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zoom RSS 映画評「トム・アット・ザ・ファーム」

<<   作成日時 : 2016/06/13 09:31   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年カナダ映画 監督グザヴィエ・ドラン
ネタバレあり

カナダの新鋭で俳優としても注目されているらしい若手グザヴィエ・ドランとしては「Mommy/マミー」の前作に当たる長編第4作(24歳)。

ドラン扮する若者トムは、交通事故死した同性愛の恋人ギヨームの葬儀に参列する為ケベックの寒村にやって来る。
 しかし、同性愛にうるさい田舎で、息子をストレート性愛者の良い子と信じている母親アガット(リズ・ロワ)のために、兄フランシス(ピエール=イヴ・ガルディナル)が暴力をもって、ギヨームにサラという美人の恋人がいると信じ込ませるように演技をし、葬儀の後即刻帰れと脅迫する。葬儀で失敗をやらかしたトムはさらに暴力を加えられるが、それで宗旨替えしたフランシスは母のために残れと言い、酪農に魅せられたように見えるトムもそのまま居残る。逃亡しようとしても車に細工されてしまう。
 不安を感じたトムはサラ(エヴリーヌ・ブロシュ)を実際に呼ぶのだが、母親は事実を知っているようにも見え、かくして四人による虚々実々のやり取りが繰り広げられることになる。
 その後フランシスがアガットを施設に送ったように思ったトムは、恐れをなして、遂にフランシスの車を駆って逃亡する。

悲しみを感じられないほど大きな喪失感を覚えるトムが恐れを抱きつつギヨームに似たところもあるフランシスをその代替にしようとする歪な精神状態をサスペンスフルに描いていると理解する。フランシスもまた彼に弟の代替を見出していたようなのだが、その「ようなのだ」にはミステリー要素による推測が含まれ、正確なところは結局解らないもののフランシスとギヨームの兄弟が近親相姦の同性愛に陥っていた可能性を感じさせる仕組みになっている。

心理サスペンスであるが、全体としては、テネシー・ウィリアムズの【南部もの】を極めて現在的に先鋭的に変換したような印象を持つ。
 【南部もの】というのは僕の作った演劇・映画用語で、北米の保守的な土地柄の場所で繰り広げられる葛藤劇のことを言い、舞台は合衆国南部でなくて良い。少年時代アメリカ南部を保守的な場所として紹介する映画が多く観たので、そういう名称にしたのである。
 本作は葛藤というより相手の心理を読みながら対峙していくという図式ながら、限られた場所で限られた人数で進む演劇的な展開がスリリングな、一種の葛藤劇の様相を示しているのではないかという印象を覚えた次第。

といった具合に、個人的には必ずしも好みではないにしてもなかなか興味深い内容で、カナダの劇作家ミシェル・マルク・ブーシャールの戯曲を映画化したもの。だから、演劇的であるのは必然なのであるが、実際には舞台臭を全く感じさせない。なかなか大したものである。

「ある程度年を取ってからのイングマル・ベルイマンにウィリアムズが憑依したらこんな感じになるかも」などとくだらないことを考えている。ベルイマンなら主人公は女性になるだろうが。

最後に流れるルーファス・ウェインライトの「ゴーイング・トゥ・ア・タウン」は名曲と言うべし。開巻直後のフランス語バージョンの「風のささやき」も素晴らしかった。オールド・ファンなら「華麗なる賭け」の主題曲としてお馴染みの人気曲で、二か月前に観た「フォーカス」の終盤でも使われた。

南部もの、リサイクル映画・・・僕の作った映画用語が幾つかあります。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
イングマル・ベルイマンのほうがより魅力があったかも・・・・
ねこのひげ
2016/06/19 17:04
ねこのひげさん、こんにちは。

ベルイマンの品格は、そう簡単に出せないです。
オカピー
2016/06/19 19:51

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