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zoom RSS 映画評「ゼロの未来」

<<   作成日時 : 2016/06/07 09:45   >>

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☆☆(4点/10点満点中)
2013年イギリス=ルーマニア=フランス=アメリカ合作映画 監督テリー・ギリアム
ネタバレあり

テリー・ギリアムにとって久しぶりのSF映画である。文学のSFには哲学性を内包したものが多い一方、映画はそうでもない。まして近年はチャンバラSFばかりで、飽きてきた。ギリアムのSF映画は多分に哲学的であったと記憶するが、本作は哲学映画そのもの、これはこれで理解に難儀するところがあって素直には喜べない。

近未来のロンドン。秋葉原にインスパイアされたということで、アジアっぽい雰囲気が濃厚、かかるヴィジュアルに関する部分はなかなか面白い。
 そこで、コンピューター管理会社の歯車として働いているクリストフ・ヴァルツが、求めていた人生の意味を教えてくれそうな電話が再びかかるのを待って、自宅で仕事をしている。ゲーム的動作を繰り返して【ゼロの定理】を解明する仕事であるが、シーシュポスの岩のように徒労に終わることを運命づけられている模様。
 半強制的に駆り出されたパーティーで出会った美人メラニー・ティエリーが、やがて彼が仕事場としている廃墟の教会に現れた後、経営者(マネッジメント)マット・デーモンの息子ルーカス・ヘッジスに指導を得て彼女のサイトへ入り、夢幻の時を過ごす。その結果心療的処方である「われわれ」という一人称が「わたし」という単数形に変わり、経営者からは放り出されるが、ありのままの姿で夢の世界にいる自分を見出す。

現代人には全くピンと来ないだろうが、(歴史哲学者シュペングラーによると)古代ギリシャからカントまで数学は哲学であった。数学の素養がなかったカントが哲学を数学と切り離し、それ以降哲学は人間や人生の意味を探るようなより狭隘な学問となった。その意味で「ゼロ」という数学的観念と人生の意味を求めて苦悩する主人公の魂の彷徨を関連付けた本作の立場は原初的哲学の位置にある。

恐らく本作における「ゼロ」は「死」もしくは「生まれる以前の状態」のことであるが、表現しようとしたのは「恋」が哲学的苦悩を解決するとでも言わんばかりの内容なのではあるまいか。「恋」でなくても「趣味」でも良いのであろう、人生気楽に行きましょうや、といった感じの結論と僕は解釈した。
 もしそうであるならば、甚だまだるっこい感じがあり、ギリアムの映像世界に依然興味深いものがあるとはいえども、退屈感が先に立つ。当方の理解も甚だ心許なく、総体的に一人合点が目立つと言わざるを得ない。

これが本当のギリア夢です。

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ゼロの未来 ★★★
『未来世紀ブラジル』などで知られるテリー・ギリアム監督が、コンピューターに支配された世界を舞台に、人間の存在意義と生きる目的を問うSFドラマ。寂れた教会にこもり謎の数式を解こうとする孤独な天才技師の人生が、ある女性との出会いを機に動きだしていくさまを描く... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/06/07 20:35

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
テリー・ギリアムは若い頃はおもしろいと素直に思えましたが、いまとなっては少々鼻につくものを感じます。「オレ、あたまいいんだぞぅ〜、わかるかおまえに」みたいなのがあるのね。若い頃は自分にも気取りたいところがあったからのれたのだろうなと。小説だとおもしろいかもしれませんが、みたいな話に見えますね、この映画。
nessko
URL
2016/06/07 11:21
nesskoさん、こんにちは。

作品自体ももう少し解りやすかったような気もしますねえ。彼の作品は再鑑賞したことがないので何とも言えませんが。
「未来世紀ブラジル」と「12モンキーズ」くらいは見直しても良いでしょう。

>小説だとおもしろいかも
僕もそう思います。映像で哲学するのはなかなか難しいものがあります。
オカピー
2016/06/07 21:42
小説だとおもしろう・・・賛成!
映画は映像が伴いますからね。ある程度固定されるので辛いですね。

さきほどEテレでピクサーの短編アニメ特集をやっておりましたが、なかなか面白かったですよ。
ねこのひげ
2016/06/12 17:19
ねこのひげさん、こんにちは。

僕が最近映画より小説のほうが面白いと思うことが多いのは、最近の映画はなんでもかんでも描いてしまって想像させる余地が少なくなっていることがあると思っているのですよね。
逆に、映画の場合、解らないものは徹底して解らないし。

>ピクサーの短編アニメ特集
めざといですねえ^^
オカピー
2016/06/12 20:18

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