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zoom RSS 映画評「天空の蜂」

<<   作成日時 : 2016/06/26 10:17   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・堤幸彦
ネタバレあり

図書館でも映画界でもモテモテの東野圭吾が1995年に発表した同名小説を映画化したサスペンス・アクション。

大手企業の設計士・江口洋介が、自ら開発した最先端軍事用ヘリ“ビッグB”の自衛隊への引き渡しの式典に妻と息子を連れて出席すべくやってくる。息子がこっそり乗り込んだ“ビッグB”は、事前に準備していた何者かにより遠隔操作されて飛び立ち、福井県の高速増殖炉“新陽”の上でホバリングを始める。8時間後には燃料が尽きて落下、かなり広大な範囲が数百年人が住めない状態になりかねない。

さて、この状況に対して、江口らヘリ設計者、原発関係者、官憲はどう対応するか、というタイム・リミット型ポリティカル・サスペンスで、日本映画ならではの多くの問題を抱えながらも、だからこそハードルを大幅に下げて甘く採点した。大甘は事実ながら、スクリーンに現れる努力を買ったのである。
 かつて躊躇せず駄作と断定した「感染列島」と似たり寄ったりと言えないこともないものの、共通する欠点が各々僅かに良く、幾つかあるハイライトにパンチがある為、総合的にかなりの差となった。

作劇上の問題としては、一にも二にも関係者の危機管理の甘さ。如何に内部協力者がいたとは言え事前準備されてしまい、ヘリコプターに子供が入り込めてしまう。興醒めも良いとこだが、観客が何事かと思っているうちに済んでしまうので非現実的と感じるのはほぼ映画が終わった後となる。こういうのは邦画固有の問題ではない。

一方、邦画ならではの問題、その中でも非常に気になるのは、登場人物が感情的にすぎ、その関連で話し合いや口論の起こる度に動作や進行が止まってしまう(ように感じられる)こと。限りある貴重な時間を無駄につぶしているように見えてしまう。タイム・リミット型サスペンスとして作られているのになっちょらんのである。
 しかし、「感染列島」に比べれば見せ方が上手いし、意味を見出せる口論が多いから、さほど問題と感じにくい。(しかし、外国人が本作を観ると「話ばかりしていて何も決められない日本人」の特徴がよく出ていると感じるのではあるまいか?)

それより、江口が最後のヒーロー的行為に旅立つ前の描写が長いのが問題。これまた「時間がないというのに何をやっているのだ」という感じになる。洋画では家族や恋人との描写があってもっとスマートで、そういう茶々を入れたくなる要素を殆ど残さないのとは差がある。
 ただ、父親の愛情を求めている息子がその為に覚えたモールス信号が全編に渡り、時にサスペンスの手段として時に親子愛の表現として生かされているのは大いにヨロシイ。

テロリストに同情するわけには行かないが、彼らが打ち出す「傍観していると今にひどい目に合う」というのは、重要な命題への回答を幾つも迫られている現在の日本人へのメッセージとしては誠に時宜を得ている。というより、今だからこそ作者たちが敢えて強く提示したのだろう。

堤幸彦も色々なタイプの作品を作るようになったが、本作が一番万人向けで、出来栄えもかなり伴っていると思う。余りひねくれていない邦画ファンになら推薦したい。

冗談でなく、この映画を観た後出かけた竹やぶで足長蜂に右上腕部を刺された。現在腕が腫れている。大して痛くも痒くもないが、一回目より二回目以降が怖いと言う。連日畑に出かけるので戦々恐々。蜂に刺されて死んだのではお話にならないな。

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天空の蜂〜なぜ撃墜しない?
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 1995年8月。開発されたばかりの最新鋭巨大ヘリコプター 「ビッグB」 が 何者かによって遠隔操作され、敦賀にある原発 「新陽」 上空でホバリングを 始める。機内には、ヘリの開発者・湯原(江口洋介)の一人息子・高彦が取り残 されていた。 ...続きを見る
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2016/06/26 22:28
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2016/07/04 21:22
天空の蜂 (2015)
原作は、ベストセラー作家の東野圭吾が1995年に発表した同名小説だったのですね。堤幸彦監督が映像化。豪華キャスティングです。なるほど。だから、時代設定が、1900年代で、ラストをあのようにしたのですね。と納得したのでした。(ふと「20世紀少年」に、独自の展開とラストにした件を彷彿)「原作はヨカッタのに…」と、かなり賛否両論あったみたいですが、私は、なかなかに楽しめました。本当に、映画のラストじゃないけれど、震災が起こり、ほんに今のテーマですね。発表から20年後に取り上げられたのも、時代的にタイム... ...続きを見る
のほほん便り
2016/08/24 09:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ハリウッド映画でも往々にして子供が重要施設に潜りこんだりすることがありますが、現実には無理ですよね。
題材は面白いのですから、工夫が欲しいですね。
ねこのひげ
2016/06/26 18:30
ねこのひげさん、こんにちは。

日本映画は隙が多いので、そうした非現実性で大いに白けることが多いのですが、本作は余り気にならなかった部類。

それにしても、1995年にこんなお話を着想する東野圭吾の先見の明に驚きました。
オカピー
2016/06/26 21:30

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