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zoom RSS 映画評「キッド」(1921年)

<<   作成日時 : 2016/03/28 11:08   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1921年アメリカ映画 監督チャールズ・チャップリン
ネタバレあり

チャールズ・チャップリンの人情喜劇。ブルース・ウィリスが主演した映画のせいで(1921年)と付記する羽目になりました。「忙しいので短い映画を」という理由で上映時間52分の本作を選んだわけだが、やはり傑作。

不実な男に捨てられた女優志願エドナ・パーヴィアンスが、高級車に生まれたばかりのわが子を置いて去る、「可愛がって下さい」というメモを付けて。しかし、その車は泥棒二人組に盗まれ、赤ん坊は路地に捨てられる。それを発見した貧しきチャップリンは拾った後どこかに置こうと思うも、警官が巡邏しているので、「怪しまれては困る」とそのまま家に連れ帰る。

プロローグたるこのシークエンスにおける場面構成の鮮やかなこと。お話が鮮明にして、リズムがあり軽快に進行する。昨今はテンポが良いと褒める傾向があるが、テンポが良くてもリズムが悪ければダメであるし、拙速なら意味を成さない。お話が解りにくくてもダメだ。その点本作は、このプロローグだけでなく、その後の展開でも基本的にその要求を満たしている。

5年後、育ての父となったチャップリンは、幼児となったその子供ジャッキー・クーガンに窓ガラスを割らせて、自ら修理に駆けつけるという詐欺をやって生計を立てている。
 ここでも警官が見張っているため、チャップリンが「子供は自分とは関係ないよ」と足で子供を押し返すショットが喜劇の見せ方として秀逸で、その直前ジャッキー少年が警官から逃げる場面にも感心させられた。大きな目の可愛らしいこの少年が、チャップリン的リアクションの呼吸をすっかり身に着けていたからである。

子供同士の喧嘩の果て少年が熱を出し、駆けつけた医師により捨て子と知られ、孤児院が迎えに来る。抵抗空しく少年は連れ去られるが、必死の養父は車を追いかけて取り戻す。
 感動という意味ではここが一番であろう。女優として成功したエドナが、自らの慰みの為に慈善にこの貧民街を訪れ、我が子とも知らず、少年におもちゃを授けるシーンがそれに次ぐ。

その間にその彼女が再び彼の家を訪れ、医師が発見したメモによりジャッキー少年が我が子であると気付き、懸賞金を出して行方を探す。孤児院の追っ手をくらますため親子で泊まった簡易宿泊所の親父がこれを知って警察に届け出る。チャーリーが起きると子供の姿が見えないので呆然とたどり着いた我が家の前で眠り込んでいると、またもや警官がたたき起こして連行する。「ついていませんなあチャーリーさん」と思っていると、着いた家はエドナの豪邸。

逆転ホームラン的なハッピー・エンドで、この終わり方に不満を覚える方もいらっしゃるようであるけれど、僕はこの幕切れに安らぎを覚える。実社会が世知辛いのだから、映画の中くらいこんな幸せがあっても良いではないか。

この幕切れと、宿泊所のシークエンスの間に、眠り込んだチャーリーが見る夢のシークエンスが挟まる。多くの方が仰るように、悪魔も天使も出てくる謎めいた夢で、お話の進行上は不必要であり、最初の方で「基本的に(明快に進行する)」と記したのはそういう事情である。技術的に挟む必要性があったのだろうとは推測できるが、それにしても甚だ解りにくい。
 全体が明快至極な作品だけにトーンを崩すこの幻想的なシークエンスは「なくもがな」と思いつつ、それでも☆☆☆☆☆を進呈したい気持ちに抗しがたさを覚える僕である。

役名がThe Man, The Woman, The Kid そして A Trampであることに注目。最初の三つと違って最後の「浮浪者」には不定冠詞が付いている。ここにチャップリンの「浮浪者は特殊なものではない」という思想が見えるかも。

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キッド
(1921/チャールズ・チャップリン監督・製作・脚本・音楽/チャールズ・チャップリン、ジャッキー・クーガン、エドナ・パーヴィアンス、ヘンリー・バーグマン/50分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2016/03/28 23:01

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
映画の中ぐらい・・・・まことにそうであります。
ねこのひげ
2016/04/03 06:00
ねこのひげさん、こんにちは。

リアリズム至上主義が席巻していますからねえ。
つまらんですよ。
オカピー
2016/04/03 20:02
やはり10点ですか。そりゃあそうですよね(笑)。
わたしは冒頭の十字架を背負ったイエス・キリストのインサートがとても印象的でした。
淀川長治さんは、このショットについて「このショットの挿入にチャップリンの若さが如実に出ている」とおしゃっていたのを覚えています。
例え、それが未完成で穴だらけでも、わたしは無我夢中で熱くなることができる若者の「ヒューマニズム」は素晴らしいと思います。人間というのは、若いというだけで本当に美しくて素晴らしいと思うのです。
では、また。
トム(Tom5k)
URL
2016/04/03 20:06
トムさん、こんにちは(時間的には「こんばんは」ですが)。

チャップリンの映画は映画的に美しいですから、☆☆☆☆☆をつけたくなります。

>若さ
淀川先生は、ああ見えて、厳しかったからなあ。
しかし、チャップリンを愛した先生ならではの、厳しい指摘ですよね。
最後の夢の場面と多少関連付けられるのかな?

>若いというだけで本当に美しく
正に。
これは中身もそうなのですが、外見にも通ずる言葉と思っています。
若さは美しい!
オカピー
2016/04/04 21:12

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