意散漫、激しい暴力にかられがちである。ダイアナが彼の暴力に抵抗して彼を傷つけた時近所の元教師の女性カイル(スザンヌ・クレマン)に手当を受けたのが縁で、勉強を教えてもらうなどして、二人は落ち着きを取り戻していく。吃音に悩むカイル自身もそれを気にしない二人に安心感を得、交流は深まっていく。
 が、放火事件の被害者からの慰謝料請求に続き、カラオケ・バーでの騒動で悩みを深めたダイアンは遂に苦渋の決断をして息子を施設に送る。スティーヴには理解できないかもしれないが、彼女の愛情故の選択である。

ついこの間までこういう子供を持つ親は「しつけが悪い」と非難されたものだが、ここ四半世紀くらいでそういう誤解はかなりなくなっている模様。それだけ環境は良くなっているわけであるが、それでも当事者はなかなか辛い生活を送っていることは想像に難くなく、本作では典型ではないにしてもその一端が伺える。
 施設に送った後の事情が描かれる終幕を見ると暗澹たる未来が待っているようであるが、ヒロインのダイアンの言葉と明るい表情を見れば作者は寧ろ希望を表現している。一般的なADHDであれば成人になると大概そういう症状は治まると言われているのだから。

映像面で言えば、スタンダード(4:3)でも16:9でもない1:1のアスペクト比が注目される。人間は実際の視覚に比較的近い16:9に落ち着きを見出すようでハイビジョン・テレビがこの比率になったのはそういう理由と聞いたことがある。1:1ではひどく窮屈に感じる。それは作者が観客に母子の閉塞感を感じさせる為の工夫である。だから開巻の100分後に4分ほど16:9になると安心する。その個所は母親が息子の幸福な将来を想像するシークエンスである。なるほどこういうアイデアもあったのかという印象を受ける。

技術的なことはともかく、一見ルーズに見えるダイアナが見せる愛情に、母ものに弱い僕はジーンとさせられてしまう。そして、そこに普遍的な母親の愛を見出すのである。

「オール・アバウト・マイ・マザー」の二本立てで行こう。

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Mommy/マミー〜スクリーンも多動性障害
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佐藤秀の徒然幻視録
2016/06/09 11:40
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
マミーというから、最初はミイラの方のマミーと思ってしまいましたよ(≧◇≦)
ねこのひげ
2016/06/12 16:30
ねこのひげさん、こんにちは。

>ミイラの方
遂にオカピー菌に感染してしまいましたか(笑)
しかし、可笑しい^^
オカピー
2016/06/12 20:27

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