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zoom RSS 映画評「繕い裁つ人」

<<   作成日時 : 2016/03/16 09:50   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・三島有紀子
ネタバレあり

昨年「ぶどうのなみだ」で初めて観た三島有紀子という女流監督は、どうも物作りに従事する人を描くのが好きな模様。数年前に録画しながらまだ観ていない「しあわせのパン」もそうらしい。

現在の神戸。中谷美紀が祖母から引き継いで経営する南洋裁店は、注文主の個性にあったデザインと良質な仕立てで、趣味のある町民には甚く評判の良い店。
 大丸に勤める青年・三浦貴大は、彼女をデザイナーにブランド化し売り出そうと考えるが、とても量販は考えられないと断られる。それでも足繁く通ううちに彼女に影響されて、祖母のデザインを踏襲し、或いはその時代から愛用されてきた服を修繕する現在の居場所に拘る生き方を理解し始める。
 しかし、実はそんな彼女も、自分が本当に服が好きなのかどうか確認する為に東京本店の家具コーナーに勤め始めた彼の自由さに羨ましく思い、やがて彼の服飾好きの原因となった半身不随の妹・黒木華の為にウェディング・ドレスを作る。また、親や祖父が来ていた洋裁店の服の価値を理解した女子高校生たちの為に自分のデザインした服を作ることに申し出る。
 二人は感化し合って、互いに自分の人生観を軌道修正していく。

僕は物を大事にする方(ほう)だから、本作の主題とは些かずれるが、一着のオーダーメイドの服を大事にする登場人物の気持ちにじーんとさせられた。誰が着るのか解らない人の為に量販される“既製服”に対する職人ならではのつまらなさも何となく解る。

原作は池辺葵という閨秀漫画家のコミックということで、そのせいか、前作同様物作りの寓話的ファンタジーという感触が強い。しかし、「ぶどうのなみだ」ほど人物造形が観念的でなくぐっと地に足がついた現実的な色彩を持ちかつ上品で、個人的にはこちらのほうが趣味に合う。

丘の平坦部にある店に続く坂を人が上ってくる(従って全体ではなく顔だけが最初に見える)のを繰り返す辺りの映画的な感覚もなかなか良い。

彼女の作品はリアリティーの面で評価されないことが多いようだが、何でもかんでもリアリティーから判断する風潮にも困ったもの。勿論、全ての劇映画は我々が共通して持つ生活感情に立脚している。しかし、リアリズム的リアリティーがなくても生活感情は描けるであろう。さもなくば、SFは意味を成さないし、現代的主題で繰り広げられる時代劇も価値はない。翻せば、現実的なお話をファンタジー、寓話の形で描いて何が悪いのだ、ということになる。

生活感と生活感情は違うので、ご理解のほどよろしく。1950年代くらいまではよく使われた言葉だが、昨今の文筆家で使う人は殆どいない。正確さを期すために、ただの“感情”とはやはり区別して使いたい。

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繕い裁つ人 ★★★
『嫌われ松子の一生』などの演技派女優中谷美紀を主演に迎え、池辺葵のコミックを映画化した心に染みる人間ドラマ。クラシカルなミシンで洋服を作る職人肌の主人公と、彼女を取り巻く人々が織り成す物語を紡ぐ。『永遠の0』などの三浦貴大や『小さいおうち』で第64回ベル... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2016/03/16 10:01
繕い裁つ人
読み方は「つくろいたつひと」です。 ...続きを見る
Akira's VOICE
2016/03/16 10:24
繕い裁つ人〜orケーキを食べる女
公式サイト。池辺葵原作、三島有紀子監督。中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華、杉咲花、伊武雅刀、中尾ミエ、余貴美子。神戸の洋館に構えた洋裁店。屋内はまるでフェルメー ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2016/03/16 10:48
『繕い裁つ人』
□作品オフィシャルサイト 「繕い裁つ人」□監督 三島有紀子□脚本 林 民夫□原作 池辺 葵 □キャスト 中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木 華、杉咲 花、       伊武雅刀、中尾ミエ、余 貴美子■鑑賞日 2月7日(土)■劇場 109CINEMAS川崎■cyaz... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2016/03/16 19:04
繕い裁つ人
なんだか、この感性、こだわりや、展開。ファンタジー要素が、少女漫画の世界だなぁ、と感じてたら、本当に原作は池辺葵の同名コミック、だったのですね。 ...続きを見る
のほほん便り
2016/04/14 09:34
映画「繕い裁つ人」☆☆
オーダーメイド、それは憧れ。町の小さな洋裁店を継ぎ、先代である祖母の作った服を直し続ける市江(中谷美紀)。藤井(三浦貴大)は彼女のオリジナル服に惚れ、ブランド化を勧め ... ...続きを見る
ドラマでポン
2016/04/16 10:14

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
リアリティー云々tと言っていたら、スターウォーズはどうなんだ!でありますけどね。

去年だったか、たけしさんのテレビ番組でオーダーメイドの洋服を仕立てる職人さんが出てきました。
銀座のビルの一室で看板もでていない洋服屋に見えない部屋でしたが、一生着れる服で、体重が増えても減っても体形が変わると直せるようになっておりました。
一着ウン十万でありましたけどね。
一生ものですな。
ねこのひげ
2016/03/20 13:43
ねこのひげさん、こんにちは。

>リアリティー
彼らなりのリアリティー感覚はあるのでしょうけど、少し適用を誤っている部分があると感じますね。

>オーダーメイド
それは便利ですね。
僕には縁がなさそうですが。
オカピー
2016/03/20 20:00

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