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zoom RSS 映画評「日本のいちばん長い日」(2015年版)

<<   作成日時 : 2016/06/12 09:33   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・原田眞人
ネタバレあり

半藤一利のノンフィクションの二度目の映画化。1967年に岡本喜八が初めて映画化した時は出版社の都合で大宅壮一・編ということになっていたが、その後半藤一利・作と実際の作者が明らかにされた経緯がある。岡本喜八版でそれなりに詳しくお話を書いているが、お話の重点が異なるのでそれを踏まえて簡単に書いてみる。

1945年4月首相に任じられた元侍従長・鈴木貫太郎(山崎努)は、昭和天皇(本木雅弘)の一言から、内閣の軸となる陸軍大臣に元侍従武官・阿南惟幾陸軍大将(役所広司)を起用する。
 8月、日本は会議を重ねても7月26日に通達されたポツダム宣言を受諾するか否かなかなか決断できず、その間に広島・長崎に原爆が投下され、ロシアが樺太に迫ってきて二進も三進も行かなくなり、遂に聖断(天皇の判断)を仰ぐ不始末。結果、国民と平和を愛する天皇の聖断により8月15日正午に玉音放送を以って終戦とすることを決定する。
 しかし、畑中少佐(松坂桃李)など本土決戦に拘る過激な陸軍将校の一派は、本来本土決戦派であった阿南大臣を思想の柱としてクーデターを起こし、玉音放送阻止を断行しようとするが、大将が遠回しに拒否した為にクーデターは失敗に終わる。

67年版が、8月14日正午から8月15日正午までを重点的に描き、タイトルに覚える印象に合っているのに対し、こちらはやや題名に偽りの感あり。
 それはまあ良いのだが、かの作品が正にドキュメンタリー・タッチでクーデターをめぐる攻防を徹底的にサスペンスフルに描いて凄みがあったのに比べると、こちらは主たる5人の人物(もう一人は堤真一扮する宮内庁書記官・迫水久常)の動向と人物像を描く歴史ドラマ的構成につき緊密度において物足りない。それなりにサスペンスは感じられるが、1967年版のように超弩級というわけにはいかない。
 それは脚本と監督を担当した原田眞人が、“大きな目的をもって始められた事業を止めることがいかに難しいか”ということを表現したかったからだと思う。まして伝統のある天皇制という国体の護持が図られるかどうかという瀬戸際における、当時の為政者の決断の難しさがよく理解できる作劇になっている。ただ、それについても、岡本版においては強力なサスペンスの中に滲み出る形で果たされていたことを考えると、総合的に同作に及ばないと言わざるを得ない。

ただ、明治以降の天皇について、日本映画人が姿さえ出しかねるという天皇描写アレルギーみたいなものを持っている点に関して、本作はなかなか画期的と言えるのかも知れない。

コメディーにまで女王を出すことを許している英国皇室は度量が大きいね。実際には国民だろうけれど。日本はきっと国民が許さないのだ。

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日本のいちばん長い日★★★★
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パピとママ映画のblog
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□作品オフィシャルサイト 「日本のいちばん長い日」□監督・脚本 原田眞人□原作 半藤一利□キャスト 役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤 真一、山崎 努■鑑賞日 8月14日(金)■劇場  TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> ... ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
右翼と称する手合いの宣伝カーが集まって来て大騒ぎをしますからね。
映画会社もめんどくさいことは避けたいんでしょうね。
ねこのひげ
2016/06/12 16:15
ねこのひげさん、こんにちは。

保守層がNHKを嫌っている件で調べることがあり、「聖徳太子が厩戸皇子と呼ばれるのは、ばかNHKのせいだ」と自分の無知を曝け出しているコメントにぶつかりましたよ。聖徳太子など同時代的には誰も言っていないし、後世に書かれた「日本書紀」でも厩戸皇子という言い方から始まりますが、聖徳太子という言い方は一回も出てこない。こういうデタラメやいちゃもんがインチキ保守には多い。こういうのを保守と言ったら本当の保守に失礼ですよね。
オカピー
2016/06/12 20:49

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