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zoom RSS 映画評「リアリティのダンス」

<<   作成日時 : 2016/04/22 09:45   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年チリ=フランス合作映画 監督アレハンドロ・ホドロフスキー
ネタバレあり

かつての「エル・トポ」(1971年)や「ホーリー・マウンテン」(1973年)のようなアングラ映画の魅力を求めると、恐らくきちんとし過ぎて、アレハンドロ・ホドロフスキーのコアなファンは不満に思うかもしれないが、完成度はぐっと高い。要素から言っても、「フェリーニのアマルコルド」(1973年)を髣髴する、ホドロフスキーの少年期を回顧する自伝映画である。

戦前のチリ。ウクライナ移民の父親ハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)の父権主義的な横暴に閉口する幼いアレハンドロ(イェレーミス・ハースコヴィッツ)は、愛情たっぷりの“大きな”母親サラ(パメラ・フローレス)の母性に支えられ、共産主義の仲間たちと綿密に計画したはずの独裁者イバーニェス(バスティアン・ボーデンへファー)暗殺計画に失敗して放浪しその失脚のあと故郷に戻ってきた父親を心から許す。それが彼の大人への成長の印である。

開巻直後のサーカスからフェリーニっぽいが、フェリーニ以上に野趣たっぷりで、僕の趣味に合わないところもあって☆★を抑えてしまったものの、出来栄えは傑作「アマルコルド」に近いと言っても過言ではない。
 宗教観、政治観、人間観、家族観、死生観等々を幅広く綜合した世界観(哲学用語の世界観であって、近年映画ファンが使うお話の設定のことではない)に立脚した物語、即ち、大袈裟に言えばドストエフスキーの超大作「カラマーゾフの兄弟」をさえ想起させる物語が、幻想的な描写により綴られる。

その幻想が最初のうちは野趣溢れる叙事詩的な詩情を生むが、次第に文字通り抒情詩的な詩情に変わっていき、テオ・アンゲロプロスと錯覚しそうな感じさえある幕切れなど、陶然とさせられる時間が増えてくる。ここに、少なくとも映画館で「エル・トポ」を見た時の若きホドロフスキーから受けた印象と全く違う、彼の成熟を見る思いがするのだが、逆に「エル・トポ」の頃のいかにも前衛的な無手勝流タッチに拘る人には物足りなく思われるだろう。

演出的には、現在の本人が子供時代の彼に話しかける時空を超えた場面を随時挿入するアイデアと、母親サラのセリフを全て声楽で処理しているのが面白い。彼女に扮したオペラ歌手というパメラ・フローレスは下腹部を曝け出して放尿するところまで見せている。日本公開版のボケボケでは何も解らないが、根性が凄い。

クイズ番組「Qさま」の集計による【東大生・京大生の選ぶ凄い本】において、「カラマーゾフの兄弟」が解りやすい「罪と罰」より上位にあり、これにはロシア語・ロシア文学を専攻した僕も驚いた。さすがだねえ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
年齢と共に作品も成熟していくという事でありましょう。
『エル・トボ』も好きでありますよ。
ねこのひげ
2016/04/24 16:45
ねこのひげさん、こんにちは。

本作も、相当奇妙な映画ではあり、若い時の破天荒さと比べると大分落ち着いているというにすぎないわけですが、コアなファンから「エル・トポ」などと比べて厳しい意見が出されているのに遭遇したものですから、少し反論めいて書いたわけです。
映画的魅力についてはともかく、完成度は本作がぐっと高いでしょう。
オカピー
2016/04/24 21:57

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