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zoom RSS 映画評「はじまりのうた」

<<   作成日時 : 2016/04/05 08:54   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ジョン・カーニー
ネタバレあり

脚本を書き自ら映像に移したジョン・カーニーなんて記憶にないぞ、と思ったが、映画サイトで調べたら、僕が音楽映画の秀作とかつて大いに推した「ONCE ダブリンの街角で」(2006年)を作った人であった。あれほど気に入った作品なのに殆ど忘却していた自分に情けなさを感じる。年は取りたくないものだ。

かつてレーベルの創設者として大いにミュージシャンを売り出した音楽プロデューサーのマーク・ラファローは、音楽ライターの妻キャサリン・キーナーの浮気が元で別居、零落の坂を転げ落ちて今やホームレス同然の情けない風体。乗っている車は高級車だが、妻に代わって学校に迎えに行ったミドルティーンの娘ヘイリー・スタンフェルドはおよそその年齢の少女らしくない格好で内心感心しない。
 そんな彼が創設者なのに社長ヤシーン・ベイから首を言い渡されて音楽バーで落ち込んでいると、飛び込みで歌うことになった英国美人キーラ・ナイトリーの楽曲に目を覚まされ、彼女を何とか売り出そうという気になり、デモ・テープ(最近は色々な媒体があるでしょう)もない彼女のために頻々に場所を変える路上レコーディングを敢行、彼女の知り合いの路上ミュージシャンや定番演奏に飽きたクラシック演奏家をバックに快調に作業を続ける。

本作において映画として一番印象に残るのは、最初にキーラが飛び込みで歌うことになる場面を置き、時間を巻き戻した後それを自殺寸前の気持ちまで追い込まれたラファローの立場からその場面を見せ、さらに売れ始めたミュージシャンのパートナー(アダム・レヴィーン)の浮気に失望したキーラの立場でもう一度、という「羅生門」的な構成。最初は無色透明であった場面が夫々の色合いを醸し出すのがなかなか面白いのだ。

同時に、極めて素朴であり、お話ではなく詩情やムードを楽しむ映画と思った旧作「ONCE ダブリンの街角で」に比べて、技巧的に即ちメジャー的になった為僕は少し残念な気持ちもしている。メジャーな映画ならそこら中に転がっているからである。
 それでも彼らの再生ぶりが軽いタッチで扱われているところは、好もしい。ジョン・カーニーという監督の持ち味なのであろう。

旧作と同じくフォーク・ロックの歌曲に素敵なものが多く、これを“聴く”だけでも“観る”価値があると言っても良いくらいであるし、キーラのフォーク・ロックにふさわしい歌唱も侮れない。

「上手い」だの「下手」だのと騒ぐけれど、フォーク・ロックはソウルフルに歌ってはダメなわけで、固定観念で決めつけている人が多すぎはしないだろうか。

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2017/01/16 13:16

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
俳優の演技でもそうですが、下手でもなぜか惹かれることがありますからね。
代表格はジョン・ウェイン、三船敏郎でありますがね。
フォークはギター1本でシロウトでも歌えたですしね。
味わいですかね。
ねこのひげ
2016/04/10 08:11
ねこのひげさん、こんにちは。

我が家は代々、僕を除いて、歌が上手いだの何だのと騒ぐ人たちばかりなのですが、亡くなった親父などは「上手いから味がある」という主張だから、「こういうのも味があって良いと思う」という僕の主張は通じなかったなあ。
結局、自分好みのバイブレーションであれば上手いというわけで、バイブレーションがなかったり、細かかったりするのは、「上手くない」らしい。

日本人の演技観は、セリフ回しにあるようです。棒読みだと難癖をつけられることが多いですが、やはり専門の男女優の棒読みはそれなり自然な棒読みと僕なんかは思いますね。素人は勿論やらせCMに出て来るやからの棒読みは本当にひどいです・・・
オカピー
2016/04/10 19:11

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