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zoom RSS 映画評「毛皮のヴィーナス」

<<   作成日時 : 2016/04/06 10:00   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2013年フランス=ポーランド合作映画 監督ロマン・ポランスキー
ネタバレあり

映画監督歴が50年を超えたロマン・ポランスキーが、マゾヒズムの語源となったレオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」をベースにデーヴィッド・アイヴズが書き上げた戯曲を映画化した作品。映画に関する嗜好も左右するだろうが、西洋文化に関する教養の差で感じる面白味に差が出ると思われる。

僕としても十分あるとは言えないが、少なくとも、マゾヒズムがオーストリアの作家マゾッホに由来すること、マゾッホの代表作が「毛皮を着たヴィーナス」であること、ルー・リードがヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代に「毛皮のヴィーナス」という曲を書いていること、ヴィーナス(ローマ神話)とアフロディーテ(ギリシャ神話)、バッカス(ローマ神話)とディオニュソス(ギリシャ神話)が同じ神様であることくらいは知っておく必要がある。
 残念ながら「毛皮を着たヴィーナス」は読んだことがなく(群馬県の図書館に蔵書なし)、オペラの「バッカスの巫女」は全く知らない。ただし、エウリピデスの「バッカスの信女」は読んだことがある。

なお、バッカスが男根崇拝と関係づけられたり、バッカス絡みの祭りに男性が女装を強要されたものがあったことを知っていると、なお面白く観られる。

劇作家トマ・ノヴァチェク(マチュー・アマルリック)は、脚色したマゾッホの「毛皮を着たヴィーナス」演劇版のオーディションが不調に終わり帰ろうとしていると、ヒロインと同じ名前のワンダ(エマニュエル・セニエ)という女優が現れ、彼女のごり押しに不承不承オーディションの為の本読みを開始、その適役ぶりに舌を巻く。
 本読みを進めるうちに劇中の人物と演ずる役者が錯綜・混沌とし出し、主人公の男性ではなくトマが女優のワンダに支配されるような感じになり、さらに男女が転倒することにより支配関係も転倒するが、結局女王に戻ったワンダに縛られたまま去られてしまう。

最後に彼女がバッカスの巫女の踊りを踊るのだが、ワンダの不思議な出没ぶりと無知なようで実は幅広い知識を考えると、彼女は小説のヒロインに変身することもあるヴィーナスその人(神)のような気がしてくる。潜在的に変な楽しみを志向している男を罰しに来たのではないだろうか。

とにかく本作の面白味は、芝居と現実の境目が曖昧に交錯して進行する様子に尽きる。本読みの中で彼女が「トマ」と間違って呼びかけるのは、恐らく故意である。そうしたことが意図か故意かもあやふやに進行するのが面白く、或いは、女優ワンダが小説内のワンダとして過ごしたこともあるヴィーナスなのではないかと考えながら見るのが楽しいのである。

マゾッホの小説をベースにした演劇をほぼそのまま入れ子として扱う戯曲の映画化、という二重構造自体が酩酊感を引き起こす。さらにもう少し若ければ、エマニュエル・セニエを奥方とするポランスキー自身が演じたのではないかと想像したくなる劇作家のタイプに思いを馳せれば三重構造とも考えられるわけで、益々面白い。

通常劇中劇の台詞は括弧が付いたりイタリックになったりするが、それをしていない対訳字幕にも工夫を感じる。また、支配するが為に支配されてしまうという関係も現実の人間観を正確に穿っていると感じられて興味をそそる。

ふた月ほど前に見た「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の主人公は、本作を見る限り、「毛皮のヴィーナス」の主人公とワンダを一人で気取っているようじゃね。

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毛皮のヴィーナス ★★★★
その名が「マゾヒズム」の語源にもなったことで知られる、19世紀オーストリアの小説家レオポルド・フォン・ザッヘル=マゾッホの自伝的小説「毛皮を着たヴィーナス」をもとにした戯曲を、「戦場のピアニスト」「おとなのけんか」の鬼才ロマン・ポランスキー監督が映画化。... ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『毛皮のヴィーナス』・・・どこかで・・・と思ったら『毛皮を着たヴィーナス』でありましたね。
これは読みました。
最近は図書館で見つけるのも難しいでしょうね。
公序良俗に反するというので、廃刊になった本や翻訳されなくなった小説もありますからね。
気に入っていた探偵小説がその憂き目にあいガックリでありました。
ねこのひげ
2016/04/10 08:19
ねこのひげさん、こんにちは。

まあ訳し方の問題で、原題は同じですけど。

>公序良俗
2001年前半「バトル・ロワイヤル」を巡って法律が作られそうになりましたが、その年の9・11が起きてそれどころではなくなったのを思い出します。
僕は、こういう【臭い物に蓋をする】式は結局人間をダメにしていくと思うのですけどねえ。
差別用語とか言って色々な言葉がTVは勿論、出版物から消えていますが、昔の本を読むと遠慮なく出て来るので、気持ち良い。そんなことを言っている僕は、本当に他人のことを気にする人間なんですが。言葉なんか制限したって、他人を傷つける人は減らない。減るどころが増えているでしょう(犯罪は減っている)。

>探偵小説
そういうのは、悔しいですね。
オカピー
2016/04/10 19:20

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