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zoom RSS 映画評「テレマークの要塞」

<<   作成日時 : 2016/03/07 09:42   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
1965年イギリス映画 監督アンソニー・マン
ネタバレあり

ご贔屓アンソニー・マン監督の戦争サスペンス。

ヒット作が出ると、日本の映画興行界では暫しそれにあやかって邦題を付ける傾向がある。「太陽がいっぱい」(1960年)の後「太陽」が、「小さな恋のメロディ」(1971年)の後「小さな」が、「きみに読む物語」の後「君、きみ」が少なからず使われた。
 本作の場合「ナバロンの要塞」(1961年)にあやかって付けられた邦題であることはオールド・ファンならすぐに解るが、若い人には無理で「要塞なんて出て来ないじゃない」てなことになる。配給会社としては、工場が出て来るので苦しくもそれを要塞に見立てたわけだ。

多分映画評を書き始めた1970年代の終わり頃にTVで観ているが、今回はその時の記憶ほど面白くはなかった。それでもCGにおんぶにだっこの昨今のだらしない映画群と比較すればしっかり作られている。CGの大仰な見せ場に慣れた若い人からしてみると、絵に過ぎないCGに比べて(この映画の)SFXは“しょぼい”らしい。しょぼいかどうかはともかく、SFXでは本当の火薬を使って爆発させている。規模こそ小さいとは言え、絵ではない本物である。古い人間の僕はこちらのほうが映画的迫力を感じるのだ。

1942年ドイツに支配されていたノルウェーでレジスタンスが起こした活動の、小説化を経ての、映画化である。本作の場合、映画化の際に相当にフィクション化が為されたことが伺われる。

レジスタンスのリチャード・ハリスがドイツが地元テレマークの工場で新型爆弾(原子爆弾)に使われる重水を大量に生産するという情報をオスロ大学のプレイボーイ教授カーク・ダグラスに伝える。彼らは一旦レジスタンス本部のある英国に渡るが、アメリカのアインシュタインらに確認することになって、テレマークに戻って破壊活動に専念することになる。
 技術的な確認をアインシュタインに求めるくらいなら、映画の中の台詞にもあるように「英国まで来る必要はない」わけで、機雷をかわすサスペンスがあるとは言え、渡航場面をばっさりカットしても展開上は殆ど変わらず、残念ながら冗長になるのに貢献した形。しかし、冒険気分の醸成を考えるのなら、全く必要ないとも言えない。

その後、地上での作戦敢行は地雷の為に難しく、空爆に頼ろうとするが助けを求めた英軍爆撃機は撃墜されてしまう。再び地上作戦に戻り一部設備を破壊したものの、何と敵は2週間で生産再開し、フェリーで本国へ運搬するという情報を得る。そこで二人はフェリーに侵入して時限爆弾を仕掛ける。

地味だ地味だという声が多く聞かれるが、主人公のタイプはジェームズ・ボンドみたいであるし、マイクロ・フィルムを歯磨きチューブに入れたり聖書に挟んだしおりがフィルムだったりするスパイ映画的要素がふんだんにあり、スペクタクルとしてはコストを抑えている印象があっても、サスペンスとしては程々のお楽しみが少なくない。中でも、爆弾を仕掛けたフェリーから子供たちを救う場面を交えた一連のサスペンスが良好。
 全体としてマンにしては冗長な印象はあるが、それは主に脚本のせいで、山岳やフィヨルドを活かしたアクション感覚はさすがに悪くない。

スキーでの逃走場面に対する「ただ滑っているのを撮っているだけのよう」というご意見は、当時今のような小型で高性能なカメラがなかったことへの考慮が不足している。当時の設備では現在のような迫力ある撮影はできない。ましてコンピューターで補正も利かない(同じ時代「若大将」シリーズで水上スキーを接近して撮った場面はカメラが揺れまくって「なくもなが」だったのを思い出す)。実際映画以外でスキーなど滅多に見られなかったと思う。映像が溢れている現在とは環境が違い、「ただ滑っているだけ」でもスペクタクルとしての価値はそれなりにあったはずである。

「007」みたいな主人公なのに、サスペンスの見せ方がマンらしく真面目すぎるのが、ちぐはぐな感じを与えていて評判が悪いのだろう。

スキー・ジャンプ競技用語“テレマーク姿勢”のテレマークじゃよ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ねこのひげも観たとき『どこが要塞じゃ?』と思いましたけど、それなりに楽しみました。
現代の技術と比べたらいけませんよね。
どこかの監督さんみたいに自分の昔の作品を現在の技術で手直しして古い方を消去してしまうのもどうかと思いますしね。
ねこのひげ
2016/03/13 07:07
ねこのひげさん、こんにちは。

クリント・イーストウッド主演の戦争映画に「荒鷲の要塞」というのもありましたし、配給会社の人々にかなり長い間「要塞」のインパクトが残ったのでしょうねえ。

>現代の技術
老骨はそう思いますですな。
まあ僕は派手なVFXよりしょぼいSFXが好きなんです。

>どこかの監督さん
えへへ。G・Lさんですね(笑)
僕も全く気に入らない。
直しても良いけど、オリジナルを観られなくしてしまうなんて、言語道断。
オカピー
2016/03/13 20:20

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