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zoom RSS 映画評「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」

<<   作成日時 : 2016/03/30 11:17   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・松尾スズキ
ネタバレあり

いがらしみきおという人のコミック「かむろば村へ」を松尾スズキが映画化したコメディー。松尾監督の作品では一番気に入った(と言っても大した本数は観ていないが)。

余りに金にまつわる人々の悲惨を見すぎてすっかりお金アレルギーになって金を見ることもできなくなった銀行マン松田龍平が、リタイアして東北のさびれた田舎、昨今言われる限界集落にやって来る。
 お話の整合性から言うとここが一番苦しく、お金を扱えないはずの主人公が、100万円で一軒家を購入し、宅配便を使って必需品を送り、都会から有料の乗り物に乗ってここへやって来るのは変だ。しかし、それを言うとお話が始まらないのでとりあえず無視して進行を見守りましょう。

その代わりライフラインは一切拒む。後は購入した田畑で自給自足。東北の寒い土地でライフラインを一切拒むのは正気の沙汰ではなく、村長・阿部サダヲや食品店を営むその妻・松たか子を始め、村の人々に世話になるうちに、次の村長選に絡む陰謀に巻き込まれ、陰謀のために暴露された昔の容疑により逮捕された現村長に勧められて村長に立候補することになってしまう。

と、かなり端折ったアウトラインだけでも相当シュールに感じられるはずだが、村の神と呼ばれる西田敏行の不思議な言動を交えるともっとシュールになる。何故かいつもカメラを持っていてカチャカチャやって俗っぽさを見せるかと思えば、神性を感じさせる瞬間も多い。ギリシャ神話の最高神ゼウスのようなおとぼけが感じられる。人が入ってはいけない聖域に入ったヤクザ(松尾スズキ)がばちに当たって死んだり、神が死ぬと聖書の蛙よろしく無数のスズキならぬザリガニが降って来る。
 監督が正にやりたいことをやっている感じだが、シュールで面白い。そう言えば、神の孫に当たる、実は阿部の血を引く少年はザリガニを操ってヤクザを追っ払っている。村の神は、ザリガニの神だったのだろうか? 

さて、松田は経済的生活を捨てた男である。彼に親切の限りを尽くす村長は自分を捨てた男である。金を捨てた男が自分を捨てれば何でもできる。世の中の為になる。その彼が村長に立候補する。
 実際には、対抗馬の助役が汚い政策絡みに嫌気が差して立候補を取り下げ、無実が判明した現村長が釈放され立候補をする為彼が村長になるかどうかは解らないのだが、経済一辺倒にならず利他的精神で政治を行うこと、これが作者の訴えようとした理想なのであろう。そんなユートピアを正面から描いたら臭すぎてとても観られる作品にはならないから松尾監督は照れ隠しの為に徹底的にシュールな、暴力的な、セクシャルなエピソードや場面を投入するのである。
 そんな政治、こんな設定はあり得ないという批判も無粋と思われる。これだけあり得ないことが満載であるならば、そのあり得ないことの反対が実際の社会であると逆説的に盛り込んだと考えるのが妥当ではあるまいか。

といった次第で、一見バカバカしくて実際にもバカバカしいのが実に愛らしく、面白い。

一番素晴らしいのは配役のアンサンブルで、女優陣が特に良い。美人局(つつもたせ)で松田君からお金を揺すり妻に収まる女子高生・二階堂ふみのユニークさ、彼女と反対に自然なお色気を発散する松たか子。神の娘で旅館の女将を演じる中村優子の主役陣を食いそうで食う寸前で留めている存在感が、特に絶品。

ジヌは「ゼニ」のなまったもの。観る前は全く意味不明でした。

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ジヌよさらば〜かむろば村へ〜
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
方言は色々ありますね。
千葉に引っ越してきたとき、近所の農家のおじいさんと話したら通訳が欲しくなりました。
東北や鹿児島だともっと凄いでしょうね。
ねこのひげ
2016/04/03 06:12
ねこのひげさん、こんにちは。

群馬県ではそういうことはまずないので、安心していらっしゃいませ。

>東北
1980年代に東北に関するドキュメンタリーを見ましたが、字幕が付いていました。東北は言語的には割合標準に近いのですが、発音が聞き取れないのですよね。
オカピー
2016/04/03 20:16

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